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前章

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 何がどうしてこうなった。

 「落ち着け。落ち着こう。取り敢えずその手をゆっくり放そうか、テン」

 今朝も何時もの如く抱き枕にされた状態で目が覚めた俺は、眉間に落とされたキスを最早諦めの境地で受け入れていた。
 その後朝食前の野菜ちゃん達のお世話と収穫をして、朝採れ野菜ちゃんをふんだんに使った朝食を三人で食べた。
 確かにその時からテンの様子はおかしかった。とにかく血走って瞬きすらしていない目が怖かった。

 「良いじゃん。別に妊娠する訳じゃないんだし」

 警戒はしていたけど、まさか魔王と離れて死角に入った隙にこんな行動に出るなんて。
 普通思わない。男同士じゃ思わない。っていうか昨日の様子じゃ同性愛には理解ないタイプっぽかっただろう!?

 「そういう問題じゃない!」

 それがなんで俺を押し倒してんの!?
 物陰に入った俺を、何処から現れたのかテンが目にも止まらぬスピードで森の奥地に連れ込んだ。
 口を塞がれた俺は叫ぶことも出来なかった。
 草木に視界が遮られる中、テンは「お前ってそんなに具合良いの?」とか訳のわからない事を口走って俺を地面に縫い付けた。
 手は頭上に一纏めにされて片手で抑えられた。足は両方ともテンの足で抑えられている。元々力で敵わないのに体重も載せられて身動きが取れない。

 「魔王とはシテるんだろうが。なら俺の相手もしたって一緒だろ」

 はあ!?
 何言ってんだこのバカは!確かに同じベッドに魔王が無理矢理入ってくる話はしたけど。どうやったらそんな飛躍した勘違いが出来るんだ??
 現状口しか自由に抗議出来ないけど、非力なりに手足を動かしたり腹を捩ったりと抵抗を試みるのは忘れない。
 魔王同様無駄にレベル高過ぎてビクともしないけどな!ドチクショウ!!
 俺の必死の抵抗を他所に、テンは空いている手を俺の服に突っ込んできた。
 魔王と違い無遠慮な触り方に怖気が走る。
 テンのごつごつした手で腹を撫で上げられ、無い胸を無理矢理揉みしだかれた。普通に痛い。

 「っち。やっぱ触り心地良く無ぇじゃん」
 「当たり前だっ、俺は男だぞ!?そんなに柔いおっぱい揉みたきゃ女の子の恋人作れ!」

 ドヨンと嫌そうな顔で口をへの字に曲げるな。無理矢理されてる俺のが嫌だ。
 嫌な顔に同様の嫌な顔で返すがこっちの事情を全く意に返す素振りすら見せない。わかっていたけど転生者って奴は我が道を行く奴バッカかよ!

 「俺だって女の子いたら男なんぞに手を出す訳無いだろ。昨日の戦闘で昂ってんのに抱けそうなのがユタしかいないんだからしょーがないって」
 「自家発電で良いだろうがっ!」
 「え?俺が?勇者なのに?有り得ない」

 現実を見ていない怖い目に、俺の恐怖心が息を止めようとする。
 テンは「まあ後だけ見る分には男でも一緒か」とか言って俺をひっくり返して腰だけ上げた体勢にした。
 俺の警戒心がMAXで警鐘を打ち鳴らす。
 魔王の時も嫌だったけどこんなに気持ち悪い思いしなかった。震える恐怖は感じなかった。
 どんなに手を出しても、魔王は本気で嫌がる俺に最後まではしなかった。
 魔王なのに。俺の事を慮ってくれた。
 テンは転生勇者と言っても同じ人間の筈なのに。今、俺の意思を理解しようともしていない。

 「こ、これ以上したらもうご飯作らないぞ!?」

 奥歯がカチカチ言うけど勇気を振り絞って脅しをかけた。

 「大丈夫。全てが終われば俺にも喜んで股を開くさ」

 !!?!?
 理解が出来ない。
 この行動も。その思考も。言葉の通じない化け物を相手にしている様だ。
 頭を押さえられて顔は見れない。それでもテンが舌なめずりをしたのがわかった。
 テンの荒い呼吸を聞く度にゾワゾワとする。
 テンの指が俺の尻を割り、そこに気持ち悪い生暖かいモノをあてがわれ……。

 そこが俺の限界だった。

 「っや、や、やだああああ!!魔王―――――!!!!」

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