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9 何で入れないの
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取り敢えず、今は考えないことよ?
私の長所と短所は、楽観的に考えてしまう所よ!それで良く、シャーリンやアランドにも注意されていたじゃない?
一緒に寝ようってアランドに言われたとしてもそれは、今夜であって、今すぐにでは無いわ。夜までだって時間はあるし、急に体調が悪くなる事もそれぞれあるでしょう?
だから、大丈夫!何とかなるわ!
なんとかしようにも具体策はこれと言っては無いのだけど、最終的な逃げ道はある………でも出来れば使いたくは無いの………
我が家エンギュート邸に着いてからも、何故かアランドは側を離れないし、なんなら一緒に温室で花の鑑賞やら届けられた(いつの間にか作られていたロワンナ侯爵令嬢結婚式用)ドレスや小物の確認やらで晩餐まで一緒に過ごし………あっという間に入浴まで終わってしまった…………
どうする?一緒に寝るの?このまま流されるの?
悶々とただアランドの入浴が終わるのを待つつもりもなくて、廊下に出る。アンナには少し散歩して来るって言い置いて……
アランドとのこれからの事なんて考えたくもなかった私は、自然とナターシャの部屋に向かっていた。
私、ナターシャは誰か好きな人はいなかったのかしら?こういう経験がないって結婚もしてなかったということよね?…1年間の記憶の中に何かない?
お茶会で聞いた1年前の悲しい出来事?ノスタール伯爵と何があった?
このまま弟とそういう事が出来る?
グルグルと纏まらない考えが頭の中にひしめいていて、ゆっくりと考える時間も情報も欲しかった。
私の部屋…何か、知ることが出来ない?シャーリンの様に日記をつける習慣は無かったから、手紙や、書類や……そうだ!引き出しの中には頂いた大切な手紙をしまう習慣があったわ…では、一年前だって何か残ってるかもしれない…希望が見えて来たわね?ナターシャの姿形も無いんですもの。本人、私はきっとこの屋敷にはいない……どこに行ってしまったのか?もしかしたら、もう亡くなって………
いえいえいえ!まさか!否定し続けていた考えを振り払う様に足早に柔らかな絨毯が敷いてある廊下を急ぐ…幼い頃館の傷んだ所の改修ついでに、寝室があった3階の廊下のカーペットの色を決めるのに兄弟喧嘩したっけ?赤がいいと言うアランドに対して緑の落ち着いた若草色がいいと言う私。一向に決まらないからシャーリンがお婆様に相談しに行って……結局はお婆様の好きな焦茶にになって、皆んなで熊色って呼んでた…そんな思い出のある廊下の一番奥が私、ナターシャの自室だったわ。
変わって、いなければね?
熊色の廊下を急ぎ進んで、自室の扉が見えたら、ホッとため息が出た。変わっていない…いえ、当たり前よね?私の家だもの…でも、何か変な感じがする。この部屋は私が毎日開け閉めしていた筈なのに、懐かしいと何故感じるの?気安く開けられる筈なのに。何故か躊躇してしまう。
そっと、手を伸ばしてみる。このドアノブも良く見知っていてよ?手触りも覚えているもの。私の部屋だし……
ガチャ……手になじんだ刺激と共に、懐かしい室内が迎えてくれると思っていた。のに……
ドアノブはガチャ、と音を立てただけだった…押しても、引いてもドアは開かない。
「鍵が……?」
自分の部屋なのに?
「そこは開けられないよ?シャーリン。」
ビクッとして振り返れば夜着姿のアランドが立っている。アンナに部屋から出たことが伝わった様で探しにきたのだろう。
「なぜ?鍵をかけているの?」
信じられない思いでシャーリンはアランドを見る。未だかつて一度も自分の部屋に入れなかったことは無いから。
「部屋の主が、今はいないからだよ?」
「……いない………?」
「シャーリン……やはり、君に話さなければよかった……」
話す?何を?ナターシャに関する事を言っているの?私の身体はどこ?
「あぁ、そんな顔、しないでくれ、シャーリン……君を困らせたり、悲しませる為にしてるんじゃないんだ……」
私は今どんな顔をしている?
側まできたアランドに抱きしめられてしまって…ヒョイッと横抱きに抱き上げられる。
「アランド!!」
いきなりの事にびっくりして、仕方なしにシャーリンはアランドの肩に掴まる。
「シャーリン、今日はもう休もう。外出して君も疲れただろう。」
「なんで!なんで鍵をかけているの!?今までそんな事なかったじゃ無い!」
「……うん、そうだね?ねぇ、シャーリン。」
「……なぁに?」
どんな理由を言われても納得なんて出来ないわ、アランド。なんで鍵なんて……折角、折角思い出そうとしているのに……
「シャーリン…愛してるよ…」
優しく額にキスをしながらアランドが言った言葉は愛してる………私だって、弟としてなら愛してるわよ!言えないけど!!
「どうして、入ったら行けないの?」
「……入っちゃ行けないわけじゃ無いよ……」
アランドはシャーリンを横抱きにしたままスタスタとナターシャの部屋から離れて行く。自分達の寝室に……
私の長所と短所は、楽観的に考えてしまう所よ!それで良く、シャーリンやアランドにも注意されていたじゃない?
