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バルビス公国への旅立ち
4 供物姫と呼ばれた姫君 4
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供物姫とは、巷で呼ばれる様になったアールスト王国とバルビス公国に嫁いでいく姫君達の二つ名だ……両国の和平の為に嫁いでいくのだが、いずれも嫁ぎ先で長寿を得た者は未だかつて無いと言われている。かつては国内での暗殺を懸念されてもきたのだが、どの様な対処をもってしても嫁いできた姫君が徐々に弱り儚くなっていく事を今も止められないでいる。現時点での最も有力な問題としては、大きな環境の変化では無いかと言われ、現国王はルシュルーの為に常夏のアールスト王国でも室内を低温に保てる様な部屋を造らせもしたのだ。が、結果はルシュルーの体調不良を止められず今ルシュルーは部屋から一歩も出られない状況になっていた。
ルシュルーの部屋はナルガ山脈から毎日の様に掘り出されてくる氷塊を使ってシャイリーからすると寒気が走るくらいに室温を低く保っていた。それであるのに時折お見舞いがてらにルシュルーの所へ顔を出すと、ルシュルーは起きていられる事もあれば寝ついている事もあると言う具合だ。永久凍土の様なバルビス公国に生まれ育ってきたルシュルーにとってはこの部屋でもまだ暑く、体調を崩すほどであったのだ。今のアールスト国には残念ながらこれ以上の技術は無く、毎日必死に氷塊を運び入れて室温を下げるしか方法はないらしい。
「義姉上はまだお体がお辛そうでしたわ。」
「そうなのだ………あちら側にもそれは伝わっていてな……」
両国の和平、これこそが両国の安寧につながる。一方が裏切ればもう一方も共倒れする。そんな関係が両国間にできているのだから嫁いだ姫の安否は重要事項の一つだった。嫁いだ姫の扱い如何が今後政治的材料に取り上げられかねないのだから、両国共に嫁いできた姫君の対応には非常に気を使うところなのだ。
「済まないな…こんなに早く我が国から姫を出すつもりではなかったのだが…」
供物姫は王家の姫君、と昔から決まっている。兄である現国王にも既に正妃と3人の側妃がおり、王子、王女と子供もいるのだからいずれはあちらの次期公主の元へと考えてはいたが、第3側妃の体調がこんなにも早く悪くなるとは考えもつかなかった様だ。シャイリーの上の姉達は既に婚姻済みか婚約済みで嫁げる者はシャイリーのみであった。
「構いませんわ。陛下。」
「…シャイリー?何と言った?」
「構いませんと言ったのですわ。お兄様。」
シャイリーは金の瞳を細めてニッコリと兄王に微笑む。行く末が行く末だけに、嫁ぎたくないと泣かれる事もしばしばある結婚だ。自由奔放に育ってきたシャイリーなのだからこそ我儘を言うだろう、それでも行ってもらわねば困ると確固たる覚悟を決めてこれを伝えたのに、返ってきた返事はあっさりとしたものだった。
「義姉上もこちらへときて下さったんですもの。お相手はバルビス公主様ですわね?では、喜んでお受けいたします、とお伝えくださいませ。」
笑顔を絶やさぬまま、見事な礼を取ってシャイリーは兄王の前を辞したのだった。
ルシュルーの部屋はナルガ山脈から毎日の様に掘り出されてくる氷塊を使ってシャイリーからすると寒気が走るくらいに室温を低く保っていた。それであるのに時折お見舞いがてらにルシュルーの所へ顔を出すと、ルシュルーは起きていられる事もあれば寝ついている事もあると言う具合だ。永久凍土の様なバルビス公国に生まれ育ってきたルシュルーにとってはこの部屋でもまだ暑く、体調を崩すほどであったのだ。今のアールスト国には残念ながらこれ以上の技術は無く、毎日必死に氷塊を運び入れて室温を下げるしか方法はないらしい。
「義姉上はまだお体がお辛そうでしたわ。」
「そうなのだ………あちら側にもそれは伝わっていてな……」
両国の和平、これこそが両国の安寧につながる。一方が裏切ればもう一方も共倒れする。そんな関係が両国間にできているのだから嫁いだ姫の安否は重要事項の一つだった。嫁いだ姫の扱い如何が今後政治的材料に取り上げられかねないのだから、両国共に嫁いできた姫君の対応には非常に気を使うところなのだ。
「済まないな…こんなに早く我が国から姫を出すつもりではなかったのだが…」
供物姫は王家の姫君、と昔から決まっている。兄である現国王にも既に正妃と3人の側妃がおり、王子、王女と子供もいるのだからいずれはあちらの次期公主の元へと考えてはいたが、第3側妃の体調がこんなにも早く悪くなるとは考えもつかなかった様だ。シャイリーの上の姉達は既に婚姻済みか婚約済みで嫁げる者はシャイリーのみであった。
「構いませんわ。陛下。」
「…シャイリー?何と言った?」
「構いませんと言ったのですわ。お兄様。」
シャイリーは金の瞳を細めてニッコリと兄王に微笑む。行く末が行く末だけに、嫁ぎたくないと泣かれる事もしばしばある結婚だ。自由奔放に育ってきたシャイリーなのだからこそ我儘を言うだろう、それでも行ってもらわねば困ると確固たる覚悟を決めてこれを伝えたのに、返ってきた返事はあっさりとしたものだった。
「義姉上もこちらへときて下さったんですもの。お相手はバルビス公主様ですわね?では、喜んでお受けいたします、とお伝えくださいませ。」
笑顔を絶やさぬまま、見事な礼を取ってシャイリーは兄王の前を辞したのだった。
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