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盗賊という名の受け、落ちてませんか?
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どっかーん!ばっかーん!と噴煙が巻き起こる山の斜面。ついでに起こる土砂崩れ。
起こしているのは我である。
「ぬるい!ぬるいぞ小者め!我を誰と心得る!我こそは!」
「あーはいはいもう誰も聞いてねーから。てかマーはすっげえ魔導士だったんだな」
街で盗賊の噂を仕入れてやって来た洞窟で、しかし勇者の相手になりうる顔面偏差値の男がいなかった。
しかもこやつらいきなり襲い掛かってくるし心の栄養不足の我がちょっとプッチン来ちゃって深淵魔法で洞窟ごと吹っ飛ばした訳だが。
「何を言う武闘家よ!魔導士枠はナギというそこの者だけで十分であるぞ!我は腐男子枠だ!」
「へーへー。確かにすっげえ深淵魔法だったもんな。物を腐らす魔法って怖いのな」
「違うよゴー君。確かに腐食魔法もあるけど、今の深淵魔法は違う。しかし見た限り詠唱はまるで無かったけど、魔道具を持ってるの?」
我は魔王であるが故に詠唱などという媒介は必要としない。何故って?自分の力使うのに何で媒介必要とするのさ。
因みに我の力を貸す魔法があったりする。そして代々の勇者一行の魔導士には我に我の魔法をぶつけてくる者もいて草生える。
「魔道具は無いな。深淵魔法は我の力だし。流石に他者の力を借りる時には貸してね☆ってお願いするぞ」
「なんと固有魔法だったのか。確かにそれなら無詠唱でいけるね」
「うむ。確か魔導士も持っておったな」
「うん。と言っても僕のはブーストだから目立たないんだけどね」
「何を言う。ブーストを無詠唱で出来るのは強みだぞ」
「そう言って貰えると嬉しいな」
へへへっと見た目相応の笑みを我に向ける魔導士。他の者、特に武闘家に対しては大人然とした振る舞いなのにもしかして好きな相手には大人な自分を見せたい背伸び系合法ショタ枠うましありがとうございます!
我は尊い気持ちが溢れたので武闘家の肩を叩いておく。
「幸せにするのだぞ」
「?ああ!」
さてはて今回の盗賊共は役場に突き出して次の盗賊の情報を得ては次々と役場へ放り込んで行く日々が続いた。
「何故だ。何故勇者の相手になりえる者がおらぬのだ!?」
そしてその全てにおいて良質な盗賊を見つけることが出来ずにいた。
なんでどいつもこいつも揃いも揃って厳つい顔ばかりなのだ!おっさん受けも好きだけど勇者には嫌だい!
「さあ。大分魔王城も近付いているし、優男には厳しいと土地なんだろう」
何だかんだ言いつつも盗賊退治は悪を絶つ行為だから付き合ってくれてる勇者がさらりと言う。
我はそれを恨みがましい目で見やる。
「もう何十人って屠ったのだぞ!?一人位居てもいいではないか!この際盗賊の頭とは言わぬから!」
「そうだな。平和でいいじゃないか」
最後の悪足掻きで襲い掛かって来た盗賊を一刀の元で倒した勇者が剣を仕舞いつつどうでも良さそうに言ってくる。
その周りを「今日も平和ですねぇ」と長閑に盗賊を縛っていく他の三人。
だがしかし我は諦めぬ!諦めぬぞぉっ!
盗賊共を役場に届けて直ぐに次の情報を探す。
何せ魔王城までの道で最後の街だ。ここを逃せば最早盗賊枠どころか弓使いもタンクも商人も望み薄になってしまう。
「では役場では近辺で盗賊の情報が無いのだな」
「はい。お陰様で今回捕らえて頂いた者達で最後です。新たな情報は役場よりギルドの方が早いでしょう」
ギルドは常に冒険者達が情報を齎しているからだろう。役場は所詮街の安全第一というからな。街に害が無い情報は後回しなのだろう。
という訳でギルドに来たぞ。
「受付の者よ。我にイケメン受け枠の盗賊もしくはイケメン攻め枠の盗賊の情報を齎せ」
「残念ながら盗賊にイケメンはいないわ。イケメンはそれだけで稼げる場が多いから盗賊になる必要がないもの。いたとしても性格破綻者だけね」
ギルドの受付女は指で押し上げた眼鏡をキラリと光らせ言い切った。
「そ、そんな馬鹿なっ。訳アリ盗賊でイケメン枠だってあるだろう!?」
「訳アリの場合闇ギルドの子飼いになっているのが多いわね。そして魔王城に近い程一般人のレベルすら高くなるからこの辺じゃそういうの流行らないわ」
「嘘だぁっ!嘘だと言ってくれぇ!」
無情な現実に頽れる我。
受付の女はカウンターから出るとそっと我の肩を撫でた。
「諦めないで腐男子一号。闇ギルドになら勇者の相手に相応しい子もいるわ」
「な。貴様……いや君はもしや」
「ふふ。オフ会では絡んだ事無かったけど、腐男子は少ないからね。すぐわかったわ」
「おお!同志よ!」
諦めかけた我に、しかし世界は、いや腐女子の君はまだ早いと希望を見せてくれた!
