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恋人編
番外 少し未来のお話
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響也との交際は順調に進んでいる。
心配していた両親との顔合わせも、あまりの響也のイケメン振りに借りて来た猫の様だった。最初こそ孫が孫がと呟いていたけど尊と過ごす内に今では立派なババ馬鹿ジジ馬鹿になっている。ていうか尊の大人キラー振りが怖い。
そんな尊も学年が上がりもう直ぐ中学生になる。
「早いなー時の流れって」
「そうだね。小学校の運動会も今年で最後だ」
過行く年月の中で俺と響也と尊は存分に人生を謳歌した。
3人で出掛ける時もあれば響也とデートも勿論沢山したし、尊と2人で遊びにも行った。響也は会社での貢献度が高く、重要なポストを任せられる様になり、家を空ける事が増えたのだ。
その時は俺が響也の家に泊まって尊を育てる。
でもそれもあと少しで終わりを告げることとなる。
「運動会が終わればいよいよか」
「ああ。以前から話にはあったが、やっとだね」
尊の運動会が終わったら、俺は今のマンションを引き払う事になっている。
「侑真の会社が柔軟な考えを持っていて良かった。最悪侑真を連れて父母の元へ移住しようかとも考えたが」
「ははは!それだと尊も留学しないといけないからな。友達との関係も良好なのに可哀想だろ」
尊は「何時でも引っ越せるよ」と真顔で言っているが、子供の時の経験は貴重だ。簡単に考えられる問題じゃない。いずれはやっておいた方が良いとは思うが、せめて小学生の間だけは傍にいておくれ。
「響也の会社こそお堅そうなイメージだったのに、降格もされなくて良かったよ」
「うむ。どうやら元嫁との馴れ初めが上層部に知られていたらしくな。寧ろ申し訳ない顔をされてしまった」
だろうな。自分とこの責任ある立場の社員がやらかしてんだから。因みにその元上司は確固たる証拠がないのでクビにも解雇にもなっていないが地方に左遷させられたらしい。さらに裏情報ではこれから先昇給も無いって話だから自分から辞めるんじゃないかって噂もあるとか。
俺はクックと喉で笑って手元の雑誌に視線を落とした。
その一文を指でなぞる。
「もう直ぐここが本当に俺の家になるんだな」
感慨深く呟けば、クスリと笑った響也に肩を寄せられた。
「何を言っているのだね。元からここは君の家でもあるのだよ」
その温かい言葉に俺も響也の腰に手を回しもっと密着するように引き寄せた。
「ああ。でも、それだけじゃない」
ふとTVからアナウンスされた言葉に耳を傾ける。
「正式に俺達は家族だって認められるんだ」
東京都でパートナーシップが正式に認められた。
これを受けて俺達は家族になる事を決意したのだ。
別に籍が一つになる訳じゃない。認められるのは都内に住んでいる間だけ。何より未だにLGBTに否定的な声は多い。だからって訳じゃないけど大々的に式を挙げたりはしない。
でも話を聞いた互いの両親がお祝いをしようと言ってくれた。
今は母さんとお義母さんが結託して盛り上げようと息巻いている。
「良い人達に巡り合えたな」
「そうだね。その中でも君は一番得難い存在だよ」
「響也……。ああ、俺もだ」
引き寄せ合っていた体は自然と顔を合わせ、そして今日もまた、愛を確かめ合う。
※※※東京都でパートナーシップが施行された記念に書きました※※※
心配していた両親との顔合わせも、あまりの響也のイケメン振りに借りて来た猫の様だった。最初こそ孫が孫がと呟いていたけど尊と過ごす内に今では立派なババ馬鹿ジジ馬鹿になっている。ていうか尊の大人キラー振りが怖い。
そんな尊も学年が上がりもう直ぐ中学生になる。
「早いなー時の流れって」
「そうだね。小学校の運動会も今年で最後だ」
過行く年月の中で俺と響也と尊は存分に人生を謳歌した。
3人で出掛ける時もあれば響也とデートも勿論沢山したし、尊と2人で遊びにも行った。響也は会社での貢献度が高く、重要なポストを任せられる様になり、家を空ける事が増えたのだ。
その時は俺が響也の家に泊まって尊を育てる。
でもそれもあと少しで終わりを告げることとなる。
「運動会が終わればいよいよか」
「ああ。以前から話にはあったが、やっとだね」
尊の運動会が終わったら、俺は今のマンションを引き払う事になっている。
「侑真の会社が柔軟な考えを持っていて良かった。最悪侑真を連れて父母の元へ移住しようかとも考えたが」
「ははは!それだと尊も留学しないといけないからな。友達との関係も良好なのに可哀想だろ」
尊は「何時でも引っ越せるよ」と真顔で言っているが、子供の時の経験は貴重だ。簡単に考えられる問題じゃない。いずれはやっておいた方が良いとは思うが、せめて小学生の間だけは傍にいておくれ。
「響也の会社こそお堅そうなイメージだったのに、降格もされなくて良かったよ」
「うむ。どうやら元嫁との馴れ初めが上層部に知られていたらしくな。寧ろ申し訳ない顔をされてしまった」
だろうな。自分とこの責任ある立場の社員がやらかしてんだから。因みにその元上司は確固たる証拠がないのでクビにも解雇にもなっていないが地方に左遷させられたらしい。さらに裏情報ではこれから先昇給も無いって話だから自分から辞めるんじゃないかって噂もあるとか。
俺はクックと喉で笑って手元の雑誌に視線を落とした。
その一文を指でなぞる。
「もう直ぐここが本当に俺の家になるんだな」
感慨深く呟けば、クスリと笑った響也に肩を寄せられた。
「何を言っているのだね。元からここは君の家でもあるのだよ」
その温かい言葉に俺も響也の腰に手を回しもっと密着するように引き寄せた。
「ああ。でも、それだけじゃない」
ふとTVからアナウンスされた言葉に耳を傾ける。
「正式に俺達は家族だって認められるんだ」
東京都でパートナーシップが正式に認められた。
これを受けて俺達は家族になる事を決意したのだ。
別に籍が一つになる訳じゃない。認められるのは都内に住んでいる間だけ。何より未だにLGBTに否定的な声は多い。だからって訳じゃないけど大々的に式を挙げたりはしない。
でも話を聞いた互いの両親がお祝いをしようと言ってくれた。
今は母さんとお義母さんが結託して盛り上げようと息巻いている。
「良い人達に巡り合えたな」
「そうだね。その中でも君は一番得難い存在だよ」
「響也……。ああ、俺もだ」
引き寄せ合っていた体は自然と顔を合わせ、そして今日もまた、愛を確かめ合う。
※※※東京都でパートナーシップが施行された記念に書きました※※※
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