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5 アランド 2
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ゆっくり寝ようと思っていた安眠時間を、またもやアランドが邪魔してくれた…
ウトウトと眠りに落ちそうだったと思う。
「シャーリン………」
夢うつつに優しい優しい、アランドの声が響いてくる。そっくりだと言われていた幼い頃は、声まで似ていてどっちかどっち、とクイズを出しては両親や祖父母を楽しませていたっけ……
「……ん…」
そっと髪に手が触れる。貴方、本当に撫でるのが好きね?何度も何度も……
「…アランド……?」
「起こしちゃった?」
フワリと優しい笑顔が直ぐ近くで覗いている。
「体調は?」
「ん、大丈夫だとは思うの…」
「うん…シャーリン…無理しなくていいよ…?君の気の済むままに、ゆっくりでいいから、ね?」
我が弟ながら本当に優しいと思う。良く、これで浮名が方々で流れなかったと感謝したくなるわ。女ったらしのダメ弟を可愛いシャーリンに押し付けるわけにはいかなかったもの。
「貴方は……どこで…?」
眠るの?と聞きたかったんだけど、疲れて頭が回っていない。
「今日は、僕の寝室で眠るよ。シャーリンはここでゆっくりとお休み…明日も朝が早いんだ。僕の事は気にしなくて良いからゆっくりと休むんだよ?」
私の頬に手を置いて愛おしそうに優しく撫でる。
「優しいのね…アランドは…」
知っていたけど、本当は家族思いの優しい子…
「ふふ…そんなことを言ってくれるのはシャーリンだけだよ?僕はシャーリンさえ居てくれれば良いんだから…だから早く元気におなり……」
また………
チュゥッと音が鳴るくらいのキスを頬に落とす………目が、覚めちゃったじゃないの………
けど、居心地が悪くて寝た振りをする。弟と挨拶にだってキスはしないのに……やっても手の甲にキスを落とす振りくらいのものなのに…
「お休み……」
静かに部屋を出て行ったアランドが去った後ではベッドの上で少しゴロゴロと悶えてしまった……いいでしょう?これ位のはしたなさは…許してくれるでしょう?
誰にとも言えぬ謝罪を心の中で唱えながら、もう、寝付けないとベッドからそっと起き出す。この部屋の続きの小部屋にアンナが控えている。何か大きな物音がしたらきっと直ぐにでも飛んで出てくるでしょうね。
だから、そっと、部屋の中でも足音を立てないようにシャーリンの机に向かった。
何か、何かヒントが無いだろうか?
シャーリン、ごめんね?
口の中で小さく謝罪をし、そっと机の引き出しを開けていく。昔遊んだ宝物探し、みたいに緊張する。鬼に見つかってはいけない、けれど宝を持ち帰らなければ負けてしまう。音を出さないように、鬼の目を掻い潜って目的地を目指してそれぞれ進む。いつも、三人で遊んでいたわね?アランドなんてシャーリンよりも一つ年上なのに負けそうになるとべそをかいて、負けず嫌いな弟だった…
そっと開けた引き出しの中に、シャーリンの日記が入っている。
「日記だわ…」
これには覚えがあった。確か、シャーリンが14歳の誕生日の時にわたしとアランドから送った本革の日記帳……パラパラ捲ると、あげた誕生日からの日付が付いていた。プレゼントしたその日から丁寧な字で皆んなへの謝辞から始まって日々の事をポツポツと書き連ねてくれていたようだ。もう、5年も前になるんじゃ無いだろうか?ずっとシャーリンは持っていて、楽しかった事や、悩んだ事、アランドへの気持ちを自覚して行った時の事などを細かく書いていた。
私に言えない事もここで書いて気持ちを吐き出していたのね?少しでも両親がいない事への寂しさが紛れれば良いと思って接して来たけど、送った日記が支えとなってもくれていたんだと思うと、なんだかとても嬉しい…
読み進めれば、アランドに気持ちが通じた時や、初めてのデート、アランドから言われたうれしかった言葉なんてのがつらつらと書き連ねてあって、段々と読むのが勇気がいるようになって来た……………
プロポーズされた時、結婚の準備………こんなに喜んでくれていたなんて…忘れている私が言えたものでもなかったけど、シャーリン、私も自分の事のように嬉しいわ…なんで、貴方の事をお祝いできなかったのかしら?
読んでいたら自分の心がホコホコしてきてしまって恥ずかしくってきっと顔が赤くなっているんでしょうね。結婚式の所で初めて初夜云々が書かれてあった所は……もう、読めなかったわ…ごめんなさい、シャーリン。プライバシーも何もあったものじゃ無いわね…
こんなに恥ずかしいのだから、もうやめれば良いのに、ペラペラ巡っていくうちに所々日記が切り取られているところがあって……
書き損じ?間違えて書いてしまって破いたとか?けれど前のページには次に続きがある書き方なのにその続きを書かずに、破られた後のページにはちがう日付が書かれてる。後半に行くほど、それも何箇所も………
ん……ノスタール伯爵…?後半に行くと度々書かれているお名前だけど、その名前に心当たりがないのよね…伯爵家、だから何処かで会って挨拶くらいはしていると思うのだけど…?