起こしているのは我である。
「ぬるい!ぬるいぞ小者め!我を誰と心得る!我こそは!」
「あーはいはいもう誰も聞いてねーから。てかマーはすっげえ魔導士だったんだな」
街で盗賊の噂を仕入れてやって来た洞窟で、しかし勇者の相手になりうる顔面偏差値の男がいなかった。
しかもこやつらいきなり襲い掛かってくるし心の栄養不足の我がちょっとプッチン来ちゃって深淵魔法で洞窟ごと吹っ飛ばした訳だが。
「何を言う武闘家よ!魔導士枠はナギというそこの者だけで十分であるぞ!我は腐男子枠だ!」
「へーへー。確かにすっげえ深淵魔法だったもんな。物を腐らす魔法って怖いのな」
「違うよゴー君。確かに腐食魔法もあるけど、今の深淵魔法は違う。しかし見た限り詠唱はまるで無かったけど、魔道具を持ってるの?」
我は魔王であるが故に詠唱などという媒介は必要としない。何故って?自分の力使うのに何で媒介必要とするのさ。
因みに我の力を貸す魔法があったりする。そして代々の勇者一行の魔導士には我に我の魔法をぶつけてくる者もいて草生える。
「魔道具は無いな。深淵魔法は我の力だし。流石に他者の力を借りる時には貸してね☆ってお願いするぞ」
「なんと固有魔法だったのか。確かにそれなら無詠唱でいけるね」
「うむ。確か魔導士も持っておったな」
「うん。と言っても僕のはブーストだから目立たないんだけどね」
「何を言う。ブーストを無詠唱で出来るのは強みだぞ」
「そう言って貰えると嬉しいな」
へへへっと見た目相応の笑みを我に向ける魔導士。他の者、特に武闘家に対しては大人然とした振る舞いなのにもしかして好きな相手には大人な自分を見せたい背伸び系合法ショタ枠うましありがとうございます!
我は尊い気持ちが溢れたので武闘家の肩を叩いておく。
「幸せにするのだぞ」
「?ああ!」
さてはて今回の盗賊共は役場に突き出して次の盗賊の情報を得ては次々と役場へ放り込んで行く日々が続いた。
「何故だ。何故勇者の相手になりえる者がおらぬのだ!?」
そしてその全てにおいて良質な盗賊を見つけることが出来ずにいた。
なんでどいつもこいつも揃いも揃って厳つい顔ばかりなのだ!おっさん受けも好きだけど勇者には嫌だい!
「さあ。大分魔王城も近付いているし、優男には厳しいと土地なんだろう」
何だかんだ言いつつも盗賊退治は悪を絶つ行為だから付き合ってくれてる勇者がさらりと言う。
我はそれを恨みがましい目で見やる。
「もう何十人って屠ったのだぞ!?一人位居てもいいではないか!この際盗賊の頭とは言わぬから!」
「そうだな。平和でいいじゃないか」
最後の悪足掻きで襲い掛かって来た盗賊を一刀の元で倒した勇者が剣を仕舞いつつどうでも良さそうに言ってくる。
その周りを「今日も平和ですねぇ」と長閑に盗賊を縛っていく他の三人。
だがしかし我は諦めぬ!諦めぬぞぉっ!
盗賊共を役場に届けて直ぐに次の情報を探す。
何せ魔王城までの道で最後の街だ。ここを逃せば最早盗賊枠どころか弓使いもタンクも商人も望み薄になってしまう。
「では役場では近辺で盗賊の情報が無いのだな」
「はい。お陰様で今回捕らえて頂いた者達で最後です。新たな情報は役場よりギルドの方が早いでしょう」
ギルドは常に冒険者達が情報を齎しているからだろう。役場は所詮街の安全第一というからな。街に害が無い情報は後回しなのだろう。
という訳でギルドに来たぞ。
「受付の者よ。我にイケメン受け枠の盗賊もしくはイケメン攻め枠の盗賊の情報を齎せ」
「残念ながら盗賊にイケメンはいないわ。イケメンはそれだけで稼げる場が多いから盗賊になる必要がないもの。いたとしても性格破綻者だけね」
ギルドの受付女は指で押し上げた眼鏡をキラリと光らせ言い切った。
「そ、そんな馬鹿なっ。訳アリ盗賊でイケメン枠だってあるだろう!?」
「訳アリの場合闇ギルドの子飼いになっているのが多いわね。そして魔王城に近い程一般人のレベルすら高くなるからこの辺じゃそういうの流行らないわ」
「嘘だぁっ!嘘だと言ってくれぇ!」
無情な現実に頽れる我。
受付の女はカウンターから出るとそっと我の肩を撫でた。
「諦めないで腐男子一号。闇ギルドになら勇者の相手に相応しい子もいるわ」
「な。貴様……いや君はもしや」
「ふふ。オフ会では絡んだ事無かったけど、腐男子は少ないからね。すぐわかったわ」
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