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本編
10歳-1
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レクとケイリーがオルティス家に来てから三年。
二年前に協会が落ち着いた事で、オルティス家預かりだった孤児院の子達が帰って行った。
でも孤児院の中でもオルティス家に残った子達も居る。初めから使用人見習い兼マチルダの助手だったレクは当たり前として、他にも年長者が数人使用人見習いとして正式に雇われる事になった。
何でも窮地を救ってくれた恩を返したいのだとか。将来は俺の元で働く予定だ。うむ、可愛ければそれで良し!
俺もレクに負けない様に父さんに働く事の大切さをプレゼンして、何とか小さな仕事を任せて貰えてる。今じゃ俺も自分で稼いだ金を持つ立派な社会人(見習い)だ。ふっふっふ。とニヤケが止まらないぜっ。
それにしてもプレゼンした時の父さんの感激は凄い物だったな。何せ社交界という社交界で俺の事を自慢して回った程だ。
何気に俺の社交界デビューのハードル上がってない?ワザと?ワザとなの?ワザとじゃ無いよねぇ?
今年がその社交界デビューの年なんだけど。仮病使って欠席して良いかな?ダメ?あぁ……そう……(遠目)。
来年は学園に通う事になるから、その前の顔合わせも兼ねた社交界が行われるんだよなー。
「唯一の救いはレクとケイリーも一緒に学園に通える事か……」
そう、学園は基本的には貴族の子達が通う場所だけど、例外として優秀な者は一般市民でも奨学生として通えるんだ。ケイリーは男爵子女だから当然として、レクも奨学生として通う事になっている。
魔術の天才たるレクが選ばれるのは初めからわかっていたさ。今じゃ第二のマチルダって言われて王家からのしつこい勧誘を躱すのが大変だ。ウチの子はあげません!
因みに凄いのはレクだけじゃ無かった。予知能力だけかと思いきや、ケイリーは莫大な魔力に聖属性を使いこなせる逸材だった。
聖属性は浄化に特化していて、怨霊は勿論。殺菌消毒までお手のものらしい。協会に一人は欲しい人材と言えよう。さらにケイリーは回復魔術も覚えて、“医者”とまでは言わないがちょっとした看護師レベルの事が出来る様なハイスペック美少女へと変身を遂げてしまった。
回復魔術はレクよりレベルが高いらしい。と、いうよりレクは回復魔術は苦手らしい。攻撃系は災害レベルにヤバいレベルだけどな!
……。
あれ?可笑しいな。俺侯爵子息なのに、影薄くなってる気がするんだよ……?
「言っとくけどアレックスは前衛特化の万能型って訳の分からない進化してるんだからね」
「政治が出来る脳筋ってところも訳の分からないところだよな」
キミタチのそれは慰めているのかな?貶してるのかな?それとも本気で言ってるのかな?
涙ちょちょ切れた俺は、黄昏れを背負ってフラフラの状態でダンスの授業を受けるのだった。
「君達?余裕そうだけど、ワルツは完璧にマスターしたんだね?」
「!」
「……っ!」
壁際で見学している二人にたいして、優雅な微笑みを携えたダンスの先生が、俺のダンス練習のリズムの為に手拍子をしながら言った。「オス〇ール!」と叫びたくなる風情のキラキラ花をバックに背負わせる系な先生だ。きっと驚く時や怒る時は人差し指と小指を立ててバックに雷鳴轟かせるに違いない。
その先生が私語を発した二人に対して微笑んでる。でもその目の奥は何だか昏く淀んで見えた。
それもその筈。運動音痴なレクも、天然抜けてる系なケイリーも、二人とも未だにダンスが踊れないからだ。俺はすでにマスター済みだがな!ダンスはモテへの必要過程。俺が目指してるのは超難易度ダンスだ。初心者ダンスで躓いてなんていられないのさ。
「結構結構。ではアレクサンダー様はお休みください。これから完璧なダンスを二人に踊って頂きましょう」
あーあ、顔反らして震えちゃうんだもんなー。案の定というか予定調和というか、人差し指と小指をおっ立てて背後に雷鳴を轟かせた先生にバレちゃってる。っていうか、先生初めから出来て無いって思ってたでしょ。
「オレ……僕は一般市民なのでダンスは必要ないかと……」
「あっ!ずるいわレク!」
駄目元、というより悪足掻きだなありゃ。
レクが難を逃れようと固辞するけど一応貴族のケイリーはそうもいかない。一人だけ離脱なんてさせるものかとレクの服をがしっと掴んで離さない。
でもね、それお行儀悪いよ?
案の定、礼儀作法に厳しい先生が目を光らせた。
「アレクサンダー様に仕える者がワルツ程度踊れないなど恥です。何より一流の教育を施してくださっている侯爵様に申し訳が立たないと思わないのですか」
ずももももも!っと効果音を発しながら昔の少女漫画さながらに怒れる先生の迫力は、普通に怒られるより恐怖心が煽られたようだ。レクもケイリーも互いの手を掌合わせで握りながら半泣きで「はい。すみません」と素直に謝った。
まあ、謝っても苦手なものが直ぐに出来る訳じゃないけどね。
その日の夜。教育熱心な先生によって居残り勉強させられた二人の心の悲鳴が屋敷に響き渡っていた。
のをさっさとやる事済まして夢の中にダイブしていた俺は全く知らなかった。
二年前に協会が落ち着いた事で、オルティス家預かりだった孤児院の子達が帰って行った。
でも孤児院の中でもオルティス家に残った子達も居る。初めから使用人見習い兼マチルダの助手だったレクは当たり前として、他にも年長者が数人使用人見習いとして正式に雇われる事になった。
何でも窮地を救ってくれた恩を返したいのだとか。将来は俺の元で働く予定だ。うむ、可愛ければそれで良し!
