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17 義母という事で? 2
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衝撃的すぎる事実を国王アルサートから聞かされてシェラインは寝ずに夜を過ごすことになった。
王妃となる、この事実はルイストールの婚約者になった時から決まっていたことだった為、今更不安を覚えるものではない。が、その時が今で現国王の妻となるとはついぞ思わなかった事であった。
「……眠れませんでしたわ……」
昨日裁判でシェラインが見事に聞き逃していた重要事項を告げたアルサートは静かに今回の顛末を話したのだ。
シェラインの父であるコールテン侯爵を納得させ、又シェライン自身の尊厳を貶めない方法。王太子妃以上の位を持ってでもしないと周囲の貴族達が納得しないであろうという事。シェライン自身に非は無いがシェラインがもし王妃の座を辞したとしたら、王家の面目を潰したとして今後王都においては最早次なる婚姻は見込めなくなり、いずれは他国か王都から遠く離れた辺境へと嫁ぐしかなくなるという事。そしてこれにはコールテン侯爵が納得しないだろう為に一番良い解決策がシェラインが現国王の王妃になる事だという事。
そして、国王アルサートもこの案をやぶさかではないと考えている事だ。
……信じられません…お義父様になる方だったのに?……
義父として慕って来たアルサートが自分の夫となる事にまだシェラインの心は動揺している。だからこそ一晩中考えてしまって眠れなかったわけだが…
シェラインは貴族の令嬢として生まれて来ているのだからこの様な事態も受け入れるべきと頭は既に答えを出しているのだが、まさか自分が国王に望まれていたとは思わなかった。
「ルイスと其方が成婚し世継ぎでも儲ければ、私はお前達に王位を譲位してまた辺境の騎士団にでも戻るつもりであったのだ。」
リラックスしているであろうアルサートはポツポツとその胸の内を語った。
「王位は元々我が兄上の物。私は穴埋めにすぎない王だと思っていた。いくら周囲がルイスを頼りなしと評価しても、隣にはしっかり者のシェラインがいる。だから二人支え合えば私の役目は御免だと思っていたのだ。」
「…陛下…だから今までご成婚なさいませんでしたの?」
ルイストールからはルイストールが成人し、成婚するまでアルサートは結婚しないつもりなのだと聞いていたことだ。
……それに、また危険な国境を守ろうとしているから?……
「…元国王が国の境を固めるのだ。ルイスが少し頼りなくても、其方と共になら上手く回せると思っていたのだがな…」
苦笑と共に、ルイスも余計なことをしてくれたものだ、とアルサートはポツリと呟く。
「其方はルイスのものとなる。だから、それで良いとも思っていた。」
「…陛下?」
「そういう事だ。まぁ、ルイスめが其方を離してくれたからこそ、私にもチャンスがあったわけだが。」
「陛下?」
「其方の父上からも既に許可は取ってある。周囲の重鎮達も至って乗り気でいるのだが。後は其方の気持ち次第、と言うところか?」
「私の……?」
……王命であれば、誰も否とは言えないでしょうに?……
「そうだ。ルイスの婚約者として幼い頃から其方を縛り付けたのは王家だからな。そして今回だろう?シェライン。其方には全くの非が無いのだから、今後を大きく左右する決定くらいには其方の意見も取り入れたい。」
王妃となって国の頂点に立つか、外国や辺境に追いやられるか……
……辺境ならばともかく外国へ嫁いだりしたら、本当に殿下とは一生会えなくなりそうですわね。それより……
「陛下。なら、なぜそれを先に伝えてくださいませんでしたの…?裁判での判決はもう決定事項なのでは?」
シェラインの意見を聞こうと言うのならば貴族牢に面会に来た時に伝えてくれても良かったはず。そうすればシェラインにも考える時間を取れたのに。
「その通りなんだがな。少なくとも裁判までは外部にこれを漏らす事は避けたかったのだ。先にも言った通り、コールテン侯爵の面子もある。裁判所で其方が反対すれば侯爵の立場がないだろう?だから決定後、其方がどうしても従えぬと言うのであれば、策を案じようかと考えていた。」
「………考えるまでもありませんわ。陛下。」
余りの事に一晩中動揺してしまったけれど、シェラインとて貴族の娘。家長や国王に従う心算ならば既に日頃からできている。
……それに…まだ、殿下のお側にいる事ができるのなら……
「シェライン?」
「そのお申し出、謹んでお受けいたします。」
少し、声が震えたかもしれない。けれどシェラインは、ルイストールに良く似たアルサートのエメラルドの瞳をしっかりと見返してはっきりと答えた。
「……そうか、シェライン…これで、其方は我が妻になる。ルイスは離宮にて幽閉も同然だが…其方の義息だ。時折足を運んでやると喜ぶだろう。」
「殿下が義息?」
