上 下
22 / 35

22.カッコ悪い

しおりを挟む

「おい、テメェ。夜寿華の足、見てただろ」
「見てないよ……」
「はあ?脚組んでる太腿をチラチラと見てただろうが」

 ウジウジした、見るからに気の弱そうな園村って男子に毎日のように因縁を付けていた。同じクラスの雄平はアタシとつるんで、その陰キャ野郎をイジってストレスを解消していた。

 どれぐらい園村で遊んだだろうか、中1の時に目を付けて、それから一年ぐらいは、事あるごとに絡んでた。雄平は見た目こそイケメンに属する奴だが、心がひん曲がっていた。アタシもその頃はかなりひん曲がってた。

「キメェんだよ、テメェ。ブツブツと小声で」
「……ごめんなさい」
「オラッ!」
「ぐはっ……」

「おい、雄平。目立つ所殴んなよ」アタシはタバコをふかしながら、園村の腹に膝蹴りを何度もくらわしている雄平を嗜めた。

 なんでこんな奴を虐めてんのか、よく分からなくなった事が何度もある。きっかけは何だったのか。それも忘れてしまうぐらいに、虐めはアタシらの習慣になっていた。

 雄平とアタシは似ていた。二人とも家が結構金持ちだった。金があれば幸せとは限らない、その典型的な例になりそうな二人だった。雄平は園村を虐めてたのは、なんでだったっけ。……ああ。そうか、理由だった。要するに、やっかみだ。

 アタシは違う。このナヨナヨした男が気に入らなかった。途中からそういう事にした。中1の頃に幼馴染がアタシに園村の事が好きだと言ってきた。それがきっかけだったかもしれない。要するに、雄平とアタシは似たようなくだらない理由で園村をターゲットにしていた。

 1年の頃は同じクラスじゃなかった奴だが、2年になった時に同じクラスになった、ちょっと変わった女がいた。そいつは、園村を昔から知ってる奴みたいで、小学校も同じだったらしい。私の幼馴染もそいつと同じ小学校に通っていた。かと言って、仲が良かったわけでもないらしい。

 アタシと、アタシの幼馴染はもっと小さい頃に会っている。母親が知り合い同士だった。ママ友とかいうやつか?ガキの頃は同じ幼稚園にいたが、途中からいなくなった。だから、アタシと幼馴染は小学校は違う所に通っていたが、中学生になったら、その辺の3つの小学校に通っていた奴らが同じ中学校に通う事になったから、再び中学で一緒になった。

 園村と、アタシの幼馴染、その変な女は同じ小学校に通っていたから、その3人も幼馴染だって事になる。

 ある時、その変な女が、私に因縁を付けてきた。

「あんたさぁ、弱い奴イビって楽しいわけ?」
「は……?なんだテメェは?」
「タバコすうな、まだ中学生だろ、私ら」
「ウゼェな、なんだよ。……はあん?なるほど、テメェもにご興味がおありで?」
「そうね、弱すぎて。見てらんないのよ」
「……んだよ、偽善者ちゃん。はっきり言えよ、ヒヒ」
「あんた、だね」

 気がついたら、アタシはその女の襟ぐりを掴んで、壁に押し付けていた。無性に腹が立った。すごい見下されていたから。その女の目はアタシを見透かしているみたいで、どれだけ威嚇しようが、一切表情を崩さなかった。

 アタシが少し怯んだのか、力を抜いた瞬間に、逆に押し倒されて、襟ぐりを掴み返された。その女の目は、真っ直ぐで、見てるだけで吸い込まれそうだった。歪みの無い目、信念を持つ者にしか宿らない一才の曇りがない目だった。

「そういうの、カッコ悪いよ」

 その女は、蛭子悠希絵という女だった。


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

こんこん公主の後宮調査 ~彼女が幸せになる方法

朱音ゆうひ
キャラ文芸
紺紺(コンコン)は、亡国の公主で、半・妖狐。 不憫な身の上を保護してくれた文通相手「白家の公子・霞幽(カユウ)」のおかげで難関試験に合格し、宮廷術師になった。それも、護国の英雄と認められた皇帝直属の「九術師」で、序列は一位。 そんな彼女に任務が下る。 「後宮の妃の中に、人間になりすまして悪事を企む妖狐がいる。序列三位の『先見の公子』と一緒に後宮を調査せよ」 失敗したらみんな死んじゃう!? 紺紺は正体を隠し、後宮に潜入することにした! ワケアリでミステリアスな無感情公子と、不憫だけど前向きに頑張る侍女娘(実は強い)のお話です。 ※別サイトにも投稿しています(https://kakuyomu.jp/works/16818093073133522278)

