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4 三人の王子と深窓の令嬢の真相 2
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「お父様……私、正装する必要ありまして?」
「…………」
「…そもそも、出迎えにも要らなかったのでは?」
「…………うむ………」
ここまでの展開で、シャラーシャは誰一人に対しても挨拶さえできていない………
出迎えに出ていた侍女達が次々に屋敷の中へと戻り、自分達の仕事に戻っていく。
残されたのは、王城から来た近衛騎士団とエシュルーン領の騎士団の面々のみだ…
🦋🦋🦋🦋🦋
「いや、エシュルーン卿!素晴らしい物だった!」
初めて全員が集まった晩餐の席で一人上機嫌なのは第一王子ヨシャンテだ。何やら秘湯の如くの温泉が甚く気に入った様子。
「見てくれ!私のレディ達の柔肌は直ぐに荒れてしまうのに、こんなに、なめし革の様に滑らかに艶やかになって……」
第一王子ヨシャンテは左右の席にステラ嬢とエイミー嬢を侍らせて両手に彼女達の手を取ってご満悦だ。
キャシー嬢は今寝室でマッサージを受けているのだそうだ。食事もこのまま部屋で摂る失礼をお許しください、と先程カードを添えての謝罪と断りがあった。どのご令嬢方も今はもう未亡人で、第一王子ヨシャンテの熱い口説き文句に落とされてのお付き合いだそうだ。どのご令嬢も未亡人の立場なのだが、第一王子ヨシャンテに言わせると魅力溢れる立派なレディにしか見えないとのことだった。
マッサージ師を部屋に案内するついでに、シャラーシャはこの第一王子殿下一行に挨拶をしたのだが、やはり王子は自分のレディに気を配るばかりで、シャラーシャの事は眼中になさそうだった所を、キャシー嬢が見かねて、色々と説明を付け加えてくれたのだ。
「エシュルーン侯爵…私達、先代の侯爵にお会いしたことがございましてよ?」
「えぇ、熱心なお方で密かに貴族の令嬢方には人気がおありだったのよね?」
「私達の国の象徴たる蝶を大切にしてくださっていて、私達の代の家の者はエシュルーン侯爵に尊敬の念が耐えませんでしたわ。」
そこだけを見るならば和やかな晩餐の中にシャラーシャの祖父の話が出てきて、それだけ祖父や父は価値のある仕事をしていたのだと密かにシャラーシャは胸を熱くした。
「…そうか……その先代にご挨拶できないのは非常に残念だが、今宵は貴方達に合わせなくて良かったと心から思うよ?」
第一王子ヨシャンテのこの言葉を聞くまでは………
「…………」
(どういう意味なのでしょう……?)
「だって、ステラもエイミーもきっと先代に夢中になってしまっただろう?そんな姿を見たら、私は嫉妬でどうにかなりそうだよ?」
(お待ちくださいませ、殿下。もし祖父が生きていたとしても、とてもレディを相手になんて出来ないほどのヨボヨボのお爺ちゃんでしょうに……)
「ま、殿下ったら……」
「うふふ、かわいらしい方ね?」
(何を見せられているのだろうか……お父様………)
ちらり、と父エシュルーン侯爵を見やればその顔は無表情………
また第三王子スイリーときたら、ずっとエシュルーン侯爵の隣に控えているセバスを見つめている……そう、それはもう、うっとりとした表情で………
結局、シャラーシャは第三王子スイリーの所には挨拶には行けなかった。いや部屋へは行ったのだが、スイリーが部屋を抜け出していてセバスにベッタリと着いて回って仕事の邪魔をする為に、シャラーシャが第一王子ヨシャンテの部屋の世話係に回ったからだ。なのでセバスは父エシュルーン侯爵の側を離れず常に横にいる様になってしまった。
第三王子スイリーは食事もおざなりにずっとニコニコしながらセバスを見ている。
(本当、何を見せられているのやら………)
「まだ、第二王子殿下はお戻りではないのか?」
エシュルーン侯爵がセバスに声をかければ、第三王子スイリーが目を輝かせる……
「カッコいい……父上と同じくらいか、少し上かな?侯爵もいいけど、やっぱりセバス……」
なんてことをブツブツと呟いているのだが、皆さん綺麗に聞き流している様だ。
「はい、まだお戻りではない様子です。近衛の方々に聞きましたところ、その、この様な事は日常茶飯事の様でして……数日ほど姿が見えなくなる事はよくあるそうです………」
「そうか………」
第二王子ダイルに関しては未だに顔さえも見ていないという始末………
「……お父様…私、自分の仕事に戻っても宜しいですわよね?……ね?………ね?」
父エシュルーン侯爵にシャラーシャは圧をかける。どう見ても、ここにはシャラーシャを必要とも、その視界にも入れようとさえしない者達ばかりだ。なんと言われて王城から送り出されたのかは知らないが、毎日毎日これの繰り返しでは、シャラーシャ自身の心が腐ってしまいそうだ。
こんなことより、シャラーシャにはレディ達が褒めてくれた初代から受け継がれている仕事があるのだから……
