繋がる想いを

無月

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出会い編

13.想い伝わり

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尊の塾が終わるまで響也と2人で待つ。そう決めたのは良いものの。
チラリと横目で隣に座る響也を見る。私服だ。ビジネススーツかって位ピシッとしたいつもの私服。ジャケットはない。それがかえってエロく感じる。
だってうっすいシャツ一枚だ。素肌感が透けて見えそうなうっすいシャツ。濡れたら俺のパッションがバブルする。いかん。鼻血出る。
ついうっかり妄想して俺の漢が上に主張しかけて慌てて視線を逸らした。

「あー、あれだ。出張お疲れだったな。最近出張多くて尊と会える時間減って寂しいだろ」

何とはなしに付けたTV。最初に付いた旅番組のまま見るとはなしに見つつ会話を探す。
響也はコーヒーを手に取った状態で一瞬止まり、そして飲まずにカップを戻した。
不自然なその行為にどうしたんだと気になって逸らした視線が自然に響也に戻る。

「……勿論寂しい気持ちはある。しかし出張は元々多かったからね。尊も私もそれが普通だったのだ。寧ろ私は…………」

そんな慣れは無くして欲しい。欲しいが珍しく言い淀んだ言葉の続きが気になる。
沈黙の間にTVの音が流れていく。
言葉の続き。俺はその先に願望を持った。俺と離れているのが寂しかったと、そう言って欲しい。一度芽生えた欲は増殖して、俺の理性はもうどこにあるんだかわからない。

「俺も、響也に会えなかったの寂しかったぜ。っていい歳した男に言われても気持ち悪いか」
「!そんなことはないっ。私も寂しく思っていた」

願望を消す為にわざと自嘲的に言った言葉は、しかし即座に響也の言葉で消された。

願望に、肉が付く。
目に見えないそれが形となって現れて、俺の理性を掻き乱す。

「はは、ありがとう。響也の友情が熱くて俺は嬉しいよ」

響也に友と思われて誇らしいのは本当。だから今響也に向ける笑みは自嘲なんてない心からのもの。
でも。

「でもな、俺の寂しさと響也の寂しさは多分種類が違うんだ」

俺の笑みに心臓が針に刺されたかの様な痛みが加わった。
そんな気持ち、表に出すつもりなんて無かったんだけどな。思ったよりずっと、俺は響也に好意を寄せて貰いたかったらしい。

「それは……、侑真は私の邪な想いに気付いていたということか」
「うん。…………うん?」

流れで肯定しかけて、驚愕と焦りに彩られた響也の顔に違和感を覚えて思わず首を傾げた。
そんな顔出来るんだなー。

「じゃなくて」
「!?ち、違ったのか?っい、今のは忘れて欲しいっ。何でもないのだ」
「あ、声に出てた。ってそうじゃなくて。ってか絶対忘れないぞ。って事でもあるけどなくて」

ああ、珍しく慌てふためく響也が可愛くて、可愛くて。もう可愛いからキスしてその口塞ぎたい。でも塞いだらこの可愛いのが視界から消えるのか。それは勿体ない。
ってそうじゃなくて。それどころじゃなくて。

え?

俺の独りよがりじゃない?

もしかしたら思ったのと違う意味なのかもしれない。
それでも一度希望が見えてしまったら、もう理性は欲に上書きされてもう戻れない。

「……嫌なら殴って」

俺の視界から響也の表情が見えなくなった。
代わりに映るのは響也の瞳に映る欲情深い俺の瞳。
ああ、俺ってこんな目で響也を見てたんだな。
こんなん好きじゃん。好き過ぎるだろ俺。

「ん……」

間の空いた後で漏れる響也のくぐもった声。それに自分で驚いたんだろうか、響也の目が見開いた。でもその目は直ぐに閉じられて……。

抵抗の無いその口に深く、長く、それこそ怒った響也に頭を叩かれるまでキスをした。



「侑真は、案外しつこかったのか」

満足も半ばに唇を離した後、真っ赤になった響也がいつの間にか乱れていたシャツを直しながら言った。
うん?いつの間に乱れてたんだ?え?俺?俺がしてたの?
ゴメン。無自覚だった。

「響也だって嫌がらなかった」

まだしたりない俺は思ったより、でも昨晩額に触れたのと同じ柔らかさの唇に指でなぞりながら言う。
途端に口をへの字に負けて眉間に皺を寄せる響也。でも目が俺を誘う熱さで。

「あと随分スケベだ」

唇を触っていた手を取られて離されてしまった。残念。

「好きな相手にはそんなもんだろ」

響也にだって覚え位あるだろって目で問えば。

「生憎私は侑真以外にこういう感情を抱いた事がなくてね」

え。
俺が初恋。だと。

「一生大切にする。結婚しよう」
「重い!それに日本は同性婚が認められていない」
「パートナーシップならあるし、なんなら同性婚が認められている国に引っ越し……は尊が可哀想か」
「寧ろ大歓迎だよ」
「いやいやそれは尊が決めることだろ」
「うん。だから僕は大歓迎だって言っているよ」

会話に違和感。
あれ?いつから響也の声が高くなったんだ?それに響也は何処を見てへの字の口をわななかせて震えてるんだ?
響也の視線の先を俺も追って……。

「っていうか初めに言ったよね僕。もう結婚したらいいって。あれ本気だったんだけど」

!!?!??!
尊!?

「い、いつからそこに!!」
「今。ただいま」

よしっ、チューは見られてない!セーフ!

予定より早くに塾を終え早々に帰宅した尊。チベットスナギツネの顔で器用にも口だけ笑みを見せる姿に、俺と響也はホッとするやら気恥ずかしいやら複雑な笑みで返したのだった。

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