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2、社交場が決まりそうです
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「貴婦人会?」
穏やかなウリートの母マリーヌの声。小さな頃は体調を壊すたびに泣きそうな震えた声にさせてしまって何度申し訳なく思っていたことか。
「ええそうなのです。」
エリザ叔母の紹介は貴婦人達が集まる社交場であった。
「でも、男子のあなたが婦人会へ?」
そう、これにはウリートも少し困惑してしまった。婦人といえば女性の事だ。ウリートは体は弱いながらも男である。この国では男姓同士の結婚も常であるから男性が夫人の代わりを果たす事も珍しくはないのだが、それでも社交の際の集まりには男性は男性達と共に行動するのが普通なのだ。
「はい。僕が他の紳士の方に付いていけるか不安がありますので…」
紳士の社交場といえば、酒の席でカードやゲーム、乗馬に、狩猟にとアクティブに活動する事が多いと聞く。学問についての討論会もあるだろうがかなり専門的な内容であった。この中で体力の無いウリートが入り込めそうなのは学問部門だけであろうかと思われるのだ。
それに比べて女性が集まる社交場は穏やかな時間を過ごせそうなものが多くウリートにはぴったりの社交場でもあった。
「まあ、お姉様。今時の婦人会は情報のるつぼでしてよ?未婚のご子息、ご令嬢の情報はいち早く入ってくるものですわ。それにこの会に参加されるのはご結婚されている方ばかりではありませんのよ?社交を全くされてこなかったウリートですもの。皆様と楽しくお話ししながら社会の事を学びつつ良い方との出会いの場として活用しても宜しいのでは?」
エリザ叔母の怒涛の説明と押しにその場にいたウリートの両親は二つ返事で納得した。
「そうね。いきなり男性陣の中に入れられてもウリートは困惑してしまうかもしれませんものね?」
「ああ、そうだな。ご令嬢も集まるとしたら出会いの良い機会にもなるだろう。行ってきなさいウリート。いい人が見つかるといいな?」
優しい両親の目がホンワリと慈愛に満ちている。きっとウリートが結婚に失敗して侯爵家にお世話になり続けてもこの笑顔は変わらない、家族愛に溢れた二人で心から感謝したい。
「はい。兄様にも早く良い縁談がまとまります様に。僕も頑張ってきますね?」
「まあウリート。何も頑張る必要は無くってよ?先ずは色んな方とお話ししてみなさいな。それだけでも楽しめるでしょう?あなたは今まで沢山我慢も多かったでしょうからゆっくりと馴染んでいけばいいわ。」
「ええ、よろしくお願いします。エリザ叔母様。」
「ふふふ…私のお友達も何人もいるのよ?あなたの事を良く頼んでおきますからね?」
「まあ、エリザ…お世話になるわ。」
「いいのよ、お姉様。お姉様ご夫婦だって今までウリートと一緒にアクロース家に篭っていた様なものですものね?まだ私の方が社交界に顔が効きますもの。可愛いウリートの伴侶の方がどんな方になるのか楽しみですわね?」
まだ気が早いというのに話の中心はもっぱらウリートの婚約者となる人物に対して各々好き好きに話し合う楽しい時間となった。ウリートは自分が結婚なんて考えられなかった程に体が弱く、きっと侯爵邸の隅か療養院の様なところでひっそりと人生の幕を閉じるのかもしれないなんてそんな寂しい事も考えてしまっていたのだが、そんな事は夢のまた夢として吹き飛ばしてしまえるほど、家族が喜んでくれていることが物凄く嬉しかった。
「良かったわね、ウリート。お姉様もお義兄様も反対なんてなさらなかったわ。さ、次はあなたね?マナーは完璧ですから服装を整えてどの会に出席するのか絞り込まなくては!」
「絞り込む?」
「ええ、そうでしてよウリート!」
グッと拳を握りしめんばかりの勢いで持ってエリザ叔母は力説し出す。
社交界と一言で言ってもそれは広いものらしい。身分の格差はもちろんの事、その中でも派閥に関与するものや本人の年齢、父や夫の職業や趣味に特技、ただ何かを愛でる会やら本格的に学びの為の会…
種類だけなら男性よりも多いかもしれない女性の淑女達のお付き合いは広く深い。
エリザ叔母の話を聞きながらパチクリと目を丸くして、ただただウリートは聞き入るしか出来ないほどに社会について何も知らないと改めて思い知らされてしまった。
「この叔母があなたにぴったりな所を探して差し上げますからね?」
いい笑顔のエリザ叔母。皆んな嬉しそうである。病気がちで貴族の子息としての役目を何らこなしてこれなかったウリートとしてはこんな家族の笑顔を見ていたらこの選択が間違っていなかったものだと思えて心底安心した。
後は……
