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7 奥様方のお悩みは?
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お茶の席に来て良かったと思う反面、どうしても早く帰りたいとさえ思ってしまうのは、きっとこんな話題が出るからだ。
「…ところで、お二方?」
「…?どうなさいまして?ロワンナ様?」
いそいそとおかわりのお茶を用意してくれているイライザ伯爵夫人が席に着いた。
「その、あの……」
なんとも、歯切れの悪い物言いで、いつでも清廉潔白で後めたい事のなさそうな彼女からしてはしどろもどろとする姿は到底見る事のない姿で、イライザ伯爵夫人も私もどうしたのかと、首を傾げだ。
「よ…」
「よ?」
よく見るとロワンナ侯爵令嬢の顔が真っ赤で……
「夜の、お勤めはいかがしてますの!?」
「「はい?」」
イライザ伯爵夫人と私の声が重なる。
「な、何を聞かれますの?ロワンナ様…!」
お勤めどころか、夫婦間のあれこれなど当然の如くに……独身の私に分かるわけないでしょうに!?
「イライザ様も、シャーリン様もまだ新婚の域でございましょう?私はこれから迎えるにあたってどうすれば良いかと…」
あぁ、ロワンナ侯爵令嬢のお声がどんどん小さくなって…相当に恥ずかしいのを我慢していらっしゃるのがよく分かります…でも…!
「わ、我が家は主人と歳が離れていますもの…参考になるかどうか…」
イライザ伯爵夫人は伏し目がちになってもじもじとしながら答えていらっしゃるけど……
「シャーリン様の方が、旦那様のお年も近かろうと思いますので…」
えぇぇ…こ、ここで私にこの話を向けるのですね?イライザ様!私…残念な事に?まだ経験なんてございません~…夫婦のアレコレなんて、逆に私が教えていただきたいくらいですよ~……お相手だって居ませんもの!だからシャーリンの立場としてアレコレを考えなければいけない時には弟の顔で考えなくてはなら無いのでしょ……?……無理………無理です……無理無理……お許しください……
ロワンナ侯爵令嬢は長い挙式準備期間を経てあと数週間後に結婚式を控えている。アレコレの知識を経験者から聞き出したいのも肯ける。
が、知り得無いものは教えられ無いのもまた事実、更にその相手が実の弟とくれば……
悶えて、むり~~~と叫び出したいところをグッと頬を染める事だけで私は堪える…。
シャーリンがはしたないと思われてはいけないもの。
「ロワンナ様…ノスタール伯爵はお優しい方ですか?」
いつまでも赤くなって俯いてしまって何も言えなくなってしまった私の代わりにイライザ伯爵夫人が、なんだか申し訳なさそうにロワンナ侯爵令嬢に聞いている。
「……えぇ、とても優しくしてくださいますわ。」
なんだかロワンナ侯爵令嬢の雰囲気からも先程の恥ずかしいけど興味深々全開の状態からやや静まってしまって…しんみり、とした雰囲気が流れ始めた。
ん?最大限に恥ずかしい話をしていたと思うのだけど、この急な意気消沈具合はなんでしょうか……?お二人共笑顔ではあるけれどもなんとも何かに遠慮しているとか、そんな感じで…?
「ノスタール…伯爵…?」
どこかで聞いたわね?どこ………
「ええ…そうですわ……御次男のエスト様が私のお相手ですわ…シャーリン様も、知っておられますわよね?」
私が答えを見つけるよりも早く、ロワンナ侯爵令嬢は少し、悲しそうな顔を私に向けてきた。
「はい……」
そう、知っている、と答えるしかなかった。昨夜シャーリンの日記後半部に度々出てきた方の名前…内容はほぼ破られてしまっていて、何が書かれてあったかまでは知りようもなかったけど……シャーリンは確かに知っていたのだから。
「もう、一年にもなりますのね…」
更にロワンナ侯爵令嬢の表情が沈んでしまった。
「シャーリン様もお寂しいでしょうけれど…」
私…?一年前に、私が何か寂しくなる様なことがあったの?変に思われない様にあえて質問はしないでおく…
「アランド様がお側に居てくださるんですもの、ね?」
イライザ伯爵夫人は寂しそうだけど、素敵な笑顔で元気付ける様に笑いかけてくださって…
「なんだか、しんみりしちゃいますわよね…では、花嫁さんにこれだけはアドバイスしますわ。それぞれ性格が違うように、その、男の方も、色々とご趣味がある様で……あの、その様な時には、御主人様に合わせて差し上げるのも円満の秘訣の様な気がいたします…」
「「ま……っ」」
イライザ伯爵夫人…後半はものすごい事を仰ったのでは?私もですが、ロワンナ侯爵令嬢も真っ赤になって固まっています………
私達の熱い?視線を感じて、イライザ伯爵夫人は慌ててこう付け加えた。
「あの、やはり満足して頂けなければ、他の女性に目移りしてもらっても困りますし……」
「まぁ!そんな事が?」
ロワンナ侯爵令嬢には衝撃的な事実だった様だ…
「ノスタール公爵に限って、そんな……」
流石は侯爵令嬢…生粋の箱入りお嬢様らしく、世の男性の摂理をまだ理解していない様でそんな事があるものなのか、と驚いている。
「例えば、のお話ですわ。皆様既婚者とて安心では無いと言う事です。御夫君を愛しておられるならば、その思いに応える様にするべきだと、そう思うのです。」
イライザ伯爵夫人の言葉はロワンナ侯爵令嬢と同じく、私にも深く刺さった言葉となった。
「…ところで、お二方?」
「…?どうなさいまして?ロワンナ様?」
いそいそとおかわりのお茶を用意してくれているイライザ伯爵夫人が席に着いた。
「その、あの……」
なんとも、歯切れの悪い物言いで、いつでも清廉潔白で後めたい事のなさそうな彼女からしてはしどろもどろとする姿は到底見る事のない姿で、イライザ伯爵夫人も私もどうしたのかと、首を傾げだ。
「よ…」
「よ?」
よく見るとロワンナ侯爵令嬢の顔が真っ赤で……
「夜の、お勤めはいかがしてますの!?」
「「はい?」」
イライザ伯爵夫人と私の声が重なる。
「な、何を聞かれますの?ロワンナ様…!」
お勤めどころか、夫婦間のあれこれなど当然の如くに……独身の私に分かるわけないでしょうに!?
