我は最凶の魔王にして腐男子なり!

無月

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勇者が同情した目でこちらを見ている!仲間になりますか?

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キン。という澄んだ音で勇者の剣が鞘に収まったことを知る。
そして勇者は空いた両手で我の両肩をそっと優しく掴んで来た。

「寂しかったんだな。でもだからと言って人間の社会を脅かしては誰も友達にはなってくれないぞ」

あれ?これ我ぼっちって勘違いされてる?

「友達はいるぞ?腐海の愉快な仲間達は皆気の良い者達だし、キョーコ先生は尊敬してやまない」

うむ。今では腐男子も徐々に増え始め、たまに一緒に泊まり掛けで聖地巡礼するし、次のオフ会では新たに腐男子が仲間になったから紹介してくれると言ってたし。
我結構充実しておるな。

「洗脳?」
「腐男子たる者姑息な手段は使わぬ!彼等とは正々堂々とした腐男子ライフを謳歌しておる!」

堂々と胸を張る我。ふふんと鼻も鳴らしておこう。

「何故可哀想な者を見る目をする!」
「いや。何か。すまない」

目を逸らしおる。

「おはよーユウー。それ誰だ?」

そんな折にテントから武闘家が出て来た。腹を掻きながら欠伸をしておる。魔導士はまだ出て来ていない。

「おお目を覚ましたか武闘家よ」

尊大に胸を反らせ上から目線で指を差してやる。貴様には後で攻めの何たるかを叩き込んでやらねばならんからな。

「おう。で、いつの間に仲間増えたんだ?」

全く動じず勇者を見て我を指差し返すとは、流石勇者の仲間と褒めてやろう。

「仲間ではない。こいつはま」
「くわーはっはっは!我を仲間と呼称するとは見事と褒めて遣わそう!貴様が望むのであらば間近で貴様と魔導士とのちゅっちゅらぶらぶを見届けてくれようぞ!」

あ。しまった。また勇者の言葉遮っちゃった。てへぺろ。

「すまぬ勇者よ。もう一度言ってくれ」

指をつんつんして聞けば、据わった目で睨まれちゃった。そうだよね。人の話聞いてなかったの二度目だもんね。我が悪いんだわかってる。

「こいつはま」
「へー!すっげえ偉そうな奴だな!どっかの国の偉い人か?」

勇者がもう一度言ってくれようとしたのに今度は武闘家が遮ってしまった。今のは我悪くないぞ。
しかもずかずか我に近寄りバンバンと背中を容赦なく叩いて来る。こやつ、怖いもの知らずか。我一応偉い人認識されてんだよね。

「俺は武闘家やってるゴドウィンってんだ!気軽にゴーって呼んでくれよな!」

尚もバシバシ叩きながらニカッと歯を見せて笑ってくる武闘家。その笑顔は是非とも魔導士に向けて欲しい。

「うむ。我は魔王である。気軽にマー君か腐男子一号と呼ぶ事を許そう」

バシバシ叩いていた方の手を避け、逆に握って握手してやれば、武闘家は一瞬目を見開いてからニヤリと不穏な笑みで握り返して来た。

「やるじゃねえか。マー君か、こりゃ楽しみな仲間が増えたぜ」

うん?血管浮き出る程握り返してきて、そんなに我が仲間になるのが嬉しいのか。よし良い子良い子してやろう。
その短いツンツンとした頭に手を伸ばしたが、手が届く前に阻まれた。

「おい。こいつは魔王と名乗ったのだぞ。何故そんなに悠長に構えている」

勇者である。しっかり我の手首を抑えている。正直これ位無視して手を伸ばせるが、もしやこれは勇者の嫉妬かと思うと手も足も出せぬ。
しかし勇者よ。武闘家の相手は魔導士であるぞ。噛ませ犬は他に任せよ。巫女とか適任ではないか。
とうむうむしてたら目を細めて睨まれた。

「お」
「マオーだろ?ちゃんと聞いてたって。俺そんなに耳悪くねえぞ」

何か言おうとした勇者だったが、その前に心外だという顔で口を尖らせる武闘家が頓珍漢な事を言って遮ってしまった。一度ならず二度までも。貴様さてはお馬鹿ワンコ系だな?
大好物ですありがとうございます!

という訳で。武闘家の勘違いと人の話を聞かないトークで、起きて来た魔導士と巫女を巻き込んだ末に勇者一行に我が仲間に加わった!
身近でBL見れて我感無量である!
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