外見は良くなくてもいいから、穏やかで家庭的な令嬢が見つかればもう何も言う事はないのだ。
穏やかなウリートの母マリーヌの声。小さな頃は体調を壊すたびに泣きそうな震えた声にさせてしまって何度申し訳なく思っていたことか。
「ええそうなのです。」
エリザ叔母の紹介は貴婦人達が集まる社交場であった。
「でも、男子のあなたが婦人会へ?」
そう、これにはウリートも少し困惑してしまった。婦人といえば女性の事だ。ウリートは体は弱いながらも男である。この国では男姓同士の結婚も常であるから男性が夫人の代わりを果たす事も珍しくはないのだが、それでも社交の際の集まりには男性は男性達と共に行動するのが普通なのだ。
「はい。僕が他の紳士の方に付いていけるか不安がありますので…」
紳士の社交場といえば、酒の席でカードやゲーム、乗馬に、狩猟にとアクティブに活動する事が多いと聞く。学問についての討論会もあるだろうがかなり専門的な内容であった。この中で体力の無いウリートが入り込めそうなのは学問部門だけであろうかと思われるのだ。
それに比べて女性が集まる社交場は穏やかな時間を過ごせそうなものが多くウリートにはぴったりの社交場でもあった。
「まあ、お姉様。今時の婦人会は情報のるつぼでしてよ?未婚のご子息、ご令嬢の情報はいち早く入ってくるものですわ。それにこの会に参加されるのはご結婚されている方ばかりではありませんのよ?社交を全くされてこなかったウリートですもの。皆様と楽しくお話ししながら社会の事を学びつつ良い方との出会いの場として活用しても宜しいのでは?」
エリザ叔母の怒涛の説明と押しにその場にいたウリートの両親は二つ返事で納得した。
「そうね。いきなり男性陣の中に入れられてもウリートは困惑してしまうかもしれませんものね?」
「ああ、そうだな。ご令嬢も集まるとしたら出会いの良い機会にもなるだろう。行ってきなさいウリート。いい人が見つかるといいな?」
優しい両親の目がホンワリと慈愛に満ちている。きっとウリートが結婚に失敗して侯爵家にお世話になり続けてもこの笑顔は変わらない、家族愛に溢れた二人で心から感謝したい。
「はい。兄様にも早く良い縁談がまとまります様に。僕も頑張ってきますね?」
「まあウリート。何も頑張る必要は無くってよ?先ずは色んな方とお話ししてみなさいな。それだけでも楽しめるでしょう?あなたは今まで沢山我慢も多かったでしょうからゆっくりと馴染んでいけばいいわ。」
「ええ、よろしくお願いします。エリザ叔母様。」
「ふふふ…私のお友達も何人もいるのよ?あなたの事を良く頼んでおきますからね?」
「まあ、エリザ…お世話になるわ。」
「いいのよ、お姉様。お姉様ご夫婦だって今までウリートと一緒にアクロース家に篭っていた様なものですものね?まだ私の方が社交界に顔が効きますもの。可愛いウリートの伴侶の方がどんな方になるのか楽しみですわね?」
まだ気が早いというのに話の中心はもっぱらウリートの婚約者となる人物に対して各々好き好きに話し合う楽しい時間となった。ウリートは自分が結婚なんて考えられなかった程に体が弱く、きっと侯爵邸の隅か療養院の様なところでひっそりと人生の幕を閉じるのかもしれないなんてそんな寂しい事も考えてしまっていたのだが、そんな事は夢のまた夢として吹き飛ばしてしまえるほど、家族が喜んでくれていることが物凄く嬉しかった。
「良かったわね、ウリート。お姉様もお義兄様も反対なんてなさらなかったわ。さ、次はあなたね?マナーは完璧ですから服装を整えてどの会に出席するのか絞り込まなくては!」
「絞り込む?」
「ええ、そうでしてよウリート!」
グッと拳を握りしめんばかりの勢いで持ってエリザ叔母は力説し出す。
社交界と一言で言ってもそれは広いものらしい。身分の格差はもちろんの事、その中でも派閥に関与するものや本人の年齢、父や夫の職業や趣味に特技、ただ何かを愛でる会やら本格的に学びの為の会…
種類だけなら男性よりも多いかもしれない女性の淑女達のお付き合いは広く深い。
エリザ叔母の話を聞きながらパチクリと目を丸くして、ただただウリートは聞き入るしか出来ないほどに社会について何も知らないと改めて思い知らされてしまった。
「この叔母があなたにぴったりな所を探して差し上げますからね?」
いい笑顔のエリザ叔母。皆んな嬉しそうである。病気がちで貴族の子息としての役目を何らこなしてこれなかったウリートとしてはこんな家族の笑顔を見ていたらこの選択が間違っていなかったものだと思えて心底安心した。
後は……
外見は良くなくてもいいから、穏やかで家庭的な令嬢が見つかればもう何も言う事はないのだ。
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