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22.カッコ悪い
しおりを挟む「おい、テメェ。夜寿華の足、見てただろ」
「見てないよ……」
「はあ?脚組んでる太腿をチラチラと見てただろうが」
ウジウジした、見るからに気の弱そうな園村って男子に毎日のように因縁を付けていた。同じクラスの雄平はアタシとつるんで、その陰キャ野郎をイジってストレスを解消していた。
どれぐらい園村で遊んだだろうか、中1の時に目を付けて、それから一年ぐらいは、事あるごとに絡んでた。雄平は見た目こそイケメンに属する奴だが、心がひん曲がっていた。アタシもその頃はかなりひん曲がってた。
「キメェんだよ、テメェ。ブツブツと小声で」
「……ごめんなさい」
「オラッ!」
「ぐはっ……」
「おい、雄平。目立つ所殴んなよ」アタシはタバコをふかしながら、園村の腹に膝蹴りを何度もくらわしている雄平を嗜めた。
なんでこんな奴を虐めてんのか、よく分からなくなった事が何度もある。きっかけは何だったのか。それも忘れてしまうぐらいに、虐めはアタシらの習慣になっていた。
雄平とアタシは似ていた。二人とも家が結構金持ちだった。金があれば幸せとは限らない、その典型的な例になりそうな二人だった。雄平は園村を虐めてたのは、なんでだったっけ。……ああ。そうか、くだらない理由だった。要するに、やっかみだ。
アタシは違う。このナヨナヨした男が気に入らなかった。途中からそういう事にした。中1の頃に幼馴染がアタシに園村の事が好きだと言ってきた。それがきっかけだったかもしれない。要するに、雄平とアタシは似たようなくだらない理由で園村をターゲットにしていた。
1年の頃は同じクラスじゃなかった奴だが、2年になった時に同じクラスになった、ちょっと変わった女がいた。そいつは、園村を昔から知ってる奴みたいで、小学校も同じだったらしい。私の幼馴染もそいつと同じ小学校に通っていた。かと言って、仲が良かったわけでもないらしい。
アタシと、アタシの幼馴染はもっと小さい頃に会っている。母親が知り合い同士だった。ママ友とかいうやつか?ガキの頃は同じ幼稚園にいたが、途中からいなくなった。だから、アタシと幼馴染は小学校は違う所に通っていたが、中学生になったら、その辺の3つの小学校に通っていた奴らが同じ中学校に通う事になったから、再び中学で一緒になった。
園村と、アタシの幼馴染、その変な女は同じ小学校に通っていたから、その3人も幼馴染だって事になる。
ある時、その変な女が、私に因縁を付けてきた。
「あんたさぁ、弱い奴イビって楽しいわけ?」
「は……?なんだテメェは?」
「タバコすうな、まだ中学生だろ、私ら」
「ウゼェな、なんだよ。……はあん?なるほど、テメェもあのイモムシ野郎にご興味がおありで?」
「そうね、弱すぎて。見てらんないのよ」
「……んだよ、偽善者ちゃん。はっきり言えよ、ヒヒ」
「あんた、可哀想な人だね」
気がついたら、アタシはその女の襟ぐりを掴んで、壁に押し付けていた。無性に腹が立った。すごい見下されていたから。その女の目はアタシを見透かしているみたいで、どれだけ威嚇しようが、一切表情を崩さなかった。
アタシが少し怯んだのか、力を抜いた瞬間に、逆に押し倒されて、襟ぐりを掴み返された。その女の目は、真っ直ぐで、見てるだけで吸い込まれそうだった。歪みの無い目、信念を持つ者にしか宿らない一才の曇りがない目だった。
「そういうの、反吐が出るぐらいカッコ悪いよ」
その女は、蛭子悠希絵という女だった。
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