19 / 73
前章
19
しおりを挟む
◇魔王サイド◇
ユタを今すぐ押し倒したい。
欲求は燻り、我を忘れさせようとする。
「ユタ……」
唇を寄せれば大きく開き潤む瞳と視線が重なる。
「ま、魔王っ、待っ」
ユタの言葉を最後まで聞く余裕は無かった。
口を開いた所で唇を重ねる。反射で閉じようとする前に舌を捻り込めば我の舌を甘噛みされる。
「んっ!ん~っ!」
ゾクリと感じる本能のままに貪れば、抵抗は無くなり、何時もの様に我の胸に縋り付いてきた。
「ん……はぁ、ぁ、ぅちゅ……ぅ」
このまま空中でするのも良いな。
「魔―――王―――!!」
そう思った矢先に海より猛スピードで突進してくる気配に邪魔をされた。
っち。邪魔だがユタに可愛くおねだりされてしまったからな。
だが折角の可愛いユタを可愛がる時間を阻害される気は無い。直ぐさま島に結界を張り巡らせて防いでやった。
ズドゴム!!
直後に響く衝突の音。
チラリと視線だけ寄越せば丁度転生勇者が轢き潰されたカエルの格好をしていた。
くははははっ。ザマァないな。
ズリリと結界に沿って落ち行く姿が見れたのでユタに意識を戻した。
ドゴム!!
だがそれを又しても転生勇者に邪魔された。
っち。くたばっていなかったか。本当に無駄に頑丈だな。
流石に響く大音量に、ユタもワタワタと抵抗を再会してしまった。
「む~っ!む~っ!」
現在進行形で口を吸い続けているから言葉は無いが、代わりにポテポテと我の腕を叩きよる。クソ可愛いか。
ユタは我をどうしたいのだ。そんなに可愛らしく誘っておきながら抵抗する。
我とて王である前に一人の男だ。我慢にも限界というものがある。
キスだけで我慢しようと思っていたが、我の腕は正直にユタの肌を弄りだした。
「む!?むぅ―――!!」
ポテポテ、ポテポテ。ユタが我を叩いて誘惑する。
我は興が乗ってきて、手はユタの小さな尖を見つけだした。
ズドゴン!!バリーン!!
さあ、ここからだ。という時に我の張った結界が破壊されてしまった。
「っち」
仕方なくユタを愛でるのを止めて、向かってくる転生勇者に極大魔法をお見舞いさせてやるべく構築を開始した。
向こうも同じく極大魔法を構築する。
ふんっ、あの程度の魔法で魔の根元たる我を凌ぐなど出来ぬわ。
ニヤリと笑みを深め、さあ放とうとした時。
「二人とも止めないとご飯抜き」
据わった目で今迄に無い迫力のユタが無情の一言を発した。
ご飯抜き。
あの味を知ってしまった後での、ご飯抜き。
なんと無情の一言であろうか。
しかもブルブルと震えて少し涙目のユタを察するに、ことと次第によっては「一生ユタの手作り」ご飯抜きになってしまう。
我にはそれはとても怖ろしい呪文に聞こえた。
「すまぬ。止める。ご飯抜きは止めてくれ」
素直に魔法を消した我に対して、しかし転生勇者は止める気配も無い。寧ろ好機だとばかりに嫌な笑い方をしている。
我はせめて島に被害がでない様に上空高く飛び上がり、ユタに結界を幾重にも張り巡らせた。我一人なら死なんがユタはそうも行かないからな。
「はーはっはっはっは!北の魔王もその程度……!」
「そこの転生勇者も此処が秘島だと知っててやってるのか。そんなものぶっ放したら島が無くなるけど一生ご飯無くてもいいんだな?次いでに聞くがお前は料理が出来るのか?」
ほぼノンブレスで言うユタが怖い。
我は生まれて初めて恐怖を体験した。
どうやらそれは転生勇者も同じらしい。極大魔法を放つ寸前の間抜けな格好で時を止めた。
ツゥーと冷や汗を流したかと思えば不自然に視線を泳がし始め、改めて今いる場所の把握をした様だ。ドッと滝の様な汗を掻いたと思えば、あの時の我と同じく転移魔法の発動を幾度となく試みた。
「バカな!?」
そして出来ないと知ると大袈裟に狼狽る。
なんとも間抜けな姿だ。
我は高笑いをしたかったが、腕の中のユタが怖くて彫像と化すに徹している。
「料理。出来るのか?」
駄目押しに繰り返されたユタの言葉。
転生勇者はたじろいだが、まだ諦め切れない様子だ。
「で……。出来なくは、無くも無い」
それはほぼ出来ないのではないか?