「当たり前だろう?ルイスは私の息子だ。王位継承権は無いが王族籍を抜いているのでは無い。私と結婚するのなら其方がルイスの義母となる。」
王妃となる、この事実はルイストールの婚約者になった時から決まっていたことだった為、今更不安を覚えるものではない。が、その時が今で現国王の妻となるとはついぞ思わなかった事であった。
「……眠れませんでしたわ……」
昨日裁判でシェラインが見事に聞き逃していた重要事項を告げたアルサートは静かに今回の顛末を話したのだ。
シェラインの父であるコールテン侯爵を納得させ、又シェライン自身の尊厳を貶めない方法。王太子妃以上の位を持ってでもしないと周囲の貴族達が納得しないであろうという事。シェライン自身に非は無いがシェラインがもし王妃の座を辞したとしたら、王家の面目を潰したとして今後王都においては最早次なる婚姻は見込めなくなり、いずれは他国か王都から遠く離れた辺境へと嫁ぐしかなくなるという事。そしてこれにはコールテン侯爵が納得しないだろう為に一番良い解決策がシェラインが現国王の王妃になる事だという事。
そして、国王アルサートもこの案をやぶさかではないと考えている事だ。
……信じられません…お義父様になる方だったのに?……
義父として慕って来たアルサートが自分の夫となる事にまだシェラインの心は動揺している。だからこそ一晩中考えてしまって眠れなかったわけだが…
シェラインは貴族の令嬢として生まれて来ているのだからこの様な事態も受け入れるべきと頭は既に答えを出しているのだが、まさか自分が国王に望まれていたとは思わなかった。
「ルイスと其方が成婚し世継ぎでも儲ければ、私はお前達に王位を譲位してまた辺境の騎士団にでも戻るつもりであったのだ。」
リラックスしているであろうアルサートはポツポツとその胸の内を語った。
「王位は元々我が兄上の物。私は穴埋めにすぎない王だと思っていた。いくら周囲がルイスを頼りなしと評価しても、隣にはしっかり者のシェラインがいる。だから二人支え合えば私の役目は御免だと思っていたのだ。」
「…陛下…だから今までご成婚なさいませんでしたの?」
ルイストールからはルイストールが成人し、成婚するまでアルサートは結婚しないつもりなのだと聞いていたことだ。
……それに、また危険な国境を守ろうとしているから?……
「…元国王が国の境を固めるのだ。ルイスが少し頼りなくても、其方と共になら上手く回せると思っていたのだがな…」
苦笑と共に、ルイスも余計なことをしてくれたものだ、とアルサートはポツリと呟く。
「其方はルイスのものとなる。だから、それで良いとも思っていた。」
「…陛下?」
「そういう事だ。まぁ、ルイスめが其方を離してくれたからこそ、私にもチャンスがあったわけだが。」
「陛下?」
「其方の父上からも既に許可は取ってある。周囲の重鎮達も至って乗り気でいるのだが。後は其方の気持ち次第、と言うところか?」
「私の……?」
……王命であれば、誰も否とは言えないでしょうに?……
「そうだ。ルイスの婚約者として幼い頃から其方を縛り付けたのは王家だからな。そして今回だろう?シェライン。其方には全くの非が無いのだから、今後を大きく左右する決定くらいには其方の意見も取り入れたい。」
王妃となって国の頂点に立つか、外国や辺境に追いやられるか……
……辺境ならばともかく外国へ嫁いだりしたら、本当に殿下とは一生会えなくなりそうですわね。それより……
「陛下。なら、なぜそれを先に伝えてくださいませんでしたの…?裁判での判決はもう決定事項なのでは?」
シェラインの意見を聞こうと言うのならば貴族牢に面会に来た時に伝えてくれても良かったはず。そうすればシェラインにも考える時間を取れたのに。
「その通りなんだがな。少なくとも裁判までは外部にこれを漏らす事は避けたかったのだ。先にも言った通り、コールテン侯爵の面子もある。裁判所で其方が反対すれば侯爵の立場がないだろう?だから決定後、其方がどうしても従えぬと言うのであれば、策を案じようかと考えていた。」
「………考えるまでもありませんわ。陛下。」
余りの事に一晩中動揺してしまったけれど、シェラインとて貴族の娘。家長や国王に従う心算ならば既に日頃からできている。
……それに…まだ、殿下のお側にいる事ができるのなら……
「シェライン?」
「そのお申し出、謹んでお受けいたします。」
少し、声が震えたかもしれない。けれどシェラインは、ルイストールに良く似たアルサートのエメラルドの瞳をしっかりと見返してはっきりと答えた。
「……そうか、シェライン…これで、其方は我が妻になる。ルイスは離宮にて幽閉も同然だが…其方の義息だ。時折足を運んでやると喜ぶだろう。」
「殿下が義息?」
「当たり前だろう?ルイスは私の息子だ。王位継承権は無いが王族籍を抜いているのでは無い。私と結婚するのなら其方がルイスの義母となる。」
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