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6 三人の王子と深窓の令嬢の真相 4
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「ご覧下さい、殿下…!ご令嬢は使用人ではありませんよ。」
騎士達が手に手に松明を持ってきていたので小屋の周囲は夜半であるのに拘らず目を凝らすまでも無い程に明るい。
「むぅ!?」
「国王陛下に何と言われていたか覚えておいでですか?」
「ぐっ!」
「今までの様に考えていてはならないと通告されておいででしたよね?」
徐々に凄みを増してくるコークス卿の声に、若干不穏なものを感じつつもここは大人しく見ているしかシャラーシャには出来る事は無いだろう。
「父上…からは…絶世の美女がいる、と……」
「………」
「…………」
「………」
(国王陛下が……噂に、踊らされてなんて事を…?見てみて?どこが、絶世の美女と?)
シャラーシャには最早言葉もない。もともとの顔の作りは悪くはないシャラーシャだが、今は化粧気も無くお仕着せを着て、先程は王子殿下に怒鳴りつけた様な、そもそも最初から使用人と間違えられていた女だ。誇るべきところが有るとしたらいとも珍しい虹色に光る髪だろうか?周囲の騎士からも言葉が無くしばし無言状態が続いた。
(ちょっと、我が家の騎士達はどういうつもりで?何かお嬢様は違いますとか、普段はもっと大人しいとか、色々ないの?)
この沈黙に耐えきれず(時折、コークス卿に締め上げられているダイル王子の、グゥ、とか、ぬぅ、とかのくぐもった声は聞こえてきていた)チロリ、と自領の騎士達を見回してしまったが………
「…んん!…絶世の何ちゃらは置いておくとして、ダイル殿下にはお願いが御座います!」
言うべきことは言わないと、国王陛下のお願いが叶えられない事よりもシャラーシャにとっては絶望をこの目で見ることになる。この飼育箱の蝶の子供達だけは守らなくては…!
「はい、何でございましょう?」
締め上げられている第二王子ダイルに変わり、コークス卿が答える。
「ダイル殿下がご自由にされるのは結構ですけれど、この小屋の中で大変貴重な物を飼育していますの!ですから勝手に入ったり、先程の様に飼育箱に足をかけたり悪さをしないで下さいませ!」
「貴重な物とは?」
「ダイル殿下達もよく知っておられますわ?この国の象徴たる蝶達です!その数はどんどん減っていますし、ここでしか飼育出来ませんの!ご自分達が護る国の象徴を足蹴にしないでくださいませ!!」
先程の第二王子ダイルの行為になんとも我慢できずにシャラーシャは一気にそう伝えた。
「………お前の、命の様に、大事なものか?」
締め上げられて、少ししゃがれた声で第二王子ダイルはそう聞いてくる。
(もう、離して差し上げたら?)
ちらっとそう思うのだが、この方の気性をよく知っているコークス卿に任せた方が良いだろうとシャラーシャはすぐに思い直した。
パンパン!!第二王子ダイルがコークス卿の腕をパンパンと叩く。これが二人の合図なのか、コークス卿はいともあっさりと第二王子ダイルの首から腕を外した。
「えほっ!お前、加減がなさすぎ!剣を抜くか?」
又もや物騒な事をコークス卿に向かって投げかけている第二王子ダイルだが、コークス卿は両手を上げて降参ポーズ。
「ご令嬢の前ですよ?殿下の剣は受けられません。」
「はっ!令嬢ねぇ?どこを見たらそう思えるんだよ?まぁ~見れるとしたらこの髪か?ふ~ん?珍しいじゃん?」
無作法にも、ツカツカとシャラーシャに近づいたと思ったらサラリとその髪に触れた。
「殿下!!」
コークス卿の声とと共に、第二王子ダイルが後ろへ引き戻されていく。
「ご令嬢の身体にそう容易く触るものではありません!王家としての、男としての品位を疑われますよ!?」
(申し訳ありませんが、コークス卿…既にダイル殿下からは品位のかけらも感じはしません……)
「は!品なんてもんはなんの糧にもならねぇだろ、アルジーノ?信じられるのは己のみだ!おい!シャラーシャとやら、お前も自分の信念に沿ってそいつら育ててるんだろう?」
(そいつら…幻の蝶達ですね?)
「え、えぇ…」
(初代の蝶侯爵からの我が家の伝統ですもの…)
「俺もなんだよ?お前は自由にしてていいって言ったよな?そこんとこは良い女だ!よし!やっぱり熊を獲ろう!!」
後ろへ引き戻されていった第二王子ダイルはそのままクルリと身を翻して、脱兎の如くに暗闇に紛れる様に走り去っていった………
「熊…………?」
(信念がどうやったら熊になるの?)