疑問は擡げるが今の我はユタの為の台座にすぎん。素面を維持するに徹する。
「農業した事あるのか?野菜ちゃん達は植えれば実がなる訳じゃない。キチンとお世話をして初めて美味しい実をたわわに実らせてくれるんだ。材料無しに料理が出来るのか?」
ああ。ユタの怒りが腕から伝わる。
今では我もユタの野菜に掛ける愛情の深さを知っている。だからこそ極大魔法を同時に放たれそうになり、ブチ切れたのだろう。確実に島ごと消え去る未来を見て。
転生勇者はチラリと足下を見下ろした。そこにはユタが丹精込めて耕した田畑が広がっている。
「すみません無理ですごめんなさい」
こうして転生勇者も漸く降参の旗印を掲げた。
ユタを今すぐ押し倒したい。
欲求は燻り、我を忘れさせようとする。
「ユタ……」
唇を寄せれば大きく開き潤む瞳と視線が重なる。
「ま、魔王っ、待っ」
ユタの言葉を最後まで聞く余裕は無かった。
口を開いた所で唇を重ねる。反射で閉じようとする前に舌を捻り込めば我の舌を甘噛みされる。
「んっ!ん~っ!」
ゾクリと感じる本能のままに貪れば、抵抗は無くなり、何時もの様に我の胸に縋り付いてきた。
「ん……はぁ、ぁ、ぅちゅ……ぅ」
このまま空中でするのも良いな。
「魔―――王―――!!」
そう思った矢先に海より猛スピードで突進してくる気配に邪魔をされた。
っち。邪魔だがユタに可愛くおねだりされてしまったからな。
だが折角の可愛いユタを可愛がる時間を阻害される気は無い。直ぐさま島に結界を張り巡らせて防いでやった。
ズドゴム!!
直後に響く衝突の音。
チラリと視線だけ寄越せば丁度転生勇者が轢き潰されたカエルの格好をしていた。
くははははっ。ザマァないな。
ズリリと結界に沿って落ち行く姿が見れたのでユタに意識を戻した。
ドゴム!!
だがそれを又しても転生勇者に邪魔された。
っち。くたばっていなかったか。本当に無駄に頑丈だな。
流石に響く大音量に、ユタもワタワタと抵抗を再会してしまった。
「む~っ!む~っ!」
現在進行形で口を吸い続けているから言葉は無いが、代わりにポテポテと我の腕を叩きよる。クソ可愛いか。
ユタは我をどうしたいのだ。そんなに可愛らしく誘っておきながら抵抗する。
我とて王である前に一人の男だ。我慢にも限界というものがある。
キスだけで我慢しようと思っていたが、我の腕は正直にユタの肌を弄りだした。
「む!?むぅ―――!!」
ポテポテ、ポテポテ。ユタが我を叩いて誘惑する。
我は興が乗ってきて、手はユタの小さな尖を見つけだした。
ズドゴン!!バリーン!!
