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3 牢の中の令嬢 2
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「ああ!駄目だわ!危ない所でした…」
自分の至らなさを改めて実感するシェライン侯爵令嬢は大きなため息と共にベッドにボスンッと寝転ぶ。
「顔が…ついついにやけてしまいそうで…」
兄マスクルからの情報では、王太子ルイストールは普段と別段変わった所がないという事。そして、コールテン侯爵である父と、国王陛下はひどくお怒りと。上々の結果が得られたようである。王太子妃となる侯爵家を蔑ろにされて、父コールテン侯爵は黙ってはいないだろう。いくら前国王との親密な間柄だったとしてもそれは、前王の時。王家からの謝罪だけでは今回の事は受け入れられようはずも無い事だから。良くても自分の妃候補の娘を牢に繋ごうとする王太子との婚約は無くなるだろう。悪くすれば高位貴族を蔑ろにし、侯爵家を敵に回した事で王太子は廃嫡となる位には事態は重いものだ。
「うん。全体的にいい傾向ですわ。」
一歩一歩、夢に向かって進んでいる。
……大丈夫…もう直ぐ貴方様の夢が叶いましてよ?……
うふふふ…マスクルも退室した室内に一人シェラインの楽しそうな笑い声だけが響いて行く。
今一つ残念と言うならば、食事の際に王太子と共にいられなかった事だろうか。嫌いな物はなかったか、残さずに食べられただろうかと、まるで母親の様な心配をしてしまうのは、今までずっと側で見続けていたシェラインの習い性のようなもの。
「残念ですわ…王城内にいるのにもかかわらず、お顔も見に行けないなんて…!」
牢に勾留中は外出は不可能。兄マスクルの訪室だって禁止のはずが国王の計らいとゴリ押しで、調書を取ると言う名目の元かなったようなものだ。
「こんなに長く離れていたことあったかしら?」
シェラインが物心ついた時には、もう当たり前のように毎日王城に日参していたものだ。勿論、シェラインや王太子ルイストール自身の勉強や熟さなければならない所用時は省いてであるが、自由時間ができればいそいそと城へ通ってはあれこれとルイストールの身の回りの世話をしていた。だからこんなに時間が有るのに、あのパールピンクの柔らかな髪の毛と非常に整った可愛らしい顔が隣にいないと落ち着かなくなってしまう。
「今頃、何をされていて?」
ルイストールの部屋には秘密がある。その為普段からルイストールは侍女達が多くいる事を嫌うのだが、物心つく前からの仲であるシェラインはその事情を把握している。だから自分の身体が健康で自由が効く時には毎日のように朝から王城に参じてはルイストールの側にいた。それこそまるで母親や乳母の代わりと言ってもいい程、シェライン自身がルイストールの事を熟知し、進んで身の周りの手伝いをしてきた。
だから、何もしないこの時間がとてつもなく落ち着かない…
「今会えなくても次はきっと満ち足りた愛らしいあのお顔が見れることでしょう?ふふふ、どれほどお喜びになるかしら?きっとあのエメラルドの様な瞳は宝石よりも光り輝くのだわ…!」
貴族牢には人の出入りは最小限だ。定期的に見張り役の者の訪室がありその時点で必要なことは済まされる。屋敷にいる頃よりはずっと不便で、人との会話もなく薄ら寂しいものであるのに、一つも気にならない程にシェラインの心は好きな者へと注がれていた。
今日という日を迎えるために、二人してどれだけ綿密に話し合ってきたことか。きっと周囲の人々には理解できないことかも知れなかった。が、まだ幼い内に芽生えてしまった好意にシェラインは抗う術を知らなかったし、好きになった者もまた幼くて純粋に何度も自分の夢をシェラインに語り聞かせてきたのだ。相手の夢が自分の夢の様に思えるのにそんなに時間は掛からなかった。成長する中で成人としての勤め云々を知る様になったとしても、相手の夢は自分の夢と受け止めてしまうほどには、シェラインはのめり込んでしまっていたのだ。