ちっとも理解できるところがない第二王子ダイルは数名の騎士が必死に追いかける中消えて行く……
「……申し訳ありません。シャラーシャ嬢。お手を煩わせました。お怪我は?」
「…………いえ………」
「そうですか。良かったです…これで生存確認はできましたから、後は熊が出そうな所を押さえておくべきですね?」
「はい?」
「あ、シャラーシャ嬢。申し訳ありませんが、熊出没地域を教えてくださいませんか?」
「え?…生存確認に……熊……?」
シャラーシャは混乱している………
騎士達が手に手に松明を持ってきていたので小屋の周囲は夜半であるのに拘らず目を凝らすまでも無い程に明るい。
「むぅ!?」
「国王陛下に何と言われていたか覚えておいでですか?」
「ぐっ!」
「今までの様に考えていてはならないと通告されておいででしたよね?」
徐々に凄みを増してくるコークス卿の声に、若干不穏なものを感じつつもここは大人しく見ているしかシャラーシャには出来る事は無いだろう。
「父上…からは…絶世の美女がいる、と……」
「………」
「…………」
「………」
(国王陛下が……噂に、踊らされてなんて事を…?見てみて?どこが、絶世の美女と?)
シャラーシャには最早言葉もない。もともとの顔の作りは悪くはないシャラーシャだが、今は化粧気も無くお仕着せを着て、先程は王子殿下に怒鳴りつけた様な、そもそも最初から使用人と間違えられていた女だ。誇るべきところが有るとしたらいとも珍しい虹色に光る髪だろうか?周囲の騎士からも言葉が無くしばし無言状態が続いた。
(ちょっと、我が家の騎士達はどういうつもりで?何かお嬢様は違いますとか、普段はもっと大人しいとか、色々ないの?)
この沈黙に耐えきれず(時折、コークス卿に締め上げられているダイル王子の、グゥ、とか、ぬぅ、とかのくぐもった声は聞こえてきていた)チロリ、と自領の騎士達を見回してしまったが………
「…んん!…絶世の何ちゃらは置いておくとして、ダイル殿下にはお願いが御座います!」
言うべきことは言わないと、国王陛下のお願いが叶えられない事よりもシャラーシャにとっては絶望をこの目で見ることになる。この飼育箱の蝶の子供達だけは守らなくては…!
「はい、何でございましょう?」
締め上げられている第二王子ダイルに変わり、コークス卿が答える。
「ダイル殿下がご自由にされるのは結構ですけれど、この小屋の中で大変貴重な物を飼育していますの!ですから勝手に入ったり、先程の様に飼育箱に足をかけたり悪さをしないで下さいませ!」
「貴重な物とは?」
「ダイル殿下達もよく知っておられますわ?この国の象徴たる蝶達です!その数はどんどん減っていますし、ここでしか飼育出来ませんの!ご自分達が護る国の象徴を足蹴にしないでくださいませ!!」
先程の第二王子ダイルの行為になんとも我慢できずにシャラーシャは一気にそう伝えた。
「………お前の、命の様に、大事なものか?」
締め上げられて、少ししゃがれた声で第二王子ダイルはそう聞いてくる。
(もう、離して差し上げたら?)
ちらっとそう思うのだが、この方の気性をよく知っているコークス卿に任せた方が良いだろうとシャラーシャはすぐに思い直した。
パンパン!!第二王子ダイルがコークス卿の腕をパンパンと叩く。これが二人の合図なのか、コークス卿はいともあっさりと第二王子ダイルの首から腕を外した。
「えほっ!お前、加減がなさすぎ!剣を抜くか?」
又もや物騒な事をコークス卿に向かって投げかけている第二王子ダイルだが、コークス卿は両手を上げて降参ポーズ。
「ご令嬢の前ですよ?殿下の剣は受けられません。」
「はっ!令嬢ねぇ?どこを見たらそう思えるんだよ?まぁ~見れるとしたらこの髪か?ふ~ん?珍しいじゃん?」
無作法にも、ツカツカとシャラーシャに近づいたと思ったらサラリとその髪に触れた。
「殿下!!」
コークス卿の声とと共に、第二王子ダイルが後ろへ引き戻されていく。
「ご令嬢の身体にそう容易く触るものではありません!王家としての、男としての品位を疑われますよ!?」
(申し訳ありませんが、コークス卿…既にダイル殿下からは品位のかけらも感じはしません……)
「は!品なんてもんはなんの糧にもならねぇだろ、アルジーノ?信じられるのは己のみだ!おい!シャラーシャとやら、お前も自分の信念に沿ってそいつら育ててるんだろう?」
(そいつら…幻の蝶達ですね?)
「え、えぇ…」
(初代の蝶侯爵からの我が家の伝統ですもの…)
「俺もなんだよ?お前は自由にしてていいって言ったよな?そこんとこは良い女だ!よし!やっぱり熊を獲ろう!!」
後ろへ引き戻されていった第二王子ダイルはそのままクルリと身を翻して、脱兎の如くに暗闇に紛れる様に走り去っていった………
「熊…………?」
(信念がどうやったら熊になるの?)
ちっとも理解できるところがない第二王子ダイルは数名の騎士が必死に追いかける中消えて行く……
「……申し訳ありません。シャラーシャ嬢。お手を煩わせました。お怪我は?」
「…………いえ………」
「そうですか。良かったです…これで生存確認はできましたから、後は熊が出そうな所を押さえておくべきですね?」
「はい?」
「あ、シャラーシャ嬢。申し訳ありませんが、熊出没地域を教えてくださいませんか?」
「え?…生存確認に……熊……?」
シャラーシャは混乱している………
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