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出会い編
7.食育
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響也が息子の尊と話をしている間、俺は作り掛けのスイーツ作りを再開していた。
生地を練っている最中なのに話が長くなりそうだったからな。元々は2人で作っていたが、続きを1人でやる位どって事ない。
って事でスイーツの基礎は作り終えた所で響也も話が終わったみたいだ。
「すまないね。残りの飾り付けは私がやろう」
「おう。任せた」
下の名前で呼び合う仲なのに他人行儀なのもなー、と素の俺で接したけど問題はないみたいだ。寧ろ一瞬軽く目を見張ってから嬉しそうに、それはもう嬉しそうに可愛く笑ってくれちゃったりなんかして……。いかん、思い出して照れる。
「よう尊。悪いな、折角来たのにようわからんおっさんがいてビックリしたろ」
場所を入れ替えて今度は俺が尊と相対する。
「構わないよ。僕の方が後から来たんだし。それよりあれは何をしているの?」
響也に負けず劣らずのポーカーフェイスで視線だけで響也を見た。
「ちょっと前に食べた店のスイーツが美味くて、再現できないかって話で盛り上がってさ。試しにやってみてるのさ」
何事も経験だっていう俺の方針と、勉強熱心な響也の性質が合わさった結果の今日。
ここに来てずっと崩すことが無かったポーカーフェイスが崩れた。少年特有のワクワクとした顔を滲ませた尊。子供らしい所もあるんだな。良かった。
「父さんが料理をするなんて信じられない」
うん。どうやら俺が思ってたのと違う方向性に感性が触発されたらしい。
「甘いのは好きか?」
「甘ったるいのは苦手。特に母さんのは胃が死ぬ」
どんなだ。
生姜焼きの件から料理は不得手そうだとは思ったけど、こりゃ食育に悪そうだ。
「今日はおじさんが旨い晩飯作ってやるからな」
ホロリと涙した俺。悪くない。急遽晩飯を作る予定が入ったが問題なし。何故なら彼女いない俺の時間は余裕しかない。寧ろ今は響也を息子と2人残していく方が不安だ。斜め前に爆走しそうで。
そこで何で驚愕するんだ尊。
「おじさん料理出来るの?」
んんんっ!やっぱ尊は響也に性格似たんだな!基本無表情なのにくそ可愛いか!
「好きなの作っちゃる!」
「え。本当?なら……ハンバーグ」
チラリと上目遣いに「無理なら良いよ」と言わんばかりに心配気な光を感じる。
「やっぱり難し」
「よし。直ぐに材料買いに行こう」
何かを言い掛けた尊の腕を掴んで立たせると、いそいそと財布を手に取る。俺が絶対旨いの作ってやるからな!普通のが良いか?子供ならチーズ入りが良いか?
「待て」
そんな事をワクワクしながら考えていたら響也に止められた。
「スイーツ食べてからだ」
おっふ。忘れてた。
2人分のつもりで用意してたから、1人分を尊に。残りを俺と響也で分け合って食べた。
うむ。再現には至らなかったがこれはこれで良し。何より……。
「もぐ……。!?モグ……!!」
無表情で一口食べて目を開き、もう一口食べてスイーツと響也を見比べ、更にもう一口食べて俺と響也を見たあとキラキラした目で完食した尊が可愛かった。その様子に誇らし気な響也も可愛かった。
改めて買う物買って帰って来て、手伝うと言った響也を久し振りの再会だろと断り作った晩飯。ご飯とコンソメスープと尊の希望で普通のハンバーグとグラッセとサラダ。テーブルに並べたそれを見てまたもや驚愕する尊。俺と料理を交互に見てる。
「ほら、座って。食べよう」
促せば信じられない物を見ている雰囲気で恐る恐る座って「いただきます」をした。きちんと教育が行き届いていて感心。そして恐る恐る口にしたハンバーグ。ソースはハンバーグを焼いた後のフライパンでケチャップとソースを混ぜただけの簡単なもの。なのに尊はまたもや目を見開いた。
「!……!……!」
何か言いたげに視線をハンバーグと俺に行ったり来たりさせて、そして響也を見た。
響也は全てわかっていると言いたげな表情で深く頷いた。
その後は無言で、けれども上品に全て平らげた尊。満足そうに深く長く息を吐き出した。
「もうさ……。父さんはこの人と結婚しようよ……」
ぶっほぉ!!!