美しすぎる引きこもりYouTuberは視聴者と謎解きを~訳あり物件で霊の未練を晴らします~

じゅん
キャラ文芸
【「キャラ文芸大賞」奨励賞 受賞👑】  イケメン過ぎてひねくれてしまった主人公が、兄や動画の視聴者とともに事故物件に現れる幽霊の未練を解きほぐす、連作短編の「日常の謎」解きヒューマンストーリー。ちょっぴりブロマンス。  *  容姿が良すぎるために散々な目にあい、中学を卒業してから引きこもりになった央都也(20歳)は、5歳年上の兄・雄誠以外は人を信じられない。 「誰とも関わらない一人暮らし」を夢見て、自宅でできる仕事を突き詰めて動画配信を始め、あっという間に人気YouTuberに。  事故物件に住む企画を始めると、動画配信中に幽霊が現れる。しかも、視聴者にも画面越しに幽霊が見えるため、視聴者と力を合わせて幽霊の未練を解決することになる。  幽霊たちの思いや、兄や視聴者たちとのやりとりで、央都也はだんだんと人を信じる気になっていくが、とある出来事から絶望してしまい――。  ※完結するまで毎日更新します!

花舞う庭の恋語り

響 蒼華
キャラ文芸
名門の相神家の長男・周は嫡男であるにも関わらずに裏庭の離れにて隠棲させられていた。 けれども彼は我が身を憐れむ事はなかった。 忘れられた裏庭に咲く枝垂桜の化身・花霞と二人で過ごせる事を喜んですらいた。 花霞はそんな周を救う力を持たない我が身を口惜しく思っていた。 二人は、お互いの存在がよすがだった。 しかし、時の流れは何時しかそんな二人の手を離そうとして……。 イラスト:Suico 様

古からの侵略者

久保 倫
キャラ文芸
 永倉 有希は漫画家志望の18歳。高校卒業後、反対する両親とケンカしながら漫画を描く日々だった。  そんな状況を見かねた福岡市在住で漫画家の叔母に招きに応じて福岡に来るも、貝塚駅でひったくりにあってしまう。  バッグを奪って逃げるひったくり犯を蹴り倒し、バッグを奪い返してくれたのは、イケメンの空手家、壬生 朗だった。  イケメンとの出会いに、ときめく永倉だが、ここから、思いもよらぬ戦いに巻き込まれることを知る由もなかった。

炎華繚乱 ~偽妃は後宮に咲く~

悠井すみれ
キャラ文芸
昊耀国は、天より賜った《力》を持つ者たちが統べる国。後宮である天遊林では名家から選りすぐった姫たちが競い合い、皇子に選ばれるのを待っている。 強い《遠見》の力を持つ朱華は、とある家の姫の身代わりとして天遊林に入る。そしてめでたく第四皇子・炎俊の妃に選ばれるが、皇子は彼女が偽物だと見抜いていた。しかし炎俊は咎めることなく、自身の秘密を打ち明けてきた。「皇子」を名乗って帝位を狙う「彼」は、実は「女」なのだと。 お互いに秘密を握り合う仮初の「夫婦」は、次第に信頼を深めながら陰謀渦巻く後宮を生き抜いていく。 表紙は同人誌表紙メーカーで作成しました。 第6回キャラ文芸大賞応募作品です。

OL 万千湖さんのささやかなる野望

菱沼あゆ
キャラ文芸
転職した会社でお茶の淹れ方がうまいから、うちの息子と見合いしないかと上司に言われた白雪万千湖(しらゆき まちこ)。 ところが、見合い当日。 息子が突然、好きな人がいると言い出したと、部長は全然違う人を連れて来た。 「いや~、誰か若いいい男がいないかと、急いで休日出勤してる奴探して引っ張ってきたよ~」 万千湖の前に現れたのは、この人だけは勘弁してください、と思う、隣の部署の愛想の悪い課長、小鳥遊駿佑(たかなし しゅんすけ)だった。 部長の手前、三回くらいデートして断ろう、と画策する二人だったが――。

胡蝶の夢に生け

乃南羽緒
キャラ文芸
『栄枯盛衰の常の世に、不滅の名作と謳われる──』 それは、小倉百人一首。 現代の高校生や大学生の男女、ときどき大人が織りなす恋物語。 千年むかしも人は人──想うことはみな同じ。 情に寄りくる『言霊』をあつめるために今宵また、彼は夢路にやってくる。

処理中です...