我は最凶の魔王にして腐男子なり!

無月

文字の大きさ
上 下
3 / 9

腐男子だって心配するんだお

しおりを挟む
ぐぅ!我をここまで苦しめ追い詰めるとは!
今代の勇者はやりおる!

「それじゃ後はよろしくー」
「ああ。ゆっくり休めよ」

じゃなーい!君今日で三日目よ!?三日も寝ずの番よ!?さっむーぅい砂漠のど真ん中で!
焚火はあっても心は寒いでしょ!特に勇者で掛け算出来ない我の心が!

しかして武闘家×魔導士の邪魔は腐男子として出来ぬ。ならどうするか。

「すみません。我……余……あー、じゃなくて私も良いでしょうか。休む場所を探していたら火が見えたもので」

新たな仲間の気配がしない今。我しかいないでしょう。
てことで人間に変装中だお。我の魔法は完璧。今までのオフ会でもサイン会でも新刊発売で開店前から並んでいた時も我を疑った者などいないのだ。

「そうか。構わない」

ほらな。我は最強にして

「ここを墓場とするんだな。魔王」

まおー!!?

「なっ何で……いや。チガウヨ。我はマオーじゃナイヨ」

ぴゅーぴーと口笛で誤魔化そう。

「へたくそか」

チャキリと剣を抜く勇者VS冷や汗の我。
ファイ!
じゃなーい!

「何故分かった勇者よ!」

バッと飛び退り距離を取っとこーね。うっかり魔法爆発させたら武闘家×魔導士ぶとまど起きちゃうからね。

「こんな砂漠のど真ん中で突如気配を現す輩は盗賊か魔王と相場が決まっている」

しまったー!我の完璧すぎる気配遮断が仇になった!
後悔しても覆水は盆に返らない。
ならば我が出来る事は限られている。

「寝込みを襲うつもりだったようだが」
「バレてしまっては仕方がない!三日も寝ずの番はお肌にも健康的なBL活動にも毒であるから良く食べ良く寝て良く起っきするのだ勇者よ!」
「は?」

あれ?勇者何か言ってたな。我遮っちゃった。折角の推し攻め(受けでも良いよ!)のセリフなのに。
あ。あ。勇者ポカンてしちゃってるじゃん!我失態!

「すまぬ勇者よ。ちゃんと聞いてなかったからもう一度言ってくれないか」

ワンチャンありかなって思って人差し指と人差し指をツンツンさせて聞いてみる。
眉間に皺寄ったよね!わかる!
話を聞いてなかった我がいけないのだ。無念。

「……百歩……じゃ足らないが譲るとして、びーえるって何の事だ」

おっとBL知らない勢だった。今やこんなにもメジャーなのに。まだまだ認知度は低いのかなぁ。キョーコ先生の薄いのに分厚い本で布教してみようか。

「えーっと。BLは男の子同士が愛し合う尊いものです」

ささっと我一押しのエチチなシーンを開いて見せてみる。
バッサー!と一刀のも元に本を切られそうになったよね!避けたけど!

「ちょ!止めよ勇者!布教用とはいえ尊い先生の大事な本だぞ!?傷付いたらどうしてくれるのだっ!」
「切り捨てようとしたんだが」
「もっとダメー!」

さらに踏み込む姿勢で剣を構える勇者に掌を突き出して制止を促す。

「何にハマっているんだ魔王」
「ちょ。語弊がある言い方止めてよね。我は覗き……見守るのが趣味であって我自身はそうなりたいって思ってないんだからねっ」

勇者の気温と気圧が一下がった!
吹き抜ける体感ブリザードに我とした事が足ガクブルよ。

「そうか。貴様は魔王だったな。人間の常識で当てはめようとした俺が阿呆だった」

チャキリと柄を握りなおす勇者。
見据えられる我。

「死ね」

切りかかる勇者。

「勇者のカップル成立見届けるまで死ねぬ!」

寸前で勇者を闇の触手で絡め取り動きを封じる我。

「貴様俺で妄想してたのかっ!」

いきり立つ勇者。

「妄想って言葉は知ってたのか」

冷静に突っ込む我。
勇者は言葉に詰まった。
うむ。我の勝ち!

「じゃあバレちゃったら隠してても仕様がないし。勇者が運命の番と結ばれるように堂々と側で応援してやろうぞ」
「止めろー!!」

砂漠の冷えた夜に、勇者の熱い叫びが響き渡るのであった。

うむ。これはこれでまた良し!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ひきこもぐりん

まつぼっくり
BL
地下の部屋に引きこもっているあほかわいい腐男子のもぐらくんが異世界に部屋ごと転移しました。 え、つがい? うーん…この設定は好きなんだよなぁ。 自分にふりかかるとは…壁になって眺めていたい。 副隊長(綺麗な烏の獣人)×もぐらくん(暗いとこと地下が好き) 他サイトにも掲載中 18話完結

BLゲームの世界に転生したらモブだった

ミクリ21 (新)
BL
BLゲームの世界にモブ転生したら、受けのはずの主人公ががっつり雄の攻めになっていて、何故か恋人になることになった話。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

アリスの苦難

浅葱 花
BL
主人公、有栖川 紘(アリスガワ ヒロ) 彼は生徒会の庶務だった。 突然壊れた日常。 全校生徒からの繰り返される”制裁” それでも彼はその事実を受け入れた。 …自分は受けるべき人間だからと。

目の前で命を落として勇者を覚醒させる幼馴染のはずだった

中屋沙鳥
BL
幼馴染は勇者として覚醒したらしい。オウルベアに襲われて命を落とした僕の姿を見たのがきっかけで。それなのにこの世界を作った女神様は生き返って勇者を助けるようにと言ってくる。大切な幼馴染を助けるのはいいけどどういうこと?聖女様の魂が違うって何のこと?それともただの夢?/いつもの見切り発車です/残酷な表現があります/女性が出てきます/ムーンライト様にも投稿しています

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

真面目系委員長の同室は王道転校生⁉~王道受けの横で適度に巻き込まれて行きます~

シキ
BL
全寮制学園モノBL。 倉科誠は真面目で平凡な目立たない学級委員長だった。そう、だった。季節外れの王道転入生が来るまでは……。 倉科の通う私立藤咲学園は山奥に位置する全寮制男子高校だ。外界と隔絶されたそこでは美形生徒が信奉され、親衛隊が作られ、生徒会には俺様会長やクール系副会長が在籍する王道学園と呼ぶに相応しいであろう場所。そんな学園に一人の転入生がやってくる。破天荒な美少年の彼を中心に巻き起こる騒動に同室・同クラスな委員長も巻き込まれていき……? 真面目で平凡()な学級委員長が王道転入生くんに巻き込まれ何だかんだ総受けする青春系ラブストーリー。 一部固定CP(副会長×王道転入生)もいつつ、基本は主人公総受けです。 こちらは個人サイトで数年前に連載していて、途中だったお話です。 今度こそ完走させてあげたいと思いたってこちらで加筆修正して再連載させていただいています。 当時の企画で書いた番外編なども掲載させていただきますが、生暖かく見守ってください。

僕だけの番

五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。 その中の獣人族にだけ存在する番。 でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。 僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。 それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。 出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。 そのうえ、彼には恋人もいて……。 後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。

処理中です...