俺もレクに負けない様に父さんに働く事の大切さをプレゼンして、何とか小さな仕事を任せて貰えてる。今じゃ俺も自分で稼いだ金を持つ立派な社会人(見習い)だ。ふっふっふ。とニヤケが止まらないぜっ。
それにしてもプレゼンした時の父さんの感激は凄い物だったな。何せ社交界という社交界で俺の事を自慢して回った程だ。
何気に俺の社交界デビューのハードル上がってない?ワザと?ワザとなの?ワザとじゃ無いよねぇ?
今年がその社交界デビューの年なんだけど。仮病使って欠席して良いかな?ダメ?あぁ……そう……(遠目)。
来年は学園に通う事になるから、その前の顔合わせも兼ねた社交界が行われるんだよなー。
「唯一の救いはレクとケイリーも一緒に学園に通える事か……」
そう、学園は基本的には貴族の子達が通う場所だけど、例外として優秀な者は一般市民でも奨学生として通えるんだ。ケイリーは男爵子女だから当然として、レクも奨学生として通う事になっている。
魔術の天才たるレクが選ばれるのは初めからわかっていたさ。今じゃ第二のマチルダって言われて王家からのしつこい勧誘を躱すのが大変だ。ウチの子はあげません!
因みに凄いのはレクだけじゃ無かった。予知能力だけかと思いきや、ケイリーは莫大な魔力に聖属性を使いこなせる逸材だった。
聖属性は浄化に特化していて、怨霊は勿論。殺菌消毒までお手のものらしい。協会に一人は欲しい人材と言えよう。さらにケイリーは回復魔術も覚えて、“医者”とまでは言わないがちょっとした看護師レベルの事が出来る様なハイスペック美少女へと変身を遂げてしまった。
回復魔術はレクよりレベルが高いらしい。と、いうよりレクは回復魔術は苦手らしい。攻撃系は災害レベルにヤバいレベルだけどな!
……。
あれ?可笑しいな。俺侯爵子息なのに、影薄くなってる気がするんだよ……?
「言っとくけどアレックスは前衛特化の万能型って訳の分からない進化してるんだからね」
「政治が出来る脳筋ってところも訳の分からないところだよな」
キミタチのそれは慰めているのかな?貶してるのかな?それとも本気で言ってるのかな?
涙ちょちょ切れた俺は、黄昏れを背負ってフラフラの状態でダンスの授業を受けるのだった。
「君達?余裕そうだけど、ワルツは完璧にマスターしたんだね?」
「!」
「……っ!」
壁際で見学している二人にたいして、優雅な微笑みを携えたダンスの先生が、俺のダンス練習のリズムの為に手拍子をしながら言った。「オス〇ール!」と叫びたくなる風情のキラキラ花をバックに背負わせる系な先生だ。きっと驚く時や怒る時は人差し指と小指を立ててバックに雷鳴轟かせるに違いない。
その先生が私語を発した二人に対して微笑んでる。でもその目の奥は何だか昏く淀んで見えた。
それもその筈。運動音痴なレクも、天然抜けてる系なケイリーも、二人とも未だにダンスが踊れないからだ。俺はすでにマスター済みだがな!ダンスはモテへの必要過程。俺が目指してるのは超難易度ダンスだ。初心者ダンスで躓いてなんていられないのさ。
「結構結構。ではアレクサンダー様はお休みください。これから完璧なダンスを二人に踊って頂きましょう」
あーあ、顔反らして震えちゃうんだもんなー。案の定というか予定調和というか、人差し指と小指をおっ立てて背後に雷鳴を轟かせた先生にバレちゃってる。っていうか、先生初めから出来て無いって思ってたでしょ。
「オレ……僕は一般市民なのでダンスは必要ないかと……」
「あっ!ずるいわレク!」
駄目元、というより悪足掻きだなありゃ。
レクが難を逃れようと固辞するけど一応貴族のケイリーはそうもいかない。一人だけ離脱なんてさせるものかとレクの服をがしっと掴んで離さない。
でもね、それお行儀悪いよ?
案の定、礼儀作法に厳しい先生が目を光らせた。
「アレクサンダー様に仕える者がワルツ程度踊れないなど恥です。何より一流の教育を施してくださっている侯爵様に申し訳が立たないと思わないのですか」
ずももももも!っと効果音を発しながら昔の少女漫画さながらに怒れる先生の迫力は、普通に怒られるより恐怖心が煽られたようだ。レクもケイリーも互いの手を掌合わせで握りながら半泣きで「はい。すみません」と素直に謝った。
まあ、謝っても苦手なものが直ぐに出来る訳じゃないけどね。
その日の夜。教育熱心な先生によって居残り勉強させられた二人の心の悲鳴が屋敷に響き渡っていた。
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