22 / 27
22 計算でした
しおりを挟む
アランドには本当にありがとう、ともう一度お礼を心の中で思いっきり言いました!
ごめんなさい、アランド。多分こう言ってくれるだろうと最初から考えての事で、私の計画通りです。
だって、私はどうしてもノスタール領のトワールに行きたかったのですもの!
ナターシャの部屋から持ち帰ったシャーリンの日記から、ノスタール伯爵との婚約が順調に進み一年前の婚礼と同時にノスタール領にナターシャが移り住む計画であった事がわかった。とても優しくて、自分のやるべき事に誇りと信念を持っているランストン様の事を心から尊敬して愛情を持てる事がこの上もなく嬉しいと、私、ナターシャは語っていたそうだ……そんな事言ったのかしら…?それなら私もランストン様の事を心から慕っていた事になる。全く心の琴線にもエスト様のお顔は引っ掛からなかったのに?あまり、似ていない兄弟かもしれないけど……
一年前、婚礼に先立ってランストン様の仕事の関係でちょっとしたお披露目会があった様でナターシャも当然に招待されてノスタール領に行く事になるわけだが……その後が無い……無い、と言うかナターシャが帰ってこない理由がわからずシャーリンは色々な不満を述べ綴っているだけだった。
帰ってこないと言うのならばまだナターシャはノスタール領にいる事になる。なぜ、除籍になったのかは…もしかしてそこで亡くなったランストン様の代わりに旦那様を見つけたとか?でも、シャーリンの日記にある様に心から好きな人が亡くなって直ぐに他の人と一緒になんてなるだろうか、と不可解な事が多いのだけど、シャーリンにもその理由が知らされていなかったからこれ以上は分からないのよね。
ナターシャが向かった先はノスタール領トワールだ。ここまで分かっているのなら、私ナターシャは必ずそこにいる!
生きているのか死んでいるのか、私の様にシャーリンがそこにいるのか分からないけれど、分からないなら行ってみればいいだけの事よ。
だからロワンナ様の婚礼を悪いのだけど利用させて貰ったわ。アランドにトワールに行きたいと言った所で、ナターシャがトワールにいる事を鍵を掛けてまで黙っていた人だもの。首を縦に振るとは思えなかったの…
だから、ごめんね、アランド…貴方に少し嘘をつきます………
ノスタール伯爵の婚礼が終わって屋敷に帰ってから急いで旅の支度をして、親しい人だけの祝賀会だから新しいドレスを新調するよりは花嫁よりも目立た無い華美でない物の方が場にあっているから手頃なドレスをいくつか選んで、アランドに挨拶をしてアンナを伴い出発した……
けれど、行き先はノスタール領トワールだ。ロワンナ伯爵夫人の祝賀パーティーが行われるはずのスートンとは真逆。
「アンナ、この手紙をスートンのノスタール伯爵まで届けて貰えない?」
「まぁ、これから向かいますのに?」
「ふふ……御者にはこれを…!早目にあちらにつく様にお願いね?」
「畏まりました…?」
訝しげなアンナの顔にニッコリ笑顔で返して、怪しんでも言われた通りに動いてくれるアンナに感謝さえした。
そう、私達の行き先はトワール…海に面した港町。きっとそこにナターシャがいるから…
ロワンナ様には断りのお手紙を送った。トワールにいる姉の調子が良くないと連絡が入った事にして、出席できない非礼を詫びる手紙だ。
コトコトと馬車に揺られながら私であるナターシャに想いを馳せる。何をしているの?どこにいるの?誰といるの?まだ私が見知らぬ所で何を思って過ごしていたんだろう……
会った時にはなんて言おうか?取り留めもない事を考えているうちにエンギュート邸は遥か遠くに離れていった…………
潮の匂い……?懐かしいとも思えない匂いが鼻をついて目が覚めた…
眠っていたようね………?薫ってくる空気の匂いが違う…エンギュート領は内陸にあるため土地の雰囲気もやはり違う。エンギュート邸からは既に二日は経っていて遠くまで来た事を実感する。
「若奥様……宜しいのですか?スートンではなくて、まさかトワールへ向かっているなんて……」
心配というか、アンナは今日は朝からずっと曇った顔をしている。トワールに向かう事を知った時からアランドへ何も告げずに良いのかと心配事を口にもしている。
「大丈夫よ、アンナ。スートンへは手紙で知らせているのだし、もし、エンギュートから何某かの使いが来ても私がトワールへ向かった事はアランドへ伝わるはずだから。」
「そうでしょうが、若旦那様はご心配しますよ?」
アランドに知らせた方がいいと言うアンナだが、トワールへと向かう事自体は反対はしない。結局の所一緒に付き合ってくれるアンナは優しい使用人だ。
アンナ、大好きよ。ありがとう……
ごめんなさい、アランド。多分こう言ってくれるだろうと最初から考えての事で、私の計画通りです。
だって、私はどうしてもノスタール領のトワールに行きたかったのですもの!
