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後章

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 旅行前夜、セバス達に手伝って貰いながらも準備が終わった俺達。ほっと息を吐いてメイドが用意してくれた茶器でお茶を入れた。今日はよく眠れる様にカモミールちゃんとラベンダーちゃん、それにいくつかをブレンドしたハーブティ。
 使うのは高価そうな茶器類。初めは落として割ったらどうしようって思って怖かったな。けどアクセルは壊れても代わりが幾らであるっていうし、メイドの皆も寧ろどんどん割って新しいの買って経済回すのが余裕のある人の務めだって言うから苦笑も漏れたもんだ。成程、今の俺は余裕のある人達に分類されるようになったんだと。

 「ありがとうユタ」

 俺から受け取ったアクセルはふっと目を細めて笑みを見せた。

 「どういたしまして」

 俺も笑って返す。
 アクセルが口に付けて「美味い」と言葉を漏らした。その時の気の抜けた笑みが俺は好きだ。

 「今日は我の分まで采配してくれてたそうだな」

 ゆっくり味わってお替りを入れる頃合いでアクセルが言った。俺は空になったカップを受け取ってニッコリと返した。

 「今日は特に忙しそうだったからな」
 「それはユタとて同じであったろう」
 「俺はもう引き継ぎ終わってたし、今日から授業も休みだったから平気。アクセルこそ疲れてない?」
 「っふ、ユタの顔を見れば満身創痍であっても元気になる」

 お替りを入れたカップをアクセルに返した俺は呆気に取られてキョトンとした。そして直ぐに噴き出して笑った。

 「ぷはっ、何だよそれっ。はははっ、俺って万能薬なの?」
 「我にとってはどんな薬より良く効く」

 けらけら笑う俺に反して、アクセルはどこまでも穏やかな笑みを湛えて俺の頬を撫でた。その触り方が弱くゾクリと反応する触り方で、毎晩のセックスに体が慣れてしまった俺の下半身は易々と反応してしまった。

 「ん……。アクセル……?」

 さわさわと撫でる気持ちの良い手に、俺からも頬を寄せて擦り寄る。

 「うん?」

 そういう流れかと思っていたのに、アクセルはただただ俺の顔を触れるか触れないかの絶妙な匙加減で撫でている。なんか……、もどかしい……。

 「今日……しないの?」

 ついつい俺から上目遣いで聞いてしまう。目が潤んできていて少しアクセルの輪郭がぼやける。

 「しても良いのか?」

 さっきより幾分はっきりと手の平全体で俺の頬を包んで言うその口は、若干口角が上がっていた。その意味に気付いた俺はカッと熱が上がった。
 俺から言わせる気だな!?

 「ユタは可愛いな」
 「そんなん言うのアクセルだけだよ……」

 俺を撫でる手と逆の手で自分の顎を触れつつ下唇に指を添える姿にドキリとする。なんかエロい。でも目は逸らさない。ここで逸らしたら悔しいしな。
 さわさわ、さわさわ。撫でられる度に感じる声を喉の奥で抑え込む。

 「う……うぅ……」

 ダメだ。連日連夜アクセルにイかされ続けた体は素直に求めてしまっている。

 「アクセル……」
 「うん?」

 ああ!もう!

 「しよ?」

 体の疼きに我慢出来なくなった俺は、自ら近寄ってアクセルの膝に乗って唇を合わせた。
 素直に言った後のアクセルの行動も素直だった。合わせた唇をアクセルの方から深くしてきて、膝に乗った俺を抱え上げるとそのままベッドに縫い付けた。
 俺の体は背にベッドの感触が伝わった事でこれからの情事を連想させて熱く、息が上がってくる。

 「ん、ん、っふ、ん」

 密着させたガウン越しに伝わる熱。求めるキスは深く、激しいのに、アクセルの手は俺の腰と頬に触れたまま動いてくれない。
 触れて欲しいのに触れてくれないのは、辛い。

 「んんぅ……あくせ……る……ふれてほし……」

 何とかアクセルの胸を押して唇が離れた俺は、アクセルを見上げて懇願した。目が熱く、膜が張ったみたいにアクセルが水に輝いて見えるから、多分今潤んでる。ちょっと恰好悪いなと思うけど、それ以上に今はアクセルに触れて欲しくて。
 期待に「はくっ」と若干の呼吸が乱れた瞬間、アクセルの喉がゴクリと上下した。

 「ユタ……!そのように煽ってからに……!」

 欲望に塗れた野獣の目になったアクセル。吐き捨てる様言うと俺が欲しかったものをくれた。

 「あぁっ……!あくせるぅ、きもちい……」

 ガウンをはだけさせ、冷たく外気に触れた地肌にアクセルの熱が直接浸透していく。
 アクセルに弄られた胸は、歓喜に打ち震え、頂をピンと立たせてる。

 「ユタも、我に触れてくれ」
 「ん、んあ、ぅん、ん、ぅあ」

 ペロリと唇を舐めたアクセルが月明かりに照らされてやたら色っぽい。
 俺ははち切れそうな心臓を宥めることなく頷くと、アクセルのガウンの隙間に手を入れた。
 俺はアクセルのこの厚い胸板が好きだ。触れていると安心する。
 胸から手を下げていくと、綺麗に割れた腹筋が俺を魅了する。

 「あくせるの、きんにく、ぁ、んんっ、っふぁかっこ、いい」

 俺が堪能している間もアクセルの手は俺の良い所を刺激していて、肩が跳ねる度に手が離れてしまう。でももっと触れていたいから直ぐにまた手を伸ばすんだけど。

 「ね、おれも、あくせるのむねに、ちゅーしたい」

 また胸に手を戻して言うと、アクセルはフッと微笑み俺の頭上にキスをした。お陰で目の前にきた魅力的な胸筋に強く吸い付く。いつもは俺が跡を残されるばかりだからな。今日は俺の所有印をいっぱい残……せない……。防御力硬すぎてうっ血出来ないって有りかよ!?

 「う゛~~~」

 不満アリアリに唸り声をあげる俺に、頭上から苦笑が漏れる音がする。
 アクセルばっか狡いと腹を立てた俺は腹いせに思いっきり乳首の横を噛み付いてやった。乳首は、ほら、痛そうだし。でも噛み付きでさえ痛かったのは俺だけだった。

 「ふむ。愛しい者からの印を貰えぬのは寂しいな……。どれ」

 言うなりアクセルが俺に魔法を掛けた。途端に湧き上がるエネルギー、これって。

 「強化魔法?」
 「これでユタからの執着の証を貰える」

 つまり、今なら跡を付け放題……。
 願ったり叶ったりの状態に、俺はニヤリと口角を上げる。そして同じ場所に噛み付いた。

 「……っ」

 アクセルは痛がりはしなかったけど強い刺激はあったみたいだ。喉から漏れる喘ぎが色っぽい。
 気を良くした俺は、アクセルにそれ以上の快楽を与えられてなお、その体に印を刻んでいったのだった。
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