さあ、ここからだ。という時に我の張った結界が破壊されてしまった。
「っち」
仕方なくユタを愛でるのを止めて、向かってくる転生勇者に極大魔法をお見舞いさせてやるべく構築を開始した。
向こうも同じく極大魔法を構築する。
ふんっ、あの程度の魔法で魔の根元たる我を凌ぐなど出来ぬわ。
ニヤリと笑みを深め、さあ放とうとした時。
「二人とも止めないとご飯抜き」
据わった目で今迄に無い迫力のユタが無情の一言を発した。
ご飯抜き。
あの味を知ってしまった後での、ご飯抜き。
なんと無情の一言であろうか。
しかもブルブルと震えて少し涙目のユタを察するに、ことと次第によっては「一生ユタの手作り」ご飯抜きになってしまう。
我にはそれはとても怖ろしい呪文に聞こえた。
「すまぬ。止める。ご飯抜きは止めてくれ」
素直に魔法を消した我に対して、しかし転生勇者は止める気配も無い。寧ろ好機だとばかりに嫌な笑い方をしている。
我はせめて島に被害がでない様に上空高く飛び上がり、ユタに結界を幾重にも張り巡らせた。我一人なら死なんがユタはそうも行かないからな。
「はーはっはっはっは!北の魔王もその程度……!」
「そこの転生勇者も此処が秘島だと知っててやってるのか。そんなものぶっ放したら島が無くなるけど一生ご飯無くてもいいんだな?次いでに聞くがお前は料理が出来るのか?」
ほぼノンブレスで言うユタが怖い。
我は生まれて初めて恐怖を体験した。
どうやらそれは転生勇者も同じらしい。極大魔法を放つ寸前の間抜けな格好で時を止めた。
ツゥーと冷や汗を流したかと思えば不自然に視線を泳がし始め、改めて今いる場所の把握をした様だ。ドッと滝の様な汗を掻いたと思えば、あの時の我と同じく転移魔法の発動を幾度となく試みた。
「バカな!?」
そして出来ないと知ると大袈裟に狼狽る。
なんとも間抜けな姿だ。
我は高笑いをしたかったが、腕の中のユタが怖くて彫像と化すに徹している。
「料理。出来るのか?」
駄目押しに繰り返されたユタの言葉。
転生勇者はたじろいだが、まだ諦め切れない様子だ。
「で……。出来なくは、無くも無い」
それはほぼ出来ないのではないか?
疑問は擡げるが今の我はユタの為の台座にすぎん。素面を維持するに徹する。
「農業した事あるのか?野菜ちゃん達は植えれば実がなる訳じゃない。キチンとお世話をして初めて美味しい実をたわわに実らせてくれるんだ。材料無しに料理が出来るのか?」
ああ。ユタの怒りが腕から伝わる。
今では我もユタの野菜に掛ける愛情の深さを知っている。だからこそ極大魔法を同時に放たれそうになり、ブチ切れたのだろう。確実に島ごと消え去る未来を見て。
転生勇者はチラリと足下を見下ろした。そこにはユタが丹精込めて耕した田畑が広がっている。
「すみません無理ですごめんなさい」
こうして転生勇者も漸く降参の旗印を掲げた。
0
お気に入りに追加
133
あなたにおすすめの小説
イケメン御曹司、地味子へのストーカー始めました 〜マイナス余命1日〜
和泉杏咲
恋愛
表紙イラストは「帳カオル」様に描いていただきました……!眼福です(´ω`)
https://twitter.com/tobari_kaoru
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私は間も無く死ぬ。だから、彼に別れを告げたいのだ。それなのに……
なぜ、私だけがこんな目に遭うのか。
なぜ、私だけにこんなに執着するのか。
私は間も無く死んでしまう。
どうか、私のことは忘れて……。
だから私は、あえて言うの。
バイバイって。
死を覚悟した少女と、彼女を一途(?)に追いかけた少年の追いかけっこの終わりの始まりのお話。
<登場人物>
矢部雪穂:ガリ勉してエリート中学校に入学した努力少女。小説家志望
悠木 清:雪穂のクラスメイト。金持ち&ギフテッドと呼ばれるほどの天才奇人イケメン御曹司
山田:清に仕えるスーパー執事
【完結】王子の婚約者をやめて厄介者同士で婚約するんで、そっちはそっちでやってくれ
天冨七緒
BL
頭に強い衝撃を受けた瞬間、前世の記憶が甦ったのか転生したのか今現在異世界にいる。
俺が王子の婚約者?
隣に他の男の肩を抱きながら宣言されても、俺お前の事覚えてねぇし。
てか、俺よりデカイ男抱く気はねぇし抱かれるなんて考えたことねぇから。
婚約は解消の方向で。
あっ、好みの奴みぃっけた。
えっ?俺とは犬猿の仲?
そんなもんは過去の話だろ?
俺と王子の仲の悪さに付け入って、王子の婚約者の座を狙ってた?
あんな浮気野郎はほっといて俺にしろよ。
BL大賞に応募したく急いでしまった為に荒い部分がありますが、ちょこちょこ直しながら公開していきます。
そういうシーンも早い段階でありますのでご注意ください。
同時に「王子を追いかけていた人に転生?ごめんなさい僕は違う人が気になってます」も公開してます、そちらもよろしくお願いします。
【BL】齢1200の龍王と精を吸わないオタ淫魔
三崎こはく
BL
人間と魔族が共存する国ドラキス王国。その国の頂に立つは、世にも珍しいドラゴンの血を引く王。そしてその王の一番の友人は…本と魔法に目がないオタク淫魔(男)!
友人関係の2人が、もどかしいくらいにゆっくりと距離を縮めていくお話。
【第1章 緋糸たぐる御伽姫】「俺は縁談など御免!」王様のワガママにより2週間限りの婚約者を演じることとなったオタ淫魔ゼータ。王様の傍でにこにこ笑っているだけの簡単なお仕事かと思いきや、どうも無視できない陰謀が渦巻いている様子…?
【第2章 無垢と笑えよサイコパス】 監禁有、流血有のドキドキ新婚旅行編
【第3章 埋もれるほどの花びらを君に】 ほのぼの短編
【第4章 十字架、銀弾、濡羽のはおり】 ゼータの貞操を狙う危険な男、登場
【第5章 荒城の夜半に龍が啼く】 悪意の渦巻く隣国の城へ
【第6章 安らかに眠れ、恐ろしくも美しい緋色の龍よ】 貴方の骸を探して旅に出る
【第7章 はないちもんめ】 あなたが欲しい
【第8章 終章】 短編詰め合わせ
※表紙イラストは岡保佐優様に描いていただきました♪
【完結・R18】28歳の俺は異世界で保育士の仕事引き受けましたが、何やらおかしな事になりそうです。
カヨワイさつき
BL
憧れの職業(保育士)の資格を取得し、目指すは認可の保育園での保育士!!現実は厳しく、居酒屋のバイトのツテで、念願の保育士になれたのだった。
無認可の24時間保育施設で夜勤担当の俺、朝の引き継ぎを終え帰宅途中に揉め事に巻き込まれ死亡?!
泣いてる赤ちゃんの声に目覚めると、なぜか馬車の中?!アレ、ここどこ?まさか異世界?
その赤ちゃんをあやしていると、キレイなお母さんに褒められ、目的地まで雇いたいと言われたので、即オッケーしたのだが……馬車が、ガケから落ちてしまった…?!これってまた、絶対絶命?
俺のピンチを救ってくれたのは……。
無自覚、不器用なイケメン総帥と平凡な俺との約束。流されやすい主人公の恋の行方は、ハッピーなのか?!
自作の"ショウドウ⁈異世界にさらわれちゃったよー!お兄さんは静かに眠りたい。"のカズミ編。
予告なしに、無意識、イチャラブ入ります。
第二章完結。
王子様のご帰還です
小都
BL
目が覚めたらそこは、知らない国だった。
平凡に日々を過ごし無事高校3年間を終えた翌日、何もかもが違う場所で目が覚めた。
そして言われる。「おかえりなさい、王子」と・・・。
何も知らない僕に皆が強引に王子と言い、迎えに来た強引な婚約者は・・・男!?
異世界転移 王子×王子・・・?
こちらは個人サイトからの再録になります。
十年以上前の作品をそのまま移してますので変だったらすみません。
転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!
梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。
あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。
突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。
何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……?
人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。
僕って最低最悪な王子じゃん!?
このままだと、破滅的未来しか残ってないし!
心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!?
これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!?
前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー!
騎士×王子の王道カップリングでお送りします。
第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。
本当にありがとうございます!!
※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。
釣った魚、逃した魚
円玉
BL
瘴気や魔獣の発生に対応するため定期的に行われる召喚の儀で、浄化と治癒の力を持つ神子として召喚された三倉貴史。
王の寵愛を受け後宮に迎え入れられたかに見えたが、後宮入りした後は「釣った魚」状態。
王には放置され、妃達には嫌がらせを受け、使用人達にも蔑ろにされる中、何とか穏便に後宮を去ろうとするが放置していながら縛り付けようとする王。
護衛騎士マクミランと共に逃亡計画を練る。
騎士×神子 攻目線
一見、神子が腹黒そうにみえるかもだけど、実際には全く悪くないです。
どうしても文字数が多くなってしまう癖が有るので『一話2500文字以下!』を目標にした練習作として書いてきたもの。
ムーンライト様でもアップしています。
姫を拐ったはずが勇者を拐ってしまった魔王
ミクリ21
BL
姫が拐われた!
……と思って慌てた皆は、姫が無事なのをみて安心する。
しかし、魔王は確かに誰かを拐っていった。
誰が拐われたのかを調べる皆。
一方魔王は?
「姫じゃなくて勇者なんだが」
「え?」
姫を拐ったはずが、勇者を拐ったのだった!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる