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本編
12歳-4
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現在俺はデイヴィッドとダンスを踊ってる。勿論俺が女パートだ。
男パートも出来るがダンスに興味はないからどっちでも良い。むしろダンスするなら鍛錬したい。
「うーわー。すっげー視線が刺さるんだけどー」
デイヴィッドに密着して華やかな作り笑顔で軽やかにステップ踏みながら囁いた。
デイヴィッドに密着すればする程、見つめ合えば見つめ合う程敵意の目が向けられる。
いや寧ろ殺気じゃね?親の仇かよって位睨んでんだけど。露骨すぎやしないか?
「僕達も学生になったからね。悠長にしてもいられなくなったんだろう」
俺の腰に回してる手で更に密着してくるデイヴィッド。ものっそい良い笑顔です。ハイ。
ていうか耳元で囁かんでも聞こえるわ!ほら見ろ、殺意煽ってんじゃねーか!
俺は背後の針の筵と前面の羊の皮を被った肉食獣との板挟みに若干震えた。
一曲終わってもデイヴィッドは放してくれない。お陰でそのまま二曲目に突入する事になった。
「まあまあ。煽るだけ煽った方が燻り出しやすいからね」
「わーっとるわ。くっそー」
敵視している貴族共を燻り出して実害がありそうなヤツから締め上げる。
その為に俺は必要以上にデイヴィッドと密着する事になってしまった。
くっそー。デイヴィッドめ、見かけに依らず良い筋肉作ってやがる。
三曲目が終わった所で一旦俺達は離れた。
俺は給仕からドリンクを受け取ってバルコニーに行く。勿論一人だ。
バルコニーの死角になってるとこで涼んでると、おっさんがやって来た。
「おや。お一人ですかな」
おっさんって言っても20代後半だ。でも現状12歳の俺からしたらおっさんでいいだろ。
鼻の下伸ばしたおっさんが酒の匂いさせて近寄ってくる。
いや、まあ。客観的に見たら貴族でそこそこ顔は良いと思うが……。
穿った見方しちまうのって、やっぱさっきの殺気に当てられたのかね。俺も。
「聞こえていませんかな?お嬢さんに言っているのですぞ」
おっと、ついうっかり思考の淵に行っちまった。
「あら、申し訳ございませんわ。私の様な子供が声を掛けられるとは思いませんでしたの」
そしてお宅も俺の本来の性別知らない組でしたのね。お陰でついうっかり殺意の籠った目で見てしまう所でしたわ。
心の中までお嬢バージョンで悪態付きつつ、おっさんにニコリと笑い掛ける。
「これはこれは、とても素敵なレディですよ。声もハスキーで心地好い」
うっわー。キモイ!鳥肌立つ!そしてキモイ!
内心罵詈雑言の嵐だが、侯爵子息足るものそんな事で顔には出さん。
俺は清楚に微笑みつつ「お上手です事」と言って歪みそうな口を手でそっと隠した。
「先程は随分仲睦まじく踊っておられましたが、可憐なレディを一人置いて行くなど……。
私なら貴女の様に美しい方を片時も離しはしないのですがね」
うん。だからキモイ。
さもデイヴィッドが酷い男の様に言ってるのがキモイ。
自分は違うとアピールするのがキモイ。
ていうかストーカー予備軍かよ。
「マア、ステキデスワ」
片言になっても何とか微笑んだ。
「ところでミ・ロードはどうしてこちらへ?」
「おや、私が誰かご存知ですかな?」
「ええ。とても(女遊びで悪い噂が)有名ですもの」
コロコロと笑って言えばおっさんは満更でも無かったのか、尊大な態度で照れた。キモイ。
このおっさん、僻地に領土を構えてるせいか都内の噂に疎くて愚鈍で変態なんだよなー。
「それで先程の質問ですけれど」
「ああ、そうだったね。
先程貴方が一人寂しそうにしていると親切にも教えてくれた者がいてね」
「まあ、そうでしたの。その親切な方はどなたですの?」
大仰な手振りで答える程の事でも無いだろうがよ。おっさんがキモイ。
「嫌だなぁ。貴女と話しているのは私だよ?
他の男の事は今は良いじゃないか」
っち。キモイだけじゃなくて、ウザいな。キモウザ!
おっさんはジリジリと間合いを詰めて来てる。うわあああキモイキモイキモイっ。
俺は悪寒を全力で宥めて笑顔を張り付ける。
「あら、親切な方は殿方ですのね?」
更に突っ込んで聞くとおっさんは顔を逸らして「っち」と一瞬顔を顰めた。
やんなら見えないトコでやれっつーのな。
「はっはっは。相手はカマドゥラ子爵だよ。
貴方の様な高貴な身分の者が気にする必要はないさ」
そう言っておっさんはその手を俺に伸ばして来た。
……ゴメン。キモ過ぎ。もう無理耐えらんない。
「ふへ?」
俺はその手を取って綺麗に投げ飛ばした。おっさんに触れるのを極力最小限に抑えながら。
間抜けな声で地面とキッスをかましたおっさんは、良い笑顔でやって来たデイヴィッドに踏まれた。
うん。そんな汚い顔踏んでグリグリしてたら、自分の足が汚れるぞー。
そうは思うが今デイヴィッドに触れたら部屋までお持ち帰りされそうだから遠い目しとく。
男パートも出来るがダンスに興味はないからどっちでも良い。むしろダンスするなら鍛錬したい。
「うーわー。すっげー視線が刺さるんだけどー」
デイヴィッドに密着して華やかな作り笑顔で軽やかにステップ踏みながら囁いた。
デイヴィッドに密着すればする程、見つめ合えば見つめ合う程敵意の目が向けられる。
いや寧ろ殺気じゃね?親の仇かよって位睨んでんだけど。露骨すぎやしないか?
「僕達も学生になったからね。悠長にしてもいられなくなったんだろう」
俺の腰に回してる手で更に密着してくるデイヴィッド。ものっそい良い笑顔です。ハイ。
ていうか耳元で囁かんでも聞こえるわ!ほら見ろ、殺意煽ってんじゃねーか!
俺は背後の針の筵と前面の羊の皮を被った肉食獣との板挟みに若干震えた。
一曲終わってもデイヴィッドは放してくれない。お陰でそのまま二曲目に突入する事になった。
「まあまあ。煽るだけ煽った方が燻り出しやすいからね」
「わーっとるわ。くっそー」
敵視している貴族共を燻り出して実害がありそうなヤツから締め上げる。
その為に俺は必要以上にデイヴィッドと密着する事になってしまった。
くっそー。デイヴィッドめ、見かけに依らず良い筋肉作ってやがる。
三曲目が終わった所で一旦俺達は離れた。
俺は給仕からドリンクを受け取ってバルコニーに行く。勿論一人だ。
バルコニーの死角になってるとこで涼んでると、おっさんがやって来た。
「おや。お一人ですかな」
おっさんって言っても20代後半だ。でも現状12歳の俺からしたらおっさんでいいだろ。
鼻の下伸ばしたおっさんが酒の匂いさせて近寄ってくる。
いや、まあ。客観的に見たら貴族でそこそこ顔は良いと思うが……。
穿った見方しちまうのって、やっぱさっきの殺気に当てられたのかね。俺も。
「聞こえていませんかな?お嬢さんに言っているのですぞ」
おっと、ついうっかり思考の淵に行っちまった。
「あら、申し訳ございませんわ。私の様な子供が声を掛けられるとは思いませんでしたの」
そしてお宅も俺の本来の性別知らない組でしたのね。お陰でついうっかり殺意の籠った目で見てしまう所でしたわ。
心の中までお嬢バージョンで悪態付きつつ、おっさんにニコリと笑い掛ける。
「これはこれは、とても素敵なレディですよ。声もハスキーで心地好い」
うっわー。キモイ!鳥肌立つ!そしてキモイ!
内心罵詈雑言の嵐だが、侯爵子息足るものそんな事で顔には出さん。
俺は清楚に微笑みつつ「お上手です事」と言って歪みそうな口を手でそっと隠した。
「先程は随分仲睦まじく踊っておられましたが、可憐なレディを一人置いて行くなど……。
私なら貴女の様に美しい方を片時も離しはしないのですがね」
うん。だからキモイ。
さもデイヴィッドが酷い男の様に言ってるのがキモイ。
自分は違うとアピールするのがキモイ。
ていうかストーカー予備軍かよ。
「マア、ステキデスワ」
片言になっても何とか微笑んだ。
「ところでミ・ロードはどうしてこちらへ?」
「おや、私が誰かご存知ですかな?」
「ええ。とても(女遊びで悪い噂が)有名ですもの」
コロコロと笑って言えばおっさんは満更でも無かったのか、尊大な態度で照れた。キモイ。
このおっさん、僻地に領土を構えてるせいか都内の噂に疎くて愚鈍で変態なんだよなー。
「それで先程の質問ですけれど」
「ああ、そうだったね。
先程貴方が一人寂しそうにしていると親切にも教えてくれた者がいてね」
「まあ、そうでしたの。その親切な方はどなたですの?」
大仰な手振りで答える程の事でも無いだろうがよ。おっさんがキモイ。
「嫌だなぁ。貴女と話しているのは私だよ?
他の男の事は今は良いじゃないか」
っち。キモイだけじゃなくて、ウザいな。キモウザ!
おっさんはジリジリと間合いを詰めて来てる。うわあああキモイキモイキモイっ。
俺は悪寒を全力で宥めて笑顔を張り付ける。
「あら、親切な方は殿方ですのね?」
更に突っ込んで聞くとおっさんは顔を逸らして「っち」と一瞬顔を顰めた。
やんなら見えないトコでやれっつーのな。
「はっはっは。相手はカマドゥラ子爵だよ。
貴方の様な高貴な身分の者が気にする必要はないさ」
そう言っておっさんはその手を俺に伸ばして来た。
……ゴメン。キモ過ぎ。もう無理耐えらんない。
「ふへ?」
俺はその手を取って綺麗に投げ飛ばした。おっさんに触れるのを極力最小限に抑えながら。
間抜けな声で地面とキッスをかましたおっさんは、良い笑顔でやって来たデイヴィッドに踏まれた。
うん。そんな汚い顔踏んでグリグリしてたら、自分の足が汚れるぞー。
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