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17 ナターシャへの手紙 2
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普段午前中から休む事のない私をアンナはかなり心配してくれていた様で、目が覚めたときにはお医者様が側に控えていたくらいだった。
「大丈夫よ、アンナ。少し疲れてしまっていただけだから。」
昨夜は主人であるアランドとはいたしてはいない…………今朝2人の会話を嫌だというほど聞いていた側付きの使用人は分かっているはずだが、それでも疲労を感じている私に対して本当に体調が悪いのだとアンナは判断したらしかった。けれど、本当に一眠りしたらサクッと回復した私は、少し調べ物があるから、と執務室に篭ることにする。昨日ナターシャの部屋から持って来ていた手紙の束とカード類を鍵付きの小箱に入れて持ち運ぶ。 アンナには1人になりたいと側を離れてもらった。
さて、ナターシャの部屋の鍵をどうするか…?執務室の机の鍵はアランドへ返したし、もう少しナターシャの部屋を調べたくてまだ持っていたけど、この執務机から無くなっていることにアランドが気がつく前に全て調べあげなくてはいけない。しばらく、ナターシャの鍵は預かっておこう…またアランドから鍵を借りるのは難しそうだから……
執務室には国に関するいろいろな資料が集まっている。
先ずはノスタール伯爵の領地を調べてみることにする。貴族全集なる貴族各家に関してまとめ上げているファイルがずらっと並んでいる。年号が変わる度、当主が入れ替わる度に更新されていく資料は膨大なものだ。その中の最も新しい物を取り出してナターシャの部屋から持ってきた手紙と共に机に並べていく。ノスタール伯爵の領地は海辺に面した広大な土地。主に貿易の拠点や、漁業の要ともなる重要な立地にあった。もちろん、トワールという町もノフタール領の一部入っていた。
ランストン・ノスタール伯爵からの手紙…
最初の頃は取り留めない時事の事や、こちら様子を気遣うもの、トワールの良い所など、優しい文面で書かれていて文章からもとても優しい方だと読み取れる。途中の手紙からは、早く会いたいと書かれていた……?式の日取りや、移動時期とか?……式?もしかして、結婚式?
「結婚式って……?」
ノスタール伯爵ならあと数週間後にシャーリンの友人のロワンナ侯爵令嬢との婚礼が……
あら?急いで、箱の中の招待状を探してみる。ロワンナ侯爵令嬢から、これも覚えていないのだが、招待状が送られてきていた。
そこにはロワンナ侯爵令嬢と、エスト・ノスタール伯爵の名が書かれていた…
エスト様……お名前はついこの間のお茶会の時にロワンナ侯爵令嬢から伺ったばかり…でも、御二男と言っていなかった?ロワンナ侯爵令嬢から頂いた招待状とナターシャに来ていた手紙の封蝋は同じ印……波に漂う花の紋…
では、ランストン様とエスト様は同じ家系の兄弟で、ランストン様が長男という事で間違えはない。
「でも……エスト様が伯爵位を継いでらっしゃる?」
ロワンナ侯爵令嬢はエスト様のことを伯爵と言っていた。でも、普通なら爵位を継ぐのは長男か養子をとるか娘の婿となるはず…爵位を継がせられない何かが有れば別だが、特段の理由なく次男が家を継ぐことはないはず…ナターシャにも式の日取りを相談していたし、あちらへ移り住む話もしていたんだからノスタール伯爵領で行う2人の結婚式の事で間違えはないと思う。ロワンナ侯爵令嬢とエスト様の事なら2人が相談するでしょうし…
ランストン様に何かあった?爵位を剥奪される様な?だから弟に爵位を譲り自分は後継者から下されたのかしら?最後の手紙はちょうど一年前くらいになる。そこに何かの招待と逢えるのを心待ちにしている、との言葉で締めてあった。ナターシャは、私は行ったのかしら?トワールに………?
シャーリンは貴族全集ノスタール伯爵頁をパラパラと捲り読み進める。領地の場所、特色、名産物に、家系図それぞれ詳しく載っていた。
「……死亡…………?え………何?死亡?」
何気なく見ていたノスタール伯爵の系図。最新の物を目で追っていたらやはりそこにはランストン様の名前が長男として載っていて…けれど、その名前の上から朱線を引いてあって、死亡…と………
ランストン様は、亡くなっている……………
時期は?いつ?なぜ??死亡時期は、ちょうど一年前だ…………
私の、婚約者は亡くなって………?
なんて事……そんな事も、忘れてしまっていたの……?