一緒に寝ようってアランドに言われたとしてもそれは、今夜であって、今すぐにでは無いわ。夜までだって時間はあるし、急に体調が悪くなる事もそれぞれあるでしょう?
だから、大丈夫!何とかなるわ!
なんとかしようにも具体策はこれと言っては無いのだけど、最終的な逃げ道はある………でも出来れば使いたくは無いの………
我が家エンギュート邸に着いてからも、何故かアランドは側を離れないし、なんなら一緒に温室で花の鑑賞やら届けられた(いつの間にか作られていたロワンナ侯爵令嬢結婚式用)ドレスや小物の確認やらで晩餐まで一緒に過ごし………あっという間に入浴まで終わってしまった…………
どうする?一緒に寝るの?このまま流されるの?
悶々とただアランドの入浴が終わるのを待つつもりもなくて、廊下に出る。アンナには少し散歩して来るって言い置いて……
アランドとのこれからの事なんて考えたくもなかった私は、自然とナターシャの部屋に向かっていた。
私、ナターシャは誰か好きな人はいなかったのかしら?こういう経験がないって結婚もしてなかったということよね?…1年間の記憶の中に何かない?
お茶会で聞いた1年前の悲しい出来事?ノスタール伯爵と何があった?
このまま弟とそういう事が出来る?
グルグルと纏まらない考えが頭の中にひしめいていて、ゆっくりと考える時間も情報も欲しかった。
私の部屋…何か、知ることが出来ない?シャーリンの様に日記をつける習慣は無かったから、手紙や、書類や……そうだ!引き出しの中には頂いた大切な手紙をしまう習慣があったわ…では、一年前だって何か残ってるかもしれない…希望が見えて来たわね?ナターシャの姿形も無いんですもの。本人、私はきっとこの屋敷にはいない……どこに行ってしまったのか?もしかしたら、もう亡くなって………
いえいえいえ!まさか!否定し続けていた考えを振り払う様に足早に柔らかな絨毯が敷いてある廊下を急ぐ…幼い頃館の傷んだ所の改修ついでに、寝室があった3階の廊下のカーペットの色を決めるのに兄弟喧嘩したっけ?赤がいいと言うアランドに対して緑の落ち着いた若草色がいいと言う私。一向に決まらないからシャーリンがお婆様に相談しに行って……結局はお婆様の好きな焦茶にになって、皆んなで熊色って呼んでた…そんな思い出のある廊下の一番奥が私、ナターシャの自室だったわ。
変わって、いなければね?
熊色の廊下を急ぎ進んで、自室の扉が見えたら、ホッとため息が出た。変わっていない…いえ、当たり前よね?私の家だもの…でも、何か変な感じがする。この部屋は私が毎日開け閉めしていた筈なのに、懐かしいと何故感じるの?気安く開けられる筈なのに。何故か躊躇してしまう。
そっと、手を伸ばしてみる。このドアノブも良く見知っていてよ?手触りも覚えているもの。私の部屋だし……
ガチャ……手になじんだ刺激と共に、懐かしい室内が迎えてくれると思っていた。のに……
ドアノブはガチャ、と音を立てただけだった…押しても、引いてもドアは開かない。
「鍵が……?」
自分の部屋なのに?
「そこは開けられないよ?シャーリン。」
ビクッとして振り返れば夜着姿のアランドが立っている。アンナに部屋から出たことが伝わった様で探しにきたのだろう。
「なぜ?鍵をかけているの?」
信じられない思いでシャーリンはアランドを見る。未だかつて一度も自分の部屋に入れなかったことは無いから。
「部屋の主が、今はいないからだよ?」
「……いない………?」
「シャーリン……やはり、君に話さなければよかった……」
話す?何を?ナターシャに関する事を言っているの?私の身体はどこ?
「あぁ、そんな顔、しないでくれ、シャーリン……君を困らせたり、悲しませる為にしてるんじゃないんだ……」
私は今どんな顔をしている?
側まできたアランドに抱きしめられてしまって…ヒョイッと横抱きに抱き上げられる。
「アランド!!」
いきなりの事にびっくりして、仕方なしにシャーリンはアランドの肩に掴まる。
「シャーリン、今日はもう休もう。外出して君も疲れただろう。」
「なんで!なんで鍵をかけているの!?今までそんな事なかったじゃ無い!」
「……うん、そうだね?ねぇ、シャーリン。」
「……なぁに?」
どんな理由を言われても納得なんて出来ないわ、アランド。なんで鍵なんて……折角、折角思い出そうとしているのに……
「シャーリン…愛してるよ…」
優しく額にキスをしながらアランドが言った言葉は愛してる………私だって、弟としてなら愛してるわよ!言えないけど!!
「どうして、入ったら行けないの?」
「……入っちゃ行けないわけじゃ無いよ……」
アランドはシャーリンを横抱きにしたままスタスタとナターシャの部屋から離れて行く。自分達の寝室に……
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