……食後のコーヒー鼻から吐き出すかと思った。
多分恋かもって自覚してまだ数時間しか経ってないのにこの不意打ち。ビビるわ。大体そんなん言われた響也が困惑するだろうよ。
そう思って苦笑を作って振り向いた響也は……。
無表情なのに耳だけ赤かった。
生地を練っている最中なのに話が長くなりそうだったからな。元々は2人で作っていたが、続きを1人でやる位どって事ない。
って事でスイーツの基礎は作り終えた所で響也も話が終わったみたいだ。
「すまないね。残りの飾り付けは私がやろう」
「おう。任せた」
下の名前で呼び合う仲なのに他人行儀なのもなー、と素の俺で接したけど問題はないみたいだ。寧ろ一瞬軽く目を見張ってから嬉しそうに、それはもう嬉しそうに可愛く笑ってくれちゃったりなんかして……。いかん、思い出して照れる。
「よう尊。悪いな、折角来たのにようわからんおっさんがいてビックリしたろ」
場所を入れ替えて今度は俺が尊と相対する。
「構わないよ。僕の方が後から来たんだし。それよりあれは何をしているの?」
響也に負けず劣らずのポーカーフェイスで視線だけで響也を見た。
「ちょっと前に食べた店のスイーツが美味くて、再現できないかって話で盛り上がってさ。試しにやってみてるのさ」
何事も経験だっていう俺の方針と、勉強熱心な響也の性質が合わさった結果の今日。
ここに来てずっと崩すことが無かったポーカーフェイスが崩れた。少年特有のワクワクとした顔を滲ませた尊。子供らしい所もあるんだな。良かった。
「父さんが料理をするなんて信じられない」
うん。どうやら俺が思ってたのと違う方向性に感性が触発されたらしい。
「甘いのは好きか?」
「甘ったるいのは苦手。特に母さんのは胃が死ぬ」
どんなだ。
生姜焼きの件から料理は不得手そうだとは思ったけど、こりゃ食育に悪そうだ。
「今日はおじさんが旨い晩飯作ってやるからな」
ホロリと涙した俺。悪くない。急遽晩飯を作る予定が入ったが問題なし。何故なら彼女いない俺の時間は余裕しかない。寧ろ今は響也を息子と2人残していく方が不安だ。斜め前に爆走しそうで。
そこで何で驚愕するんだ尊。
「おじさん料理出来るの?」
んんんっ!やっぱ尊は響也に性格似たんだな!基本無表情なのにくそ可愛いか!
「好きなの作っちゃる!」
「え。本当?なら……ハンバーグ」
チラリと上目遣いに「無理なら良いよ」と言わんばかりに心配気な光を感じる。
「やっぱり難し」
「よし。直ぐに材料買いに行こう」
何かを言い掛けた尊の腕を掴んで立たせると、いそいそと財布を手に取る。俺が絶対旨いの作ってやるからな!普通のが良いか?子供ならチーズ入りが良いか?
「待て」
そんな事をワクワクしながら考えていたら響也に止められた。
「スイーツ食べてからだ」
おっふ。忘れてた。
2人分のつもりで用意してたから、1人分を尊に。残りを俺と響也で分け合って食べた。
うむ。再現には至らなかったがこれはこれで良し。何より……。
「もぐ……。!?モグ……!!」
無表情で一口食べて目を開き、もう一口食べてスイーツと響也を見比べ、更にもう一口食べて俺と響也を見たあとキラキラした目で完食した尊が可愛かった。その様子に誇らし気な響也も可愛かった。
改めて買う物買って帰って来て、手伝うと言った響也を久し振りの再会だろと断り作った晩飯。ご飯とコンソメスープと尊の希望で普通のハンバーグとグラッセとサラダ。テーブルに並べたそれを見てまたもや驚愕する尊。俺と料理を交互に見てる。
「ほら、座って。食べよう」
促せば信じられない物を見ている雰囲気で恐る恐る座って「いただきます」をした。きちんと教育が行き届いていて感心。そして恐る恐る口にしたハンバーグ。ソースはハンバーグを焼いた後のフライパンでケチャップとソースを混ぜただけの簡単なもの。なのに尊はまたもや目を見開いた。
「!……!……!」
何か言いたげに視線をハンバーグと俺に行ったり来たりさせて、そして響也を見た。
響也は全てわかっていると言いたげな表情で深く頷いた。
その後は無言で、けれども上品に全て平らげた尊。満足そうに深く長く息を吐き出した。
「もうさ……。父さんはこの人と結婚しようよ……」
ぶっほぉ!!!
……食後のコーヒー鼻から吐き出すかと思った。
多分恋かもって自覚してまだ数時間しか経ってないのにこの不意打ち。ビビるわ。大体そんなん言われた響也が困惑するだろうよ。
そう思って苦笑を作って振り向いた響也は……。
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