ウトウトと眠りに落ちそうだったと思う。
「シャーリン………」
夢うつつに優しい優しい、アランドの声が響いてくる。そっくりだと言われていた幼い頃は、声まで似ていてどっちかどっち、とクイズを出しては両親や祖父母を楽しませていたっけ……
「……ん…」
そっと髪に手が触れる。貴方、本当に撫でるのが好きね?何度も何度も……
「…アランド……?」
「起こしちゃった?」
フワリと優しい笑顔が直ぐ近くで覗いている。
「体調は?」
「ん、大丈夫だとは思うの…」
「うん…シャーリン…無理しなくていいよ…?君の気の済むままに、ゆっくりでいいから、ね?」
我が弟ながら本当に優しいと思う。良く、これで浮名が方々で流れなかったと感謝したくなるわ。女ったらしのダメ弟を可愛いシャーリンに押し付けるわけにはいかなかったもの。
「貴方は……どこで…?」
眠るの?と聞きたかったんだけど、疲れて頭が回っていない。
「今日は、僕の寝室で眠るよ。シャーリンはここでゆっくりとお休み…明日も朝が早いんだ。僕の事は気にしなくて良いからゆっくりと休むんだよ?」
私の頬に手を置いて愛おしそうに優しく撫でる。
「優しいのね…アランドは…」
知っていたけど、本当は家族思いの優しい子…
「ふふ…そんなことを言ってくれるのはシャーリンだけだよ?僕はシャーリンさえ居てくれれば良いんだから…だから早く元気におなり……」
また………
チュゥッと音が鳴るくらいのキスを頬に落とす………目が、覚めちゃったじゃないの………
けど、居心地が悪くて寝た振りをする。弟と挨拶にだってキスはしないのに……やっても手の甲にキスを落とす振りくらいのものなのに…
「お休み……」
静かに部屋を出て行ったアランドが去った後ではベッドの上で少しゴロゴロと悶えてしまった……いいでしょう?これ位のはしたなさは…許してくれるでしょう?
誰にとも言えぬ謝罪を心の中で唱えながら、もう、寝付けないとベッドからそっと起き出す。この部屋の続きの小部屋にアンナが控えている。何か大きな物音がしたらきっと直ぐにでも飛んで出てくるでしょうね。
だから、そっと、部屋の中でも足音を立てないようにシャーリンの机に向かった。
何か、何かヒントが無いだろうか?
シャーリン、ごめんね?
口の中で小さく謝罪をし、そっと机の引き出しを開けていく。昔遊んだ宝物探し、みたいに緊張する。鬼に見つかってはいけない、けれど宝を持ち帰らなければ負けてしまう。音を出さないように、鬼の目を掻い潜って目的地を目指してそれぞれ進む。いつも、三人で遊んでいたわね?アランドなんてシャーリンよりも一つ年上なのに負けそうになるとべそをかいて、負けず嫌いな弟だった…
そっと開けた引き出しの中に、シャーリンの日記が入っている。
「日記だわ…」
これには覚えがあった。確か、シャーリンが14歳の誕生日の時にわたしとアランドから送った本革の日記帳……パラパラ捲ると、あげた誕生日からの日付が付いていた。プレゼントしたその日から丁寧な字で皆んなへの謝辞から始まって日々の事をポツポツと書き連ねてくれていたようだ。もう、5年も前になるんじゃ無いだろうか?ずっとシャーリンは持っていて、楽しかった事や、悩んだ事、アランドへの気持ちを自覚して行った時の事などを細かく書いていた。
私に言えない事もここで書いて気持ちを吐き出していたのね?少しでも両親がいない事への寂しさが紛れれば良いと思って接して来たけど、送った日記が支えとなってもくれていたんだと思うと、なんだかとても嬉しい…
読み進めれば、アランドに気持ちが通じた時や、初めてのデート、アランドから言われたうれしかった言葉なんてのがつらつらと書き連ねてあって、段々と読むのが勇気がいるようになって来た……………
プロポーズされた時、結婚の準備………こんなに喜んでくれていたなんて…忘れている私が言えたものでもなかったけど、シャーリン、私も自分の事のように嬉しいわ…なんで、貴方の事をお祝いできなかったのかしら?
読んでいたら自分の心がホコホコしてきてしまって恥ずかしくってきっと顔が赤くなっているんでしょうね。結婚式の所で初めて初夜云々が書かれてあった所は……もう、読めなかったわ…ごめんなさい、シャーリン。プライバシーも何もあったものじゃ無いわね…
こんなに恥ずかしいのだから、もうやめれば良いのに、ペラペラ巡っていくうちに所々日記が切り取られているところがあって……
書き損じ?間違えて書いてしまって破いたとか?けれど前のページには次に続きがある書き方なのにその続きを書かずに、破られた後のページにはちがう日付が書かれてる。後半に行くほど、それも何箇所も………
ん……ノスタール伯爵…?後半に行くと度々書かれているお名前だけど、その名前に心当たりがないのよね…伯爵家、だから何処かで会って挨拶くらいはしていると思うのだけど…?
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