男に生まれたからには攻めていく!

無月

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本編

16歳-4

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 「い、嫌ですっ。兄様が家からいなくなるなんてっ」

 俺の一世一代の告白に、デイヴが返すよりもフレディが反射的に否定する方が早かった。
 俺の腕に両腕でしがみつき、嫌だ嫌だと子供の様に駄々を捏ねている。可愛いか。天使だもんな、そりゃ可愛いよ。
 でも、大切な俺の天使の言葉も、俺の想いをグラつかせる事は無かった。
 今は辛くてもフレディもいずれ可愛い(以外は断固認めない)お嫁さんを貰う。大人になれば色々事情も変わってくるんだ。

 「何を言っているのかな?」

 しんみりする俺達兄弟に対し、デイヴは爽やかな笑みでさっくり空気を切断して来た。

 「私がアレクの所に嫁ぐのだから、義父上殿とフレッドが家から追い出さない限り一緒だよ?」
 「「「は?」」」

 デイヴの言葉に男三人の間抜けな言葉がハモった。
 父さんの隣では母さんが「あら~」と嬉しそうにほほに手を当てている。

 「まあまあまあ。それじゃあ、我が家は息子が三人になるのね。賑やかで嬉しいわ~」

 一人母さんがはしゃいでいる。

 「え?王族として残るんじゃ無いのか?」
 「そうだね。初めてアレクに会った時には絶対にお嫁さんにするつもりだったけど、アレクはお嫁さんを欲しがっていただろう。
 そして私はどんな形であれアレクと婚姻したかった。最終的には押し掛けるのも有りかと思って、陛下達には根回ししておいたんだよ」

 あっけらかんと言って除けるデイヴに、開いた口が塞がらない。最後に「強硬手段を取らずに済んで嬉しい」と付け加えられても。
 えーと。

 「うん。まあ、それだけ俺を好いてくれてる。って事で、良いのか?」
 「うん。世界でただ一人、アレクだけを愛してる」

 良くわからんが、俺は細かく考える事を放棄する事にした。
 とりま、デイヴが可愛い。

 「それじゃあ、兄様はいなくならなくて、僕には兄様が一人増えるの?」
 「フレッドが兄と呼んでくれるなら」
 「~!それなら良いよ!あっ、僕の兄様になるなら僕の事はフレディって呼んでっ」
 「有難う、フレディ」
 「むむむぅ。可愛い息子を二人とも手離さなくて良いのか。アイツの息子と言うのは気に喰わんが、それならまあ、マシか」
 「父の事では毎度お世話を掛けています。オルティス卿のお陰で我が国は平和を保てていると言っても過言ではないでしょう」
 「ふむ。まあ、性格はアイツより妃殿下に似たのだな。物の通りをわかっている」

 どうやら俺がデイヴの可愛さに顔を緩め切っている間に、フレディと父さんも納得してくれたらしい。

 「それじゃあ」

 父さんに問えば。

 「うむ。今日はアレックスの誕生祝いと、婚約者の発表をせねばな」

 父さんは大仰に頷いた。

 かくして、俺の誕生会は幕を開けるのだった。
 


 会場には多くの貴族が集まっている。そこへ俺は、去年までと違う事をする。
 即ちパートナーを連れて入場する。
 未婚の者が家族親戚以外のパートナーを連れて行くのは、恋人や婚約者宣言するのと同義と見られる。故に今までの誕生会は一人で入場していたのだが。
 フレディは先に入って待っている。
 これから父さんと母さんが先に入り、俺の、今年は俺達の門出を祝う様に中へ導いてくれる。
 俺は隣のデイヴを見た。
 デイヴは今までにない位幸せそうな顔をしている。
 それを見て俺の想いは膨れ上がり、今まで待たせた分、幸せにしてやると気概を燃やした。
 中で父さんと母さんが左右に分かれ、紹介する様に手を俺達に向けられている。
 それを合図に歩き出すデイヴの手を、俺は想いを込めて握った。場合が場合なだけに恋人繋ぎはしないが、それでも熱だけは伝わる様に握る。
 デイヴは俺を見てフワリと熱を孕んだ目で笑んだ。そして握り返された手は、手袋越しでも熱かった。
 毎年一人だった俺。招待客もそう思っていた事だろう。何せ招待状には特に変わった事は書かれていなかったのだから。
 それが二人で入った事で、会場は一時騒然とした。

 「本日は我が息子、アレクサンダーの為にお越し頂き感謝申し上げます。
 この度はアレクサンダーの誕生を祝う以外にもお知らせが御座います。
 突然の事で驚かれたとは思いますが、アレクサンダーに婚約者が出来ました事をこの場にてご報告致します」

 父さんが開会の挨拶をすれば、状況をいち早く理解した者からお祝いムードに転じて行く。
 この場に集まったのはオルティス家と懇意にしている貴族家のみなので否定的な反応は一切無かった。

 「私、デイヴィッド・ゼルクは、本日を以てアレクサンダー・オルティスの婚約者となれた事をここに報告する」

 堂々とデイヴがこいつもう俺のだから手出しするなよオーラを醸し出して宣言した。てかそれ俺もしたい。
 もう、デイヴは俺のだから。
 正確には婚約者の手続きは済んでいないが、両者及びその家族が了承している時点でほぼ成立しているから俺ので良いのである。

 「私、アレクサンダー・オルティスは、デイヴィッド・ゼルク第二王子殿下と生涯を共にする事を誓いました」

 立場上はデイヴは最上位の王族だから敬語は使わないとしても、俺は未だ貴族位の無い養われの身だから敬語で宣言した。でもオーラだけはコイツに手ぇ出す奴はヤると全力で出しといた。
 途端に割れんばかりの拍手喝采と祝福嵐が湧き起こった。

 「いやぁ、ヤキモキしましたが、到頭落ちましたか」
 「長かったですねぇ。私などは速落ちると思っていたのですが」
 「いやはや私などは落ちないと思っていたのですがな」
 「はっはっは!確かにオルティス家は王族と言えど容赦などしませんからな」
 「しかし甘いですぞ。彼らの甘く酸っぱい青春を具に見ていれば、少なからず想いあっていた事など明白。お陰で勝たせて貰いましたなっ」
 「くぅーっ!一年前賭けしてましたかっ。凄まじい読みですな。私などはギリギリに一点賭けしたので大損ですわ」

 おいコラおっさん共。
 何、人の青春で賭け事しとんじゃゴルラァ!!
 反対派が一人もいない事は喜ばしい事だが、これだから遊ぶ物の少ない世界の貴族はっ。絶対他の遊戯広めまくって二度と人の恋路で賭け事出来なくしてやる。

 俺の憤りは兎も角。誕生会は和やかお祝いムードのままいつに無い盛り上がりを見せ、盛り上がりすぎて深夜遅くまで続いたのだった。



 なお余談では有るが、急な御公務が入ってしまい最後にご登場あそばれた陛下は、決定的瞬間を逃した事を心底悔しがり、後日腹いせにその原因を作った悪徳貴族他を潰したとか潰さなかったとか。怖っ。
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