「イライザ様も、シャーリン様もまだ新婚の域でございましょう?私はこれから迎えるにあたってどうすれば良いかと…」
あぁ、ロワンナ侯爵令嬢のお声がどんどん小さくなって…相当に恥ずかしいのを我慢していらっしゃるのがよく分かります…でも…!
「わ、我が家は主人と歳が離れていますもの…参考になるかどうか…」
イライザ伯爵夫人は伏し目がちになってもじもじとしながら答えていらっしゃるけど……
「シャーリン様の方が、旦那様のお年も近かろうと思いますので…」
えぇぇ…こ、ここで私にこの話を向けるのですね?イライザ様!私…残念な事に?まだ経験なんてございません~…夫婦のアレコレなんて、逆に私が教えていただきたいくらいですよ~……お相手だって居ませんもの!だからシャーリンの立場としてアレコレを考えなければいけない時には弟の顔で考えなくてはなら無いのでしょ……?……無理………無理です……無理無理……お許しください……
ロワンナ侯爵令嬢は長い挙式準備期間を経てあと数週間後に結婚式を控えている。アレコレの知識を経験者から聞き出したいのも肯ける。
が、知り得無いものは教えられ無いのもまた事実、更にその相手が実の弟とくれば……
悶えて、むり~~~と叫び出したいところをグッと頬を染める事だけで私は堪える…。
シャーリンがはしたないと思われてはいけないもの。
「ロワンナ様…ノスタール伯爵はお優しい方ですか?」
いつまでも赤くなって俯いてしまって何も言えなくなってしまった私の代わりにイライザ伯爵夫人が、なんだか申し訳なさそうにロワンナ侯爵令嬢に聞いている。
「……えぇ、とても優しくしてくださいますわ。」
なんだかロワンナ侯爵令嬢の雰囲気からも先程の恥ずかしいけど興味深々全開の状態からやや静まってしまって…しんみり、とした雰囲気が流れ始めた。
ん?最大限に恥ずかしい話をしていたと思うのだけど、この急な意気消沈具合はなんでしょうか……?お二人共笑顔ではあるけれどもなんとも何かに遠慮しているとか、そんな感じで…?
「ノスタール…伯爵…?」
どこかで聞いたわね?どこ………
「ええ…そうですわ……御次男のエスト様が私のお相手ですわ…シャーリン様も、知っておられますわよね?」
私が答えを見つけるよりも早く、ロワンナ侯爵令嬢は少し、悲しそうな顔を私に向けてきた。
「はい……」
そう、知っている、と答えるしかなかった。昨夜シャーリンの日記後半部に度々出てきた方の名前…内容はほぼ破られてしまっていて、何が書かれてあったかまでは知りようもなかったけど……シャーリンは確かに知っていたのだから。
「もう、一年にもなりますのね…」
更にロワンナ侯爵令嬢の表情が沈んでしまった。
「シャーリン様もお寂しいでしょうけれど…」
私…?一年前に、私が何か寂しくなる様なことがあったの?変に思われない様にあえて質問はしないでおく…
「アランド様がお側に居てくださるんですもの、ね?」
イライザ伯爵夫人は寂しそうだけど、素敵な笑顔で元気付ける様に笑いかけてくださって…
「なんだか、しんみりしちゃいますわよね…では、花嫁さんにこれだけはアドバイスしますわ。それぞれ性格が違うように、その、男の方も、色々とご趣味がある様で……あの、その様な時には、御主人様に合わせて差し上げるのも円満の秘訣の様な気がいたします…」
「「ま……っ」」
イライザ伯爵夫人…後半はものすごい事を仰ったのでは?私もですが、ロワンナ侯爵令嬢も真っ赤になって固まっています………
私達の熱い?視線を感じて、イライザ伯爵夫人は慌ててこう付け加えた。
「あの、やはり満足して頂けなければ、他の女性に目移りしてもらっても困りますし……」
「まぁ!そんな事が?」
ロワンナ侯爵令嬢には衝撃的な事実だった様だ…
「ノスタール公爵に限って、そんな……」
流石は侯爵令嬢…生粋の箱入りお嬢様らしく、世の男性の摂理をまだ理解していない様でそんな事があるものなのか、と驚いている。
「例えば、のお話ですわ。皆様既婚者とて安心では無いと言う事です。御夫君を愛しておられるならば、その思いに応える様にするべきだと、そう思うのです。」
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