好意を向ける相手、パッセンテージ王国王太子ルイストールに……
自分の至らなさを改めて実感するシェライン侯爵令嬢は大きなため息と共にベッドにボスンッと寝転ぶ。
「顔が…ついついにやけてしまいそうで…」
兄マスクルからの情報では、王太子ルイストールは普段と別段変わった所がないという事。そして、コールテン侯爵である父と、国王陛下はひどくお怒りと。上々の結果が得られたようである。王太子妃となる侯爵家を蔑ろにされて、父コールテン侯爵は黙ってはいないだろう。いくら前国王との親密な間柄だったとしてもそれは、前王の時。王家からの謝罪だけでは今回の事は受け入れられようはずも無い事だから。良くても自分の妃候補の娘を牢に繋ごうとする王太子との婚約は無くなるだろう。悪くすれば高位貴族を蔑ろにし、侯爵家を敵に回した事で王太子は廃嫡となる位には事態は重いものだ。
「うん。全体的にいい傾向ですわ。」
一歩一歩、夢に向かって進んでいる。
……大丈夫…もう直ぐ貴方様の夢が叶いましてよ?……
うふふふ…マスクルも退室した室内に一人シェラインの楽しそうな笑い声だけが響いて行く。
今一つ残念と言うならば、食事の際に王太子と共にいられなかった事だろうか。嫌いな物はなかったか、残さずに食べられただろうかと、まるで母親の様な心配をしてしまうのは、今までずっと側で見続けていたシェラインの習い性のようなもの。
「残念ですわ…王城内にいるのにもかかわらず、お顔も見に行けないなんて…!」
牢に勾留中は外出は不可能。兄マスクルの訪室だって禁止のはずが国王の計らいとゴリ押しで、調書を取ると言う名目の元かなったようなものだ。
「こんなに長く離れていたことあったかしら?」
シェラインが物心ついた時には、もう当たり前のように毎日王城に日参していたものだ。勿論、シェラインや王太子ルイストール自身の勉強や熟さなければならない所用時は省いてであるが、自由時間ができればいそいそと城へ通ってはあれこれとルイストールの身の回りの世話をしていた。だからこんなに時間が有るのに、あのパールピンクの柔らかな髪の毛と非常に整った可愛らしい顔が隣にいないと落ち着かなくなってしまう。
「今頃、何をされていて?」
ルイストールの部屋には秘密がある。その為普段からルイストールは侍女達が多くいる事を嫌うのだが、物心つく前からの仲であるシェラインはその事情を把握している。だから自分の身体が健康で自由が効く時には毎日のように朝から王城に参じてはルイストールの側にいた。それこそまるで母親や乳母の代わりと言ってもいい程、シェライン自身がルイストールの事を熟知し、進んで身の周りの手伝いをしてきた。
だから、何もしないこの時間がとてつもなく落ち着かない…
「今会えなくても次はきっと満ち足りた愛らしいあのお顔が見れることでしょう?ふふふ、どれほどお喜びになるかしら?きっとあのエメラルドの様な瞳は宝石よりも光り輝くのだわ…!」
貴族牢には人の出入りは最小限だ。定期的に見張り役の者の訪室がありその時点で必要なことは済まされる。屋敷にいる頃よりはずっと不便で、人との会話もなく薄ら寂しいものであるのに、一つも気にならない程にシェラインの心は好きな者へと注がれていた。
今日という日を迎えるために、二人してどれだけ綿密に話し合ってきたことか。きっと周囲の人々には理解できないことかも知れなかった。が、まだ幼い内に芽生えてしまった好意にシェラインは抗う術を知らなかったし、好きになった者もまた幼くて純粋に何度も自分の夢をシェラインに語り聞かせてきたのだ。相手の夢が自分の夢の様に思えるのにそんなに時間は掛からなかった。成長する中で成人としての勤め云々を知る様になったとしても、相手の夢は自分の夢と受け止めてしまうほどには、シェラインはのめり込んでしまっていたのだ。
好意を向ける相手、パッセンテージ王国王太子ルイストールに……
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