呆然とノスタール家家系図をしばし、見つめていたシャーリンは震える手で自分の家系図を開いて見る。エンギュート侯爵家、良く見慣れた木に蔓草の意匠の紋…無言で頁を捲り家系図まで来る。震える指で名前を辿って……
ナターシャ、アランド、シャーリンの名前を見つけた。シャーリン・養女、そこにはそう朱く記されているだけだった…
「大丈夫よ、アンナ。少し疲れてしまっていただけだから。」
昨夜は主人であるアランドとはいたしてはいない…………今朝2人の会話を嫌だというほど聞いていた側付きの使用人は分かっているはずだが、それでも疲労を感じている私に対して本当に体調が悪いのだとアンナは判断したらしかった。けれど、本当に一眠りしたらサクッと回復した私は、少し調べ物があるから、と執務室に篭ることにする。昨日ナターシャの部屋から持って来ていた手紙の束とカード類を鍵付きの小箱に入れて持ち運ぶ。 アンナには1人になりたいと側を離れてもらった。
さて、ナターシャの部屋の鍵をどうするか…?執務室の机の鍵はアランドへ返したし、もう少しナターシャの部屋を調べたくてまだ持っていたけど、この執務机から無くなっていることにアランドが気がつく前に全て調べあげなくてはいけない。しばらく、ナターシャの鍵は預かっておこう…またアランドから鍵を借りるのは難しそうだから……
執務室には国に関するいろいろな資料が集まっている。
先ずはノスタール伯爵の領地を調べてみることにする。貴族全集なる貴族各家に関してまとめ上げているファイルがずらっと並んでいる。年号が変わる度、当主が入れ替わる度に更新されていく資料は膨大なものだ。その中の最も新しい物を取り出してナターシャの部屋から持ってきた手紙と共に机に並べていく。ノスタール伯爵の領地は海辺に面した広大な土地。主に貿易の拠点や、漁業の要ともなる重要な立地にあった。もちろん、トワールという町もノフタール領の一部入っていた。
ランストン・ノスタール伯爵からの手紙…
最初の頃は取り留めない時事の事や、こちら様子を気遣うもの、トワールの良い所など、優しい文面で書かれていて文章からもとても優しい方だと読み取れる。途中の手紙からは、早く会いたいと書かれていた……?式の日取りや、移動時期とか?……式?もしかして、結婚式?
「結婚式って……?」
ノスタール伯爵ならあと数週間後にシャーリンの友人のロワンナ侯爵令嬢との婚礼が……
あら?急いで、箱の中の招待状を探してみる。ロワンナ侯爵令嬢から、これも覚えていないのだが、招待状が送られてきていた。
そこにはロワンナ侯爵令嬢と、エスト・ノスタール伯爵の名が書かれていた…
エスト様……お名前はついこの間のお茶会の時にロワンナ侯爵令嬢から伺ったばかり…でも、御二男と言っていなかった?ロワンナ侯爵令嬢から頂いた招待状とナターシャに来ていた手紙の封蝋は同じ印……波に漂う花の紋…
では、ランストン様とエスト様は同じ家系の兄弟で、ランストン様が長男という事で間違えはない。
「でも……エスト様が伯爵位を継いでらっしゃる?」
ロワンナ侯爵令嬢はエスト様のことを伯爵と言っていた。でも、普通なら爵位を継ぐのは長男か養子をとるか娘の婿となるはず…爵位を継がせられない何かが有れば別だが、特段の理由なく次男が家を継ぐことはないはず…ナターシャにも式の日取りを相談していたし、あちらへ移り住む話もしていたんだからノスタール伯爵領で行う2人の結婚式の事で間違えはないと思う。ロワンナ侯爵令嬢とエスト様の事なら2人が相談するでしょうし…
ランストン様に何かあった?爵位を剥奪される様な?だから弟に爵位を譲り自分は後継者から下されたのかしら?最後の手紙はちょうど一年前くらいになる。そこに何かの招待と逢えるのを心待ちにしている、との言葉で締めてあった。ナターシャは、私は行ったのかしら?トワールに………?
シャーリンは貴族全集ノスタール伯爵頁をパラパラと捲り読み進める。領地の場所、特色、名産物に、家系図それぞれ詳しく載っていた。
「……死亡…………?え………何?死亡?」
何気なく見ていたノスタール伯爵の系図。最新の物を目で追っていたらやはりそこにはランストン様の名前が長男として載っていて…けれど、その名前の上から朱線を引いてあって、死亡…と………
ランストン様は、亡くなっている……………
時期は?いつ?なぜ??死亡時期は、ちょうど一年前だ…………
私の、婚約者は亡くなって………?
なんて事……そんな事も、忘れてしまっていたの……?
呆然とノスタール家家系図をしばし、見つめていたシャーリンは震える手で自分の家系図を開いて見る。エンギュート侯爵家、良く見慣れた木に蔓草の意匠の紋…無言で頁を捲り家系図まで来る。震える指で名前を辿って……
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