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恋人編
10.年末
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楽しかったクリスマスは終わり、明くる日は通常出勤。
響也のベッドで早くに目が覚めた俺は響也の寝顔を見ようと思った。
「おはよう侑真」
しかし響也の方が起きるのが早かった。残念。
直ぐに視線が合ったことを考えると寝顔を見られていたのは俺の方だったか。
「おはよう響也」
昨夜は初めて体を重ねて、でも最後までは致さなかった。
大前提として俺も響也も男だから。
お互い男としての行動しか知らない。
出来るのは兜合わせが精々だった。
俺は年上の響也にネコになってくれとは言えなかったし、俺もネコになれる気がしなかった。
それでもお互いの熱を確かめ合って気持ちの吐露を促したから寝起きはスッキリしてる。
あと単純に営業職の響也は年末休み前はあいさつ回りで忙しいから無茶させらんないしな。
てか今日の響也いつもの五割り増しで可愛すぎない?え?そんな可愛くてイケナイおじさん達に目を付けられないかな。
と思ってたら頬を染めて微笑みを浮かべていたのにいつもの平常顔に戻って起きてしまった。
「さて、私は今日は早くてね。侑真はゆっくり出てくれて構わないよ」
「いや。俺も一緒に出るよ」
合鍵は有るけど熱を確かめ合ったばかりだからか離れ難い。
朝食を2人で作って食べて出勤した。
さて、今年も残り2日で冬期休暇に入る。休みになったら先ずは大掃除せねば。マンションの方は……今年そんなに帰ってないから埃掃えば終わりそうだ。
よし。今年からは響也の家の大掃除を手伝おう。
そう意気込んでいたのにそれは叶わなかった。
「プロに依頼済みとは……」
響也宅に帰宅して伝えた所の返事はまさかのプロ依頼済み。
そりゃそうか。元嫁はそういうのしそうになかったし、金があれば金で解決するわな。
とは言え別れたのはもう随分前なのにそんな前から予約って出来るのか?と思っていたら年間契約をしていたらしい。
「すまない。契約解除をしていなかったのでな」
「いやいや。世に金を回すのは大事だよ。考えてみれば庭とかいつも綺麗に整えてあるもんな。俺の方が気付けって話だった」
たまたまタイミングが合わずにかち合ったことが無かったっていう罠。庭の整備は平日の昼間に行う契約らしいから仕方ないって言えば仕方ないけど。
「それにしても屋内は流石に会っても良さそうなもんだけどな」
「屋内は年3回来る。春休み終わりと盆後と年末だね」
あーそれな。春休みは今程頻繁には会っていなかったし、盆は一緒に沖縄行ったけどその後までずっと一緒にいた訳じゃなかった。
俺はこの一年を振り返って乾いた笑いが漏れた。
「でも確かに家も庭も広いもんな。プロの手でも借りないと維持難しいか」
「ははは、先祖代々受け継いでいるから土地だけは立派だ。家は結婚をする時に建て替えをしている。何せあれが古めかしい家には住みたくないと言ってね」
然もありなん。
「でも響也が育った家はちょっと見てみたかったかも」
「これは嬉しいことを言ってくれる。私も育った家は愛着があったからね」
そう言って響也はソファを離れて部屋へ向かった。そして暫くするとアルバムを持って現れた。
俺の隣に戻って来て座るとアルバムを広げる。
「これが元の家だよ」
響也が指差す一枚の写真には家全体と5人家族が映っていた。
「もしかしてこの子が響也か?」
「ああ、これは小学生頃か。両隣にいるのが祖父母で後ろにいるのが両親だ。厳しい人達だったが愛情も確かに沢山貰っていた」
懐かしいんだろう。真面目にすると鋭くなる顔つきの響也だけど、目元の緩みは確かに愛情を感じる。厳しい環境だったけれどそれを普通に受け止められる響也だったからこんなに良い男に育ったんだな。
それにしても、ここが実家だとすると矢張りもう祖父母も両親もこの世にはいないのか。
「ん?ああ、心配しないで欲しい。祖父母は流石に鬼籍に入ったが、両親は仲良く海外で暮らしている」
しんみりした俺の心を感じ取った響也がとても軽い調子で言って来た。
良かったんだけど。何だろうこの肩透かし感。
「えと。それじゃあ響也の両親にご挨拶に伺えるな」
ガクッときた心を誤魔化して茶化して言えば、響也は両目を丸くした。
そして顎に手を添えて考えてしまった。
「響也?」
名を呼べば響也はとても真面目な顔で俺を見据えた。
「私も侑真の御両親にご挨拶をしなければならなかったね。ふむ、侑真の御両親は私のようなおじさんが侑真の恋人でいる事を不快に思われないだろうか」
どうやら真剣に俺の言葉を受け止めてくれていたらしい。その事に胸がカッと熱くなる。
「そんなの、響也の両親だってそうだろ。響也は一度結婚して子供もいる訳だし」
響也の手を取り握りしめれば、響也はその手を返し大事に包み返してくれた。
「ビックリはするだろうけど、そもそも私が結婚するとは思っていなかったくらいだから大丈夫だと思う」
「響也……」
安心させてくれる声音で目を合わせて言われ、キュンとくる。
「そもそも僕が侑真パパを大プッシュしてるから歓迎されると思うよ」
「ええ?いつの間にわっ!?え?尊本当にいつの間にいたんだ?」
「ただいまって言ったよ。2人の世界に入ってて聞こえて無かったみたいだけど」
ぐふ。
尊の言葉は俺と響也にクリティカルヒットした。
最大の理解者ではあれど我が子同然の恋の応援はちょっと照れる。
響也のベッドで早くに目が覚めた俺は響也の寝顔を見ようと思った。
「おはよう侑真」
しかし響也の方が起きるのが早かった。残念。
直ぐに視線が合ったことを考えると寝顔を見られていたのは俺の方だったか。
「おはよう響也」
昨夜は初めて体を重ねて、でも最後までは致さなかった。
大前提として俺も響也も男だから。
お互い男としての行動しか知らない。
出来るのは兜合わせが精々だった。
俺は年上の響也にネコになってくれとは言えなかったし、俺もネコになれる気がしなかった。
それでもお互いの熱を確かめ合って気持ちの吐露を促したから寝起きはスッキリしてる。
あと単純に営業職の響也は年末休み前はあいさつ回りで忙しいから無茶させらんないしな。
てか今日の響也いつもの五割り増しで可愛すぎない?え?そんな可愛くてイケナイおじさん達に目を付けられないかな。
と思ってたら頬を染めて微笑みを浮かべていたのにいつもの平常顔に戻って起きてしまった。
「さて、私は今日は早くてね。侑真はゆっくり出てくれて構わないよ」
「いや。俺も一緒に出るよ」
合鍵は有るけど熱を確かめ合ったばかりだからか離れ難い。
朝食を2人で作って食べて出勤した。
さて、今年も残り2日で冬期休暇に入る。休みになったら先ずは大掃除せねば。マンションの方は……今年そんなに帰ってないから埃掃えば終わりそうだ。
よし。今年からは響也の家の大掃除を手伝おう。
そう意気込んでいたのにそれは叶わなかった。
「プロに依頼済みとは……」
響也宅に帰宅して伝えた所の返事はまさかのプロ依頼済み。
そりゃそうか。元嫁はそういうのしそうになかったし、金があれば金で解決するわな。
とは言え別れたのはもう随分前なのにそんな前から予約って出来るのか?と思っていたら年間契約をしていたらしい。
「すまない。契約解除をしていなかったのでな」
「いやいや。世に金を回すのは大事だよ。考えてみれば庭とかいつも綺麗に整えてあるもんな。俺の方が気付けって話だった」
たまたまタイミングが合わずにかち合ったことが無かったっていう罠。庭の整備は平日の昼間に行う契約らしいから仕方ないって言えば仕方ないけど。
「それにしても屋内は流石に会っても良さそうなもんだけどな」
「屋内は年3回来る。春休み終わりと盆後と年末だね」
あーそれな。春休みは今程頻繁には会っていなかったし、盆は一緒に沖縄行ったけどその後までずっと一緒にいた訳じゃなかった。
俺はこの一年を振り返って乾いた笑いが漏れた。
「でも確かに家も庭も広いもんな。プロの手でも借りないと維持難しいか」
「ははは、先祖代々受け継いでいるから土地だけは立派だ。家は結婚をする時に建て替えをしている。何せあれが古めかしい家には住みたくないと言ってね」
然もありなん。
「でも響也が育った家はちょっと見てみたかったかも」
「これは嬉しいことを言ってくれる。私も育った家は愛着があったからね」
そう言って響也はソファを離れて部屋へ向かった。そして暫くするとアルバムを持って現れた。
俺の隣に戻って来て座るとアルバムを広げる。
「これが元の家だよ」
響也が指差す一枚の写真には家全体と5人家族が映っていた。
「もしかしてこの子が響也か?」
「ああ、これは小学生頃か。両隣にいるのが祖父母で後ろにいるのが両親だ。厳しい人達だったが愛情も確かに沢山貰っていた」
懐かしいんだろう。真面目にすると鋭くなる顔つきの響也だけど、目元の緩みは確かに愛情を感じる。厳しい環境だったけれどそれを普通に受け止められる響也だったからこんなに良い男に育ったんだな。
それにしても、ここが実家だとすると矢張りもう祖父母も両親もこの世にはいないのか。
「ん?ああ、心配しないで欲しい。祖父母は流石に鬼籍に入ったが、両親は仲良く海外で暮らしている」
しんみりした俺の心を感じ取った響也がとても軽い調子で言って来た。
良かったんだけど。何だろうこの肩透かし感。
「えと。それじゃあ響也の両親にご挨拶に伺えるな」
ガクッときた心を誤魔化して茶化して言えば、響也は両目を丸くした。
そして顎に手を添えて考えてしまった。
「響也?」
名を呼べば響也はとても真面目な顔で俺を見据えた。
「私も侑真の御両親にご挨拶をしなければならなかったね。ふむ、侑真の御両親は私のようなおじさんが侑真の恋人でいる事を不快に思われないだろうか」
どうやら真剣に俺の言葉を受け止めてくれていたらしい。その事に胸がカッと熱くなる。
「そんなの、響也の両親だってそうだろ。響也は一度結婚して子供もいる訳だし」
響也の手を取り握りしめれば、響也はその手を返し大事に包み返してくれた。
「ビックリはするだろうけど、そもそも私が結婚するとは思っていなかったくらいだから大丈夫だと思う」
「響也……」
安心させてくれる声音で目を合わせて言われ、キュンとくる。
「そもそも僕が侑真パパを大プッシュしてるから歓迎されると思うよ」
「ええ?いつの間にわっ!?え?尊本当にいつの間にいたんだ?」
「ただいまって言ったよ。2人の世界に入ってて聞こえて無かったみたいだけど」
ぐふ。
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