[完結]気がつけば侯爵令嬢の私は実弟の嫁でした。あり得ないので本当の自分を探しに家を出ます

小葉石

文字の大きさ
上 下
1 / 27

1 弟の部屋でしょ?

しおりを挟む
 ふ…………っと、目が覚めた……
 カーテンの隙間から入ってくる日の光がとても眩しくて……でも、眩し過ぎると目が開かないこともあるのね………?
 
「……船が……行ってしまう……!」

 思わず口から出てきた言葉で、自分が寝言を言っていたと気がついて、完全に目が覚めた。目は覚めたのに、目が腫れぼったくて?直ぐに目が開かなかった原因がこれだと気がつく。

 もしかして、私、夢で泣いてたの?
 なんだか、とても長い夢を見ていた様な気がするわね…それも、嫌な夢だった様な………?

「シャーリン…?…起きたのかい?」

 自分一人だと思っていたベッドの横から、誰かが寝返る気配がして…?上等なベットマットが程よい硬さを保ちながら相手が確かに隣にいる事をその揺れで教えてくれた。
 
 びっくりした…!一人だと思っていた所に誰かがいるのはもちろんの事、そのがとても良く知っている人の声だったから尚更に………

 ゆっくりと振り返る…そう言えばさっきから視界に入ってきているのは部屋じゃない風景……いえ、作りは大抵同じ…
だって、同じ屋敷に住んでいるんだもの部屋の大きさは違えど大体同じ様な作りになっている…けど、決定的にその部屋の持ち主によって部屋の雰囲気は変わるわけで……

 ここは、私の部屋じゃない………
 
 濃紺を基調としたどっしりとした落ち着いた深い色…所々に暗めのオレンジがポイントに入っている。ここは………この部屋は…

 振り返った先にはやっぱり…………
アランド………フワリと優しく笑ってるの顔がそこにあった……


「……!!?」

 一瞬悲鳴をあげそうになったけど、ここは我慢致しました…ええ、まだ私はの淑女ですからね?朝から盛大な悲鳴なんてあげていいものではなかったの。

「…どうしたんだい?シャーリン…?もしかして、泣いてたの?」
 
 巷では本物の王子様、と言われている様なかなりの美貌の持ち主だと思われる弟がブルーサファイヤのような瞳を心配気に細めてジッと私を覗き込んできた…!真っ直ぐでサラサラな私とそっくり同じの髪質の金の髪が、朝日を受けてこれまた王子様の様にキラキラと光を放ってて…二人ともそっくりと言われる顔だったけど、アランドが嫌に眩しくて目を逸らせてしまいたくなるのはなぜなのかしら?

「…シャーリン?」

 心配そうに更に顔を近づけてくるアランドの口から聞き慣れた名前が飛び出したわね?

「……昨夜はごめんよ?君があんまりに聞きたがったから、つい僕は………」

 何を懺悔したいのかしら?もの凄く申し訳なさそうな顔を貼りつけて、アランドが今度は私の頬を撫でてくる。

 え?ちょっと待って欲しいのだけど?

 姉弟仲は、良かったと思うのです、が、こんなに、それもベッドの中で接近する程では無かったと記憶しているのですがね?
 
 アランドの方は何にも躊躇なく、手を伸ばして髪に触りそのまま頬に何度も何度も労わる様に手を下ろしてくる。

 待って頂戴?アランド、貴方…気安くそんなに女性の髪を触るものではないのよ?夫婦だったらいざ知らず、婚約者であってもその慎みは守った方がいいと思うの…!言いたい事は沢山あるのに……なんでここに私が寝ているのとか、本当のシャーリンはどうしたのだとか、なんでアランドは姉の髪を親そうにいつまでも触れているのかとか………

 私の頭がグルグルして働いていない事をいい事に、あろう事かアランドは私に口付けて来た……

「………!?……んっ」

 唇をあてただけじゃなくて、ペロリとアランドの舌先は、私の唇を舐めて………思わずビックリして声を出しちゃったけど、それに満足したのかニコリ、とこれまたいい笑顔でアランドは微笑むと、驚いて固まっている私に布団をかけて自分はゆっくりとベッドから出て行った。

「僕は今日は仕事だからね?もう支度しなきゃいけないけど、シャーリンはゆっくりしてて?昨日は……少し、無理させちゃったね?反省してます……」

 テレテレ、照れ笑い?弟のそんな顔、見たことありませんっていう位の照れ顔で、アランドは着替えるために浴室へと向かって行ったと思う…

 そう、思う……最早私の思考はここで途切れてて…アランドに掛けられた布団を頭まで被って、現実から逃避する為にもう一度意識を手放した……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

この度、猛獣公爵の嫁になりまして~厄介払いされた令嬢は旦那様に溺愛されながら、もふもふ達と楽しくモノづくりライフを送っています~

柚木崎 史乃
ファンタジー
名門伯爵家の次女であるコーデリアは、魔力に恵まれなかったせいで双子の姉であるビクトリアと比較されて育った。 家族から疎まれ虐げられる日々に、コーデリアの心は疲弊し限界を迎えていた。 そんな時、どういうわけか縁談を持ちかけてきた貴族がいた。彼の名はジェイド。社交界では、「猛獣公爵」と呼ばれ恐れられている存在だ。 というのも、ある日を境に文字通り猛獣の姿へと変わってしまったらしいのだ。 けれど、いざ顔を合わせてみると全く怖くないどころか寧ろ優しく紳士で、その姿も動物が好きなコーデリアからすれば思わず触りたくなるほど毛並みの良い愛らしい白熊であった。 そんな彼は月に数回、人の姿に戻る。しかも、本来の姿は類まれな美青年なものだから、コーデリアはその度にたじたじになってしまう。 ジェイド曰くここ数年、公爵領では鉱山から流れてくる瘴気が原因で獣の姿になってしまう奇病が流行っているらしい。 それを知ったコーデリアは、瘴気の影響で不便な生活を強いられている領民たちのために鉱石を使って次々と便利な魔導具を発明していく。 そして、ジェイドからその才能を評価され知らず知らずのうちに溺愛されていくのであった。 一方、コーデリアを厄介払いした家族は悪事が白日のもとに晒された挙句、王家からも見放され窮地に追い込まれていくが……。 これは、虐げられていた才女が嫁ぎ先でその才能を発揮し、周囲の人々に無自覚に愛され幸せになるまでを描いた物語。 他サイトでも掲載中。

悪役令嬢エリザベート物語

kirara
ファンタジー
私の名前はエリザベート・ノイズ 公爵令嬢である。 前世の名前は横川禮子。大学を卒業して入った企業でOLをしていたが、ある日の帰宅時に赤信号を無視してスクランブル交差点に飛び込んできた大型トラックとぶつかりそうになって。それからどうなったのだろう。気が付いた時には私は別の世界に転生していた。 ここは乙女ゲームの世界だ。そして私は悪役令嬢に生まれかわった。そのことを5歳の誕生パーティーの夜に知るのだった。 父はアフレイド・ノイズ公爵。 ノイズ公爵家の家長であり王国の重鎮。 魔法騎士団の総団長でもある。 母はマーガレット。 隣国アミルダ王国の第2王女。隣国の聖女の娘でもある。 兄の名前はリアム。  前世の記憶にある「乙女ゲーム」の中のエリザベート・ノイズは、王都学園の卒業パーティで、ウィリアム王太子殿下に真実の愛を見つけたと婚約を破棄され、身に覚えのない罪をきせられて国外に追放される。 そして、国境の手前で何者かに事故にみせかけて殺害されてしまうのだ。 王太子と婚約なんてするものか。 国外追放になどなるものか。 乙女ゲームの中では一人ぼっちだったエリザベート。 私は人生をあきらめない。 エリザベート・ノイズの二回目の人生が始まった。 ⭐️第16回 ファンタジー小説大賞参加中です。応援してくれると嬉しいです

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています

水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。 森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。 公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。 ◇画像はGirly Drop様からお借りしました ◆エール送ってくれた方ありがとうございます!

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています

窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。 シナリオ通りなら、死ぬ運命。 だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい! 騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します! というわけで、私、悪役やりません! 来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。 あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……! 気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。 悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

処理中です...