繋がる想いを

無月

文字の大きさ
上 下
23 / 36
恋人編

10.年末

しおりを挟む
楽しかったクリスマスは終わり、明くる日は通常出勤。
響也のベッドで早くに目が覚めた俺は響也の寝顔を見ようと思った。

「おはよう侑真」

しかし響也の方が起きるのが早かった。残念。
直ぐに視線が合ったことを考えると寝顔を見られていたのは俺の方だったか。

「おはよう響也」

昨夜は初めて体を重ねて、でも最後までは致さなかった。
大前提として俺も響也も男だから。
お互い男としての行動しか知らない。
出来るのは兜合わせが精々だった。
俺は年上の響也にネコになってくれとは言えなかったし、俺もネコになれる気がしなかった。
それでもお互いの熱を確かめ合って気持ちの吐露を促したから寝起きはスッキリしてる。
あと単純に営業職の響也は年末休み前はあいさつ回りで忙しいから無茶させらんないしな。

てか今日の響也いつもの五割り増しで可愛すぎない?え?そんな可愛くてイケナイおじさん達に目を付けられないかな。
と思ってたら頬を染めて微笑みを浮かべていたのにいつもの平常顔に戻って起きてしまった。

「さて、私は今日は早くてね。侑真はゆっくり出てくれて構わないよ」
「いや。俺も一緒に出るよ」

合鍵は有るけど熱を確かめ合ったばかりだからか離れ難い。
朝食を2人で作って食べて出勤した。

さて、今年も残り2日で冬期休暇に入る。休みになったら先ずは大掃除せねば。マンションの方は……今年そんなに帰ってないから埃掃えば終わりそうだ。
よし。今年からは響也の家の大掃除を手伝おう。
そう意気込んでいたのにそれは叶わなかった。

「プロに依頼済みとは……」

響也宅に帰宅して伝えた所の返事はまさかのプロ依頼済み。
そりゃそうか。元嫁はそういうのしそうになかったし、金があれば金で解決するわな。
とは言え別れたのはもう随分前なのにそんな前から予約って出来るのか?と思っていたら年間契約をしていたらしい。

「すまない。契約解除をしていなかったのでな」
「いやいや。世に金を回すのは大事だよ。考えてみれば庭とかいつも綺麗に整えてあるもんな。俺の方が気付けって話だった」

たまたまタイミングが合わずにかち合ったことが無かったっていう罠。庭の整備は平日の昼間に行う契約らしいから仕方ないって言えば仕方ないけど。

「それにしても屋内は流石に会っても良さそうなもんだけどな」
「屋内は年3回来る。春休み終わりと盆後と年末だね」

あーそれな。春休みは今程頻繁には会っていなかったし、盆は一緒に沖縄行ったけどその後までずっと一緒にいた訳じゃなかった。
俺はこの一年を振り返って乾いた笑いが漏れた。

「でも確かに家も庭も広いもんな。プロの手でも借りないと維持難しいか」
「ははは、先祖代々受け継いでいるから土地だけは立派だ。家は結婚をする時に建て替えをしている。何せあれが古めかしい家には住みたくないと言ってね」

然もありなん。

「でも響也が育った家はちょっと見てみたかったかも」
「これは嬉しいことを言ってくれる。私も育った家は愛着があったからね」

そう言って響也はソファを離れて部屋へ向かった。そして暫くするとアルバムを持って現れた。
俺の隣に戻って来て座るとアルバムを広げる。

「これが元の家だよ」

響也が指差す一枚の写真には家全体と5人家族が映っていた。

「もしかしてこの子が響也か?」
「ああ、これは小学生頃か。両隣にいるのが祖父母で後ろにいるのが両親だ。厳しい人達だったが愛情も確かに沢山貰っていた」

懐かしいんだろう。真面目にすると鋭くなる顔つきの響也だけど、目元の緩みは確かに愛情を感じる。厳しい環境だったけれどそれを普通に受け止められる響也だったからこんなに良い男に育ったんだな。
それにしても、ここが実家だとすると矢張りもう祖父母も両親もこの世にはいないのか。

「ん?ああ、心配しないで欲しい。祖父母は流石に鬼籍に入ったが、両親は仲良く海外で暮らしている」

しんみりした俺の心を感じ取った響也がとても軽い調子で言って来た。
良かったんだけど。何だろうこの肩透かし感。

「えと。それじゃあ響也の両親にご挨拶に伺えるな」

ガクッときた心を誤魔化して茶化して言えば、響也は両目を丸くした。
そして顎に手を添えて考えてしまった。

「響也?」

名を呼べば響也はとても真面目な顔で俺を見据えた。

「私も侑真の御両親にご挨拶をしなければならなかったね。ふむ、侑真の御両親は私のようなおじさんが侑真の恋人でいる事を不快に思われないだろうか」

どうやら真剣に俺の言葉を受け止めてくれていたらしい。その事に胸がカッと熱くなる。

「そんなの、響也の両親だってそうだろ。響也は一度結婚して子供もいる訳だし」

響也の手を取り握りしめれば、響也はその手を返し大事に包み返してくれた。

「ビックリはするだろうけど、そもそも私が結婚するとは思っていなかったくらいだから大丈夫だと思う」
「響也……」

安心させてくれる声音で目を合わせて言われ、キュンとくる。

「そもそも僕が侑真パパを大プッシュしてるから歓迎されると思うよ」
「ええ?いつの間にわっ!?え?尊本当にいつの間にいたんだ?」
「ただいまって言ったよ。2人の世界に入ってて聞こえて無かったみたいだけど」

ぐふ。
尊の言葉は俺と響也にクリティカルヒットした。
最大の理解者ではあれど我が子同然の恋の応援はちょっと照れる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

フローブルー

とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。 高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

Ω様は支配される

あかさたな!
BL
弱虫で泣き虫な陽平がαで、ガキ大将と良い意味でも悪い意味でも言われていた俺がΩだった。 幼馴染なはずなのに、いつのまにか陽平は強くてカッコよくなってるし、まさかあいつに守ってもらう日が来るとは… 神様、絶対何かミスしたんだって! なんで俺がαじゃないんだよ! 【いじめられっ子×いじめっ子】 な幼馴染同士の 逆転甘々なお話です! 本能の前ではプライドは脆く、崩れ落ちるのみ…。 __________ こちらは 【下剋上な関係を集めた短編集】 に収録されている 頭脳派×脳筋な幼馴染@力か作戦か というお話をベースに作られています。 いろんな下剋上っぽいお話の短編集になっております。 このお話は特に、構想が短編集に収まる文字数ではなかったので、こちらで別で書かせていただきました。 では、ごゆっくりお楽しみください! __________

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

みづき
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

世界で一番優しいKNEELをあなたに

珈琲きの子
BL
グレアの圧力の中セーフワードも使えない状態で体を弄ばれる。初めてパートナー契約したDomから卑劣な洗礼を受け、ダイナミクス恐怖症になったSubの一希は、自分のダイナミクスを隠し、Usualとして生きていた。 Usualとして恋をして、Usualとして恋人と愛し合う。 抑制剤を服用しながらだったが、Usualである恋人の省吾と過ごす時間は何物にも代えがたいものだった。 しかし、ある日ある男から「久しぶりに会わないか」と電話がかかってくる。その男は一希の初めてのパートナーでありSubとしての喜びを教えた男だった。 ※Dom/Subユニバース独自設定有り ※やんわりモブレ有り ※Usual✕Sub ※ダイナミクスの変異あり

処理中です...