「…………」
「…そもそも、出迎えにも要らなかったのでは?」
「…………うむ………」
ここまでの展開で、シャラーシャは誰一人に対しても挨拶さえできていない………
出迎えに出ていた侍女達が次々に屋敷の中へと戻り、自分達の仕事に戻っていく。
残されたのは、王城から来た近衛騎士団とエシュルーン領の騎士団の面々のみだ…
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「いや、エシュルーン卿!素晴らしい物だった!」
初めて全員が集まった晩餐の席で一人上機嫌なのは第一王子ヨシャンテだ。何やら秘湯の如くの温泉が甚く気に入った様子。
「見てくれ!私のレディ達の柔肌は直ぐに荒れてしまうのに、こんなに、なめし革の様に滑らかに艶やかになって……」
第一王子ヨシャンテは左右の席にステラ嬢とエイミー嬢を侍らせて両手に彼女達の手を取ってご満悦だ。
キャシー嬢は今寝室でマッサージを受けているのだそうだ。食事もこのまま部屋で摂る失礼をお許しください、と先程カードを添えての謝罪と断りがあった。どのご令嬢方も今はもう未亡人で、第一王子ヨシャンテの熱い口説き文句に落とされてのお付き合いだそうだ。どのご令嬢も未亡人の立場なのだが、第一王子ヨシャンテに言わせると魅力溢れる立派なレディにしか見えないとのことだった。
マッサージ師を部屋に案内するついでに、シャラーシャはこの第一王子殿下一行に挨拶をしたのだが、やはり王子は自分のレディに気を配るばかりで、シャラーシャの事は眼中になさそうだった所を、キャシー嬢が見かねて、色々と説明を付け加えてくれたのだ。
「エシュルーン侯爵…私達、先代の侯爵にお会いしたことがございましてよ?」
「えぇ、熱心なお方で密かに貴族の令嬢方には人気がおありだったのよね?」
「私達の国の象徴たる蝶を大切にしてくださっていて、私達の代の家の者はエシュルーン侯爵に尊敬の念が耐えませんでしたわ。」
そこだけを見るならば和やかな晩餐の中にシャラーシャの祖父の話が出てきて、それだけ祖父や父は価値のある仕事をしていたのだと密かにシャラーシャは胸を熱くした。
「…そうか……その先代にご挨拶できないのは非常に残念だが、今宵は貴方達に合わせなくて良かったと心から思うよ?」
第一王子ヨシャンテのこの言葉を聞くまでは………
「…………」
(どういう意味なのでしょう……?)
「だって、ステラもエイミーもきっと先代に夢中になってしまっただろう?そんな姿を見たら、私は嫉妬でどうにかなりそうだよ?」
(お待ちくださいませ、殿下。もし祖父が生きていたとしても、とてもレディを相手になんて出来ないほどのヨボヨボのお爺ちゃんでしょうに……)
「ま、殿下ったら……」
「うふふ、かわいらしい方ね?」
(何を見せられているのだろうか……お父様………)
ちらり、と父エシュルーン侯爵を見やればその顔は無表情………
また第三王子スイリーときたら、ずっとエシュルーン侯爵の隣に控えているセバスを見つめている……そう、それはもう、うっとりとした表情で………
結局、シャラーシャは第三王子スイリーの所には挨拶には行けなかった。いや部屋へは行ったのだが、スイリーが部屋を抜け出していてセバスにベッタリと着いて回って仕事の邪魔をする為に、シャラーシャが第一王子ヨシャンテの部屋の世話係に回ったからだ。なのでセバスは父エシュルーン侯爵の側を離れず常に横にいる様になってしまった。
第三王子スイリーは食事もおざなりにずっとニコニコしながらセバスを見ている。
(本当、何を見せられているのやら………)
「まだ、第二王子殿下はお戻りではないのか?」
エシュルーン侯爵がセバスに声をかければ、第三王子スイリーが目を輝かせる……
「カッコいい……父上と同じくらいか、少し上かな?侯爵もいいけど、やっぱりセバス……」
なんてことをブツブツと呟いているのだが、皆さん綺麗に聞き流している様だ。
「はい、まだお戻りではない様子です。近衛の方々に聞きましたところ、その、この様な事は日常茶飯事の様でして……数日ほど姿が見えなくなる事はよくあるそうです………」
「そうか………」
第二王子ダイルに関しては未だに顔さえも見ていないという始末………
「……お父様…私、自分の仕事に戻っても宜しいですわよね?……ね?………ね?」
父エシュルーン侯爵にシャラーシャは圧をかける。どう見ても、ここにはシャラーシャを必要とも、その視界にも入れようとさえしない者達ばかりだ。なんと言われて王城から送り出されたのかは知らないが、毎日毎日これの繰り返しでは、シャラーシャ自身の心が腐ってしまいそうだ。
こんなことより、シャラーシャにはレディ達が褒めてくれた初代から受け継がれている仕事があるのだから……
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