ナターシャの部屋から持ち帰ったシャーリンの日記から、ノスタール伯爵との婚約が順調に進み一年前の婚礼と同時にノスタール領にナターシャが移り住む計画であった事がわかった。とても優しくて、自分のやるべき事に誇りと信念を持っているランストン様の事を心から尊敬して愛情を持てる事がこの上もなく嬉しいと、私、ナターシャは語っていたそうだ……そんな事言ったのかしら…?それなら私もランストン様の事を心から慕っていた事になる。全く心の琴線にもエスト様のお顔は引っ掛からなかったのに?あまり、似ていない兄弟かもしれないけど……
一年前、婚礼に先立ってランストン様の仕事の関係でちょっとしたお披露目会があった様でナターシャも当然に招待されてノスタール領に行く事になるわけだが……その後が無い……無い、と言うかナターシャが帰ってこない理由がわからずシャーリンは色々な不満を述べ綴っているだけだった。
帰ってこないと言うのならばまだナターシャはノスタール領にいる事になる。なぜ、除籍になったのかは…もしかしてそこで亡くなったランストン様の代わりに旦那様を見つけたとか?でも、シャーリンの日記にある様に心から好きな人が亡くなって直ぐに他の人と一緒になんてなるだろうか、と不可解な事が多いのだけど、シャーリンにもその理由が知らされていなかったからこれ以上は分からないのよね。
ナターシャが向かった先はノスタール領トワールだ。ここまで分かっているのなら、私ナターシャは必ずそこにいる!
生きているのか死んでいるのか、私の様にシャーリンがそこにいるのか分からないけれど、分からないなら行ってみればいいだけの事よ。
だからロワンナ様の婚礼を悪いのだけど利用させて貰ったわ。アランドにトワールに行きたいと言った所で、ナターシャがトワールにいる事を鍵を掛けてまで黙っていた人だもの。首を縦に振るとは思えなかったの…
だから、ごめんね、アランド…貴方に少し嘘をつきます………
ノスタール伯爵の婚礼が終わって屋敷に帰ってから急いで旅の支度をして、親しい人だけの祝賀会だから新しいドレスを新調するよりは花嫁よりも目立た無い華美でない物の方が場にあっているから手頃なドレスをいくつか選んで、アランドに挨拶をしてアンナを伴い出発した……
けれど、行き先はノスタール領トワールだ。ロワンナ伯爵夫人の祝賀パーティーが行われるはずのスートンとは真逆。
「アンナ、この手紙をスートンのノスタール伯爵まで届けて貰えない?」
「まぁ、これから向かいますのに?」
「ふふ……御者にはこれを…!早目にあちらにつく様にお願いね?」
「畏まりました…?」
訝しげなアンナの顔にニッコリ笑顔で返して、怪しんでも言われた通りに動いてくれるアンナに感謝さえした。
そう、私達の行き先はトワール…海に面した港町。きっとそこにナターシャがいるから…
ロワンナ様には断りのお手紙を送った。トワールにいる姉の調子が良くないと連絡が入った事にして、出席できない非礼を詫びる手紙だ。
コトコトと馬車に揺られながら私であるナターシャに想いを馳せる。何をしているの?どこにいるの?誰といるの?まだ私が見知らぬ所で何を思って過ごしていたんだろう……
会った時にはなんて言おうか?取り留めもない事を考えているうちにエンギュート邸は遥か遠くに離れていった…………
潮の匂い……?懐かしいとも思えない匂いが鼻をついて目が覚めた…
眠っていたようね………?薫ってくる空気の匂いが違う…エンギュート領は内陸にあるため土地の雰囲気もやはり違う。エンギュート邸からは既に二日は経っていて遠くまで来た事を実感する。
「若奥様……宜しいのですか?スートンではなくて、まさかトワールへ向かっているなんて……」
心配というか、アンナは今日は朝からずっと曇った顔をしている。トワールに向かう事を知った時からアランドへ何も告げずに良いのかと心配事を口にもしている。
「大丈夫よ、アンナ。スートンへは手紙で知らせているのだし、もし、エンギュートから何某かの使いが来ても私がトワールへ向かった事はアランドへ伝わるはずだから。」
「そうでしょうが、若旦那様はご心配しますよ?」
アランドに知らせた方がいいと言うアンナだが、トワールへと向かう事自体は反対はしない。結局の所一緒に付き合ってくれるアンナは優しい使用人だ。
アンナ、大好きよ。ありがとう……
0
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる