2 / 27
2 私は誰?
しおりを挟む
私、ナターシャ・エンギュート…21歳…女で独身……髪はサラサラの金髪ストレートに明るいブルーサファイヤの瞳。中肉中背の色白で…エンギュート侯爵家の長女で弟アランドと下に義理の妹シャーリンがいる。
そう!いる、居るはずなのに、何故か私が弟アランドの部屋にいて、アランドのベッドで寝ている……なぜ?
あの後アランドが仕事のために登城して行ってからしばらく現実逃避として布団の中で過ごしたけれど、いくら寝ててもこの現実は変わっていなくて…布団の中がアランドの爽やかなコロンの匂いで溢れてて、尚更落ち着かなくて仕方なくベッドから出た。
「あ!お目覚めですか?」
アンナ!!
「アンナ!?アンナなの?」
幼い頃からこのエンギュート家に仕えてくれていた乳母の娘でとりわけ私と仲が良かった…!
「はい?ここにおりますよ?若奥様が具合が悪そうだと若旦那様からお聞きしました。お具合はいかがです?」
あぁ!いつも親身になってくれていたわね?優しいアンナ!貴方の顔を見たらやっとほっとできる様な気がするわ…
「えぇ…大丈夫よ?なぜ、私はアランドの部屋に居たのかしら?」
おかしい事よね?昨日の記憶がないなんて………私、何をしていたんだっけ?
頭がはっきりしてくれば、昨夜からの記憶が…………無い?え、待って?どういう事?
「若奥様!?どうなさいました?」
頭を抱えて、ボフッとベッドに蹲ってしまった私の元にアンナが駆け寄ってくる。
「若奥様!シャーリン様!!どうしましょう!?お医者様を…!」
「…待って!!待って…!大丈夫だから……」
「でも…」
優しいアンナ…心配そうなアンナの顔を見ていたら少し、落ち着いて来た………
「本当に、大丈夫だから、朝の支度をして貰えるかしら?」
そう、ここで騒いじゃ淑女が泣くわ…一旦お茶でも頂いて、気持ちを落ち着けましょう。身体は至ってどこも悪そうではなかったから…
結果、更に落ち着かなくなった…………
どう見ても、鏡台に映る私の姿はシャーリンの物で…柔らかく波打った輝くハニーブロンドの髪や金の瞳は見紛う事無いほどシャーリンだった…着ていたナイトドレスも、クローゼットに収まっているドレスも全てシャーリンの物……………見たことあるもの……
甲斐甲斐しくアンナは私の世話をする。幼い時からの癖は抜けきらないみたいで、部屋の中でも小動物みたいにパタパタと小走りになって…
取り敢えず、鏡台に座ったものの鏡の中の自分なんて見る勇気はもうなくて、目を瞑ってジッとしているか、動き回っているアンナを目で追った。
なぜ、私がシャーリンなのか?
この部屋は確かに実弟アランドの物…成人してからというもの、ちょくちょくお邪魔なんてしなかったけれど、部屋の中の雰囲気はドアからでも見れるし、なんと言ってもこの部屋の中にもアランドの匂いがフワッと香ってる。あの子、爽やかな柑橘系が好きなのよね……そんな好みの事は問題じゃなくて、いいチョイスだと思うし…だから、そうではなくて!ここは、紛れも無いアランドの部屋で……
アンナも言ってたじゃ無い?
若奥様って…………………
シャーリンと私は2歳の差、アランドとは年子で1歳離れてる。お互いに結婚していても全くおかしくは無い年齢で、若奥様って事は、そうなのよね?全く私には記憶がないけれども私達、じゃなかった、シャーリンとアランドはなる様にして夫婦になったのよね?そういう事なのね?
ここまでが長い夢でなければ、頭の中で分かった事はシャーリンと弟が結婚して夫婦となって、なぜか姉の私ナターシャがシャーリンとなって今、ここに居る、と。
「ちょっと、納得なんて出来て!?」
思わず、鏡のシャーリンに向かって声を出してしまっていた…
「も、申し訳ありません。若奥様!こちらのドレスではお気に召しませんでしたか?」
自分、シャーリンの背後では、若草色のドレスを手に抱えて立っていたアンナがびっくりした様な顔で見つめて来ていた。
そのドレスはシャーリンのお気に入りで…無駄に締め上げるところがないからとリラックスしたい時によく着ていたっけ…アンナも良く覚えてくれていたみたいだ。調子が悪そうな私の為にと用意してくれていただろうに…
「ごめんなさい、アンナ。夢見が悪かったの、とっても……だからどうしても納得なんていかなくて、そのドレスの事ではないのよ?」
そう謝ると、不安そうだったアンナの顔がパァッと明るくなる。いつもニコニコと明るいアンナ…貴方はこうでなくっちゃね…
何が、どうしてこうなっているのか全く理解なんて出来ないけど、でもなんとか今日の日をやり過ごして行かなくてはいけない……
幸いに、シャーリンの事は知りすぎているほど知り尽くしている。物心つく前から我が家の養女としてこの屋敷で本当の姉妹以上に仲良くして来た。だから、この謎が解けるまで、シャーリンとして振るう事は難しく無いはず…深呼吸一つして、私は覚悟を決めた……
そう!いる、居るはずなのに、何故か私が弟アランドの部屋にいて、アランドのベッドで寝ている……なぜ?
あの後アランドが仕事のために登城して行ってからしばらく現実逃避として布団の中で過ごしたけれど、いくら寝ててもこの現実は変わっていなくて…布団の中がアランドの爽やかなコロンの匂いで溢れてて、尚更落ち着かなくて仕方なくベッドから出た。
「あ!お目覚めですか?」
アンナ!!
「アンナ!?アンナなの?」
幼い頃からこのエンギュート家に仕えてくれていた乳母の娘でとりわけ私と仲が良かった…!
「はい?ここにおりますよ?若奥様が具合が悪そうだと若旦那様からお聞きしました。お具合はいかがです?」
あぁ!いつも親身になってくれていたわね?優しいアンナ!貴方の顔を見たらやっとほっとできる様な気がするわ…
「えぇ…大丈夫よ?なぜ、私はアランドの部屋に居たのかしら?」
おかしい事よね?昨日の記憶がないなんて………私、何をしていたんだっけ?
頭がはっきりしてくれば、昨夜からの記憶が…………無い?え、待って?どういう事?
「若奥様!?どうなさいました?」
頭を抱えて、ボフッとベッドに蹲ってしまった私の元にアンナが駆け寄ってくる。
「若奥様!シャーリン様!!どうしましょう!?お医者様を…!」
「…待って!!待って…!大丈夫だから……」
「でも…」
優しいアンナ…心配そうなアンナの顔を見ていたら少し、落ち着いて来た………
「本当に、大丈夫だから、朝の支度をして貰えるかしら?」
そう、ここで騒いじゃ淑女が泣くわ…一旦お茶でも頂いて、気持ちを落ち着けましょう。身体は至ってどこも悪そうではなかったから…
結果、更に落ち着かなくなった…………
どう見ても、鏡台に映る私の姿はシャーリンの物で…柔らかく波打った輝くハニーブロンドの髪や金の瞳は見紛う事無いほどシャーリンだった…着ていたナイトドレスも、クローゼットに収まっているドレスも全てシャーリンの物……………見たことあるもの……
甲斐甲斐しくアンナは私の世話をする。幼い時からの癖は抜けきらないみたいで、部屋の中でも小動物みたいにパタパタと小走りになって…
取り敢えず、鏡台に座ったものの鏡の中の自分なんて見る勇気はもうなくて、目を瞑ってジッとしているか、動き回っているアンナを目で追った。
なぜ、私がシャーリンなのか?
この部屋は確かに実弟アランドの物…成人してからというもの、ちょくちょくお邪魔なんてしなかったけれど、部屋の中の雰囲気はドアからでも見れるし、なんと言ってもこの部屋の中にもアランドの匂いがフワッと香ってる。あの子、爽やかな柑橘系が好きなのよね……そんな好みの事は問題じゃなくて、いいチョイスだと思うし…だから、そうではなくて!ここは、紛れも無いアランドの部屋で……
アンナも言ってたじゃ無い?
若奥様って…………………
シャーリンと私は2歳の差、アランドとは年子で1歳離れてる。お互いに結婚していても全くおかしくは無い年齢で、若奥様って事は、そうなのよね?全く私には記憶がないけれども私達、じゃなかった、シャーリンとアランドはなる様にして夫婦になったのよね?そういう事なのね?
ここまでが長い夢でなければ、頭の中で分かった事はシャーリンと弟が結婚して夫婦となって、なぜか姉の私ナターシャがシャーリンとなって今、ここに居る、と。
「ちょっと、納得なんて出来て!?」
思わず、鏡のシャーリンに向かって声を出してしまっていた…
「も、申し訳ありません。若奥様!こちらのドレスではお気に召しませんでしたか?」
自分、シャーリンの背後では、若草色のドレスを手に抱えて立っていたアンナがびっくりした様な顔で見つめて来ていた。
そのドレスはシャーリンのお気に入りで…無駄に締め上げるところがないからとリラックスしたい時によく着ていたっけ…アンナも良く覚えてくれていたみたいだ。調子が悪そうな私の為にと用意してくれていただろうに…
「ごめんなさい、アンナ。夢見が悪かったの、とっても……だからどうしても納得なんていかなくて、そのドレスの事ではないのよ?」
そう謝ると、不安そうだったアンナの顔がパァッと明るくなる。いつもニコニコと明るいアンナ…貴方はこうでなくっちゃね…
何が、どうしてこうなっているのか全く理解なんて出来ないけど、でもなんとか今日の日をやり過ごして行かなくてはいけない……
幸いに、シャーリンの事は知りすぎているほど知り尽くしている。物心つく前から我が家の養女としてこの屋敷で本当の姉妹以上に仲良くして来た。だから、この謎が解けるまで、シャーリンとして振るう事は難しく無いはず…深呼吸一つして、私は覚悟を決めた……
0
お気に入りに追加
222
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる