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恋人編
9.クリスマスマジック
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尊が寝ている内に枕元に用意したプレゼントは大成功に終わった。
ただ流石にサンタクロースを信じる歳ではないから普通に俺に礼を言われたのは嬉しいのやら寂しいのやら。子供らしい時を共に過ごせなかった事が悔やまれる。その頃は響也に出会ってすらいなかったけど。
「けどよく俺からだってわかったな」
「そりゃわかるよ。父さんがこんな気の利いたプレゼントくれる訳ないもん」
逆方向に信頼が行き届いている。
隣で憮然とした顔で眉間に皺を寄せている響也が愛しい。そんな顔してもショックが隠せないのなんて俺にはお見通しだ。
俺が苦笑してそっと響也の肩を叩くとふいと視線を逸らされた。隠せない耳朶が少し赤い。機嫌は直ったようだ。
尊と視線を合わせば声を出さずに肩で笑ってる。
「それで?父さんが付けているそれはどうしたの?」
「!」
「お。よく気付いたな」
楽しいと止まらない笑みのまま意地悪そうに響也の袖を指差した尊。
そこには俺が散々悩んで選んだ一つがライトの光を弾いて輝いている。
そう。大成功に終わったのは何も尊だけじゃない。
響也もだ。
イブという事で一緒のベッドで寝た俺達。早朝の起き抜けに微睡む瞼にキスを落として渡したそれ。
「メリークリスマス」
別にキリシタンではないけどそう言って渡したそれを、響也は微睡みも跳ねのけて目を見開いた。その完全に覚醒した頭で目の前の包みを割れ物を触る様に手に触れてくれた。
「……ありがとう」
そう言って見せた笑みのプライスレス。
可愛かった。控えめに言っても愛おしかった。
この人の恋人になれて幸せだって思えた。本当に好きだ。
「ふ―――――ん」
朝の一幕を思い出していた俺を見て、そしてその横で照れている響也を見た尊の全てを見通す一言。口端がニヤリとしているのは俺達の仲の良さに安らぎを得ているからだろう。
ホントうちの子良き理解者過ぎて将来が怖い。
「んんっ。あー、それで今日はどうしようか」
誤魔化すように咳ばらいをして態勢をクールなものに戻した響也。
「あ。僕今日は友達に呼ばれてるんだ」
「そうか。まあ俺達も予定立ててなかったしな。帰りは何時になりそうなんだ?」
「泊まってくるよ。もう冬休みだしね。年末年始は旅行するらしくてその前にってことで」
「そうなのか。それはご挨拶したいが……。俺は尊のなんだってなっちゃうしな」
「気にしないで。向こうもうちの事情は分かってるから。だから今日は2人きりでゆっくり仲を深めてね」
ごふ。
思いっきり鳩尾に強烈な一撃を貰った。
ゆっくり行こうって決めた矢先に。本当尊は理解者が過ぎて怖い。
っていうか意味わかって言ってんのか?だとしたら一度深く話し合いたいというか尊にはまだそれは発想が早いというか。
「?何で2人とも変な顔してるの?大人は子供のいない隙に大人の飲み物飲んで仲を深めるんでしょ?」
「え?あ!あー!そう!そうだな!尊は気が利くなー!」
良かった!そういう意味じゃなかった!
安堵した俺は動揺を隠すように尊の頭を力強く撫でてやった。
「ふはっ!なぁに侑真パパ今気付いたのー?」
「まさか!初めっから知ってたさ!」
そぉれぐーりぐりと全身で可愛がれば後ろで響也も笑い出した。
邪な想像を悟られる事無く尊に手土産持たせて送り出した俺達。しんとした室内で気まずい空気に包まれてる。
爆弾ではなかった爆弾発言に動揺したのは俺だけじゃなかった。響也もみたいだ。
「……」
「……」
視線が合うと所在無くなってどちらからともなく逸らしてしまう。
「……片付けるか」
何度目かの視線の交差を経て何とかそれだけ言うと阿吽の呼吸で片付けをした。
全て片付けるとシンプルな内装の響也の家は物寂しさを感じさせた。
普段はセンスの良さに居心地の良さを感じてるのにな。
如何したものかと思いつつもソファに並んで座る。いつもの定位置。
でもいつもより少し開いた空間。そこの空間が寂しくて置いた手に、響也の手が重なった。
響也を見ると意図して置いた訳じゃないとわかる。戸惑いが見えた。
それでも離そうとはしない。
勿論俺からも。
ただ黙って見つめ合う時が流れる。
頭に浮かぶのはいつだって応援して背中を押してくれる尊の姿。
「響也……」
重なる手を取り指を絡めた。
「侑真……」
応える響也の指。その先の袖に光るのはクリスマスプレゼントに用意したカフス。
響也に似合うと思って一番映える、けれども日常的に使える様に派手ではない落ち着いたデザイン。
思った通りに良く似合っていて、愛おしさが込み上げる。
