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公主の求めた者
21 地魔力 6
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(そうですわ!!殿下!そこで肯きなさいませ。私は役に立たないのですから、貴方様のお子を得る良い機会ですもの!)
むっすりと押し黙る公主トライトスの代わりに、シャイリーは空中から1人肯き同意する。
(さ、貴方も何か仰いませ!殿下はこう見えてきっとお優しくあられますわ。貴方様のお気持ちがわかればきっと無碍にはなさいますまい…)
公妃シャイリーの目の前には、豊かで艶のある長い黒髪を惜しげもなく背に靡かせ、シャイリーよりも豊かだろうと思われる肉体美をやはり薄い生地でできた上質の真紅のドレスに隠し持つ様な女性としての魅力溢れる御令嬢だ。
(凛とした美しい方ですわね…殿下の良き片腕になってくれそうですわ…ね?貴方…私はもう、殿下のお側にいる資格さえありませんの。お願いですから、トライトス様の、お心をお慰めして下さいませ……)
何故だか、シャイリーの心がズクリと痛む。普段だったら決してしない様な主人の名前を口にしたからだろうか……
「公主殿下…改めましてご挨拶いたします。父の命に従い誠心誠意、妃殿下にお仕えする所存にございます。どうぞお召しくださいませ。」
押し付けがましくもないふわりとした声色に、綺麗な所作でトライトスの前で挨拶する令嬢は見事というより他なかった。
(そうですわ……それで、良いのです……)
その令嬢の完璧な所作にシャイリーは納得した様に一つ肯いて、その場からフッと消えた。
(大丈夫だと、思ったのですけれど…)
シャイリーが望んで移動できる僅かな場所の一つとなったのだろうバルビス公国のどこぞの雪原。トライトスの元を離れたいと思ったらここにくる事ができた。
しかし、また一段と活発に活動している小狐達を見てもシャイリーの心は沸き立ってはこない。しばらくここで過ごしてみて自分はきっとどこに行っても大丈夫だろうと思っていたのだ。望まずに強制的に環境が変えられようとも、目に映る物にはまだ心が動かされるしそれが支えにもなっていたから。
けれど、夫のその後を見たくなくて逃げる様にどこか遠くにと願って今ここにいる。
(あの方のお子ならば、きっとお綺麗な顔立ちでしょうね…)
遊び疲れて雪の上に寝転び出した子狐をそっと撫でながら、シャイリーはまだ見ぬ未来へ心を馳せる。
いつまで、ここに止まっていたら良いのだろう…何も変わらず、何もできず、ただ側で見つめることしかできなくて…陽炎の様に存在している意味は、あるのだろうか。
むっすりと押し黙る公主トライトスの代わりに、シャイリーは空中から1人肯き同意する。
(さ、貴方も何か仰いませ!殿下はこう見えてきっとお優しくあられますわ。貴方様のお気持ちがわかればきっと無碍にはなさいますまい…)
公妃シャイリーの目の前には、豊かで艶のある長い黒髪を惜しげもなく背に靡かせ、シャイリーよりも豊かだろうと思われる肉体美をやはり薄い生地でできた上質の真紅のドレスに隠し持つ様な女性としての魅力溢れる御令嬢だ。
(凛とした美しい方ですわね…殿下の良き片腕になってくれそうですわ…ね?貴方…私はもう、殿下のお側にいる資格さえありませんの。お願いですから、トライトス様の、お心をお慰めして下さいませ……)
何故だか、シャイリーの心がズクリと痛む。普段だったら決してしない様な主人の名前を口にしたからだろうか……
「公主殿下…改めましてご挨拶いたします。父の命に従い誠心誠意、妃殿下にお仕えする所存にございます。どうぞお召しくださいませ。」
押し付けがましくもないふわりとした声色に、綺麗な所作でトライトスの前で挨拶する令嬢は見事というより他なかった。
(そうですわ……それで、良いのです……)
その令嬢の完璧な所作にシャイリーは納得した様に一つ肯いて、その場からフッと消えた。
(大丈夫だと、思ったのですけれど…)
シャイリーが望んで移動できる僅かな場所の一つとなったのだろうバルビス公国のどこぞの雪原。トライトスの元を離れたいと思ったらここにくる事ができた。
しかし、また一段と活発に活動している小狐達を見てもシャイリーの心は沸き立ってはこない。しばらくここで過ごしてみて自分はきっとどこに行っても大丈夫だろうと思っていたのだ。望まずに強制的に環境が変えられようとも、目に映る物にはまだ心が動かされるしそれが支えにもなっていたから。
けれど、夫のその後を見たくなくて逃げる様にどこか遠くにと願って今ここにいる。
(あの方のお子ならば、きっとお綺麗な顔立ちでしょうね…)
遊び疲れて雪の上に寝転び出した子狐をそっと撫でながら、シャイリーはまだ見ぬ未来へ心を馳せる。
いつまで、ここに止まっていたら良いのだろう…何も変わらず、何もできず、ただ側で見つめることしかできなくて…陽炎の様に存在している意味は、あるのだろうか。
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