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ラント外伝 求めているもの
1 何もかもがつまらない
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ラントは裕福な家の生まれだ。優しい家族に囲まれて、広大な畑地に受け継ぐ領地と財産には事欠かず、一生涯働かなくても良い位の資産があった。身の回りの必要以上の物まで全て揃い、最高級の教育に有能な人材達に囲まれて幼少期から大人達の中で対等に扱われながら育って来た。
ラントのただ一つの不幸と言えば、ラントの周りにいた人材があまりにも優秀すぎた事だろうか?彼らによってラントの成長に合わせ必要なものは全て与えられた。本当に全てと言っても過言でないほど、財力にものを言わせ買い揃え与えられた。全てにおいてラントが求めるよりも先に彼らは動き、ラントが求めるよりも先にラントに与えるのであった。主人に求める物を言わせずとも必要な物を用意出来る事は仕える者達にとっては使用人の鏡ですらあり、彼らはそれを常に誇りに思いラントの変化には気が付けなかった。
そんな中ではラントは求める事が分からなくなっていく。
ある日、婚約者に問われた。
「何か欲しい物はないでしょうか?ラント様はあらゆる物を持ってらっしゃるから私ではご満足差し上げることはできないかもしれませんの。けれど、婚約の記念になる物をお送りしたいと考えておりますの。」
頬を赤て恥ずかしそうに言う彼女に何も求める物は無い、と俄然悟ってしまった。必要な物ならば有能な部下達が全てにおいて用意済みだ。機を見て彼らがそれを出してくるだけでいい。なのにこの女はどうだ?妻となるべく身でありながら今ラント自身が何を求めているのかを分からないでいる?こんな事は初めてだった…そしてこんな使えない人間を見たのも初めてだった。
何の為にこの女はここにいる?後継者を残すためか?ならば時折閨に充てがわれる別の女でもいいはずだ。彼女達の方がこちらが何をして欲しいのか良くわかっているではないか。では、領地を盤石なものにするためか?しかし既に揺るぎ無い領土と資産がある。今更他の領地の後押しなど必要もないほどに。
結婚に対し夢など持っていなかったが、少々退屈な日常に変化があると思えば楽しみにもしていたのだが、大した興味も抱かせず何か言わなければ悟らない頭の持ち主とこの先何十年と共にいる……?こう考えただけでもうこの女は要らない物となった。
与えられすぎて、欲望に喘ぐことも満足することさえも知らないラントはこの世の全てが一気につまらない物に見えて、絶望に喘ぐことになる……
ラントのただ一つの不幸と言えば、ラントの周りにいた人材があまりにも優秀すぎた事だろうか?彼らによってラントの成長に合わせ必要なものは全て与えられた。本当に全てと言っても過言でないほど、財力にものを言わせ買い揃え与えられた。全てにおいてラントが求めるよりも先に彼らは動き、ラントが求めるよりも先にラントに与えるのであった。主人に求める物を言わせずとも必要な物を用意出来る事は仕える者達にとっては使用人の鏡ですらあり、彼らはそれを常に誇りに思いラントの変化には気が付けなかった。
そんな中ではラントは求める事が分からなくなっていく。
ある日、婚約者に問われた。
「何か欲しい物はないでしょうか?ラント様はあらゆる物を持ってらっしゃるから私ではご満足差し上げることはできないかもしれませんの。けれど、婚約の記念になる物をお送りしたいと考えておりますの。」
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与えられすぎて、欲望に喘ぐことも満足することさえも知らないラントはこの世の全てが一気につまらない物に見えて、絶望に喘ぐことになる……
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