想いは指を伝い、脳に直結される。
そして俺達はどちらからともなく唇を重ねた。
ああ。これだからクリスマスは侮れない。
まるで魔法に掛かったかのように、俺達は体を重ねた。
ただ流石にサンタクロースを信じる歳ではないから普通に俺に礼を言われたのは嬉しいのやら寂しいのやら。子供らしい時を共に過ごせなかった事が悔やまれる。その頃は響也に出会ってすらいなかったけど。
「けどよく俺からだってわかったな」
「そりゃわかるよ。父さんがこんな気の利いたプレゼントくれる訳ないもん」
逆方向に信頼が行き届いている。
隣で憮然とした顔で眉間に皺を寄せている響也が愛しい。そんな顔してもショックが隠せないのなんて俺にはお見通しだ。
俺が苦笑してそっと響也の肩を叩くとふいと視線を逸らされた。隠せない耳朶が少し赤い。機嫌は直ったようだ。
尊と視線を合わせば声を出さずに肩で笑ってる。
「それで?父さんが付けているそれはどうしたの?」
「!」
「お。よく気付いたな」
楽しいと止まらない笑みのまま意地悪そうに響也の袖を指差した尊。
そこには俺が散々悩んで選んだ一つがライトの光を弾いて輝いている。
そう。大成功に終わったのは何も尊だけじゃない。
響也もだ。
イブという事で一緒のベッドで寝た俺達。早朝の起き抜けに微睡む瞼にキスを落として渡したそれ。
「メリークリスマス」
別にキリシタンではないけどそう言って渡したそれを、響也は微睡みも跳ねのけて目を見開いた。その完全に覚醒した頭で目の前の包みを割れ物を触る様に手に触れてくれた。
「……ありがとう」
そう言って見せた笑みのプライスレス。
可愛かった。控えめに言っても愛おしかった。
この人の恋人になれて幸せだって思えた。本当に好きだ。
「ふ―――――ん」
朝の一幕を思い出していた俺を見て、そしてその横で照れている響也を見た尊の全てを見通す一言。口端がニヤリとしているのは俺達の仲の良さに安らぎを得ているからだろう。
ホントうちの子良き理解者過ぎて将来が怖い。
「んんっ。あー、それで今日はどうしようか」
誤魔化すように咳ばらいをして態勢をクールなものに戻した響也。
「あ。僕今日は友達に呼ばれてるんだ」
「そうか。まあ俺達も予定立ててなかったしな。帰りは何時になりそうなんだ?」
「泊まってくるよ。もう冬休みだしね。年末年始は旅行するらしくてその前にってことで」
「そうなのか。それはご挨拶したいが……。俺は尊のなんだってなっちゃうしな」
「気にしないで。向こうもうちの事情は分かってるから。だから今日は2人きりでゆっくり仲を深めてね」
ごふ。
思いっきり鳩尾に強烈な一撃を貰った。
ゆっくり行こうって決めた矢先に。本当尊は理解者が過ぎて怖い。
っていうか意味わかって言ってんのか?だとしたら一度深く話し合いたいというか尊にはまだそれは発想が早いというか。
「?何で2人とも変な顔してるの?大人は子供のいない隙に大人の飲み物飲んで仲を深めるんでしょ?」
「え?あ!あー!そう!そうだな!尊は気が利くなー!」
良かった!そういう意味じゃなかった!
安堵した俺は動揺を隠すように尊の頭を力強く撫でてやった。
「ふはっ!なぁに侑真パパ今気付いたのー?」
「まさか!初めっから知ってたさ!」
そぉれぐーりぐりと全身で可愛がれば後ろで響也も笑い出した。
邪な想像を悟られる事無く尊に手土産持たせて送り出した俺達。しんとした室内で気まずい空気に包まれてる。
爆弾ではなかった爆弾発言に動揺したのは俺だけじゃなかった。響也もみたいだ。
「……」
「……」
視線が合うと所在無くなってどちらからともなく逸らしてしまう。
「……片付けるか」
何度目かの視線の交差を経て何とかそれだけ言うと阿吽の呼吸で片付けをした。
全て片付けるとシンプルな内装の響也の家は物寂しさを感じさせた。
普段はセンスの良さに居心地の良さを感じてるのにな。
如何したものかと思いつつもソファに並んで座る。いつもの定位置。
でもいつもより少し開いた空間。そこの空間が寂しくて置いた手に、響也の手が重なった。
響也を見ると意図して置いた訳じゃないとわかる。戸惑いが見えた。
それでも離そうとはしない。
勿論俺からも。
ただ黙って見つめ合う時が流れる。
頭に浮かぶのはいつだって応援して背中を押してくれる尊の姿。
「響也……」
重なる手を取り指を絡めた。
「侑真……」
応える響也の指。その先の袖に光るのはクリスマスプレゼントに用意したカフス。
響也に似合うと思って一番映える、けれども日常的に使える様に派手ではない落ち着いたデザイン。
思った通りに良く似合っていて、愛おしさが込み上げる。
想いは指を伝い、脳に直結される。
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