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第26話 探究の旅

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 勇気はベッドに正座していた。

 あの騒ぎから明けて、土曜になり。盛大な二日酔いになった皆をなんとか送り返し、部屋を片付け、最終的に「ホテルの人に任せよう」と掃除の専門家に任せ、勇気とエリスはホテルを飛び出した。

 それから喫茶店などを巡り、のんびりしているうちには夜になり、そして戻った時にはスイートルームはすっかり綺麗になっていて、エリスはスタッフにたくさんのチップを渡していた。それで二人でシャワーを浴び(その時に多少なりとエッチな気分になってお互い触り合ったりもした)、先にドライヤーが終わってしまった勇気がベッドに戻り、正座しているという状況だ。

 備え付けのベッドサイドの上には、既に露骨にゴムとローションが用意されている。それを見つめているだけで、ドキドキして変な汗が出てくるようだった。

 これから、これから俺とエルは、き、気持ち良いセックス探求の遥かなる旅に出るんだ……。

「ユウキ」

「うわああああっ、あっ、あっ、エル、あっ」

 そばで声をかけられて、そのまま後ろから抱きつかれたものだから、勇気は心臓が止まるかと思った。「ユウキ、声、大きい」とくすくす笑いながら、エリスが甘えるようにすり寄っている。この仔犬を、これから。勇気はごくりと喉を鳴らして、エリスの手を解かせると、キョトンとした顔の彼に向き直る。

「ユウキ?」

「エル……あの、……今日、俺、したいことがあつて……」

「なあに? ユウキ。えすえむ?」

「ひっ、な、そんな単語使っちゃいけません!」

「? ユウキ、えすえむ、したくない?」

「そ、そうは言わないけど、いや、そうじゃない、そうじゃなくてな、エル、えっと、なんだったっけ……」

 突然エリスがぶち込んできたとんでもない単語に勇気は動揺していたが、ややして「そう、前立腺!」と気を取り直して言った。

「ゼンリツセン?」

「そう、エルの前立腺を……ああ、ドゥードゥル翻訳はかけなくていいから! えーと……」

 スマホに向かってまたニワトリの鳴き声を上げようとしているエリスを止め、勇気は顔を赤くしながら説明する。

「その。エルが、気持ちよくなる方法を、試したいんだ」

「?? 私、いつも、気持ちいいよ?」

「そ、そう? でも……いや、でも、もっと気持ちいいハズだから! それで……エルに思いっきり声を出してほしい……」

「エッ」

 エリスも驚いた声を上げて、顔を赤らめた。「でも、私、うるさい」と目を伏せるから、「そ、それについては、本当にごめん!」と伝える。

「酔ってる時に俺が何を言って、エルがどう思ったのか、俺にはわからない……でも、俺はエルが気持ち良くなって出しちゃう声なら、聞きたいし、それをうるさいなんて思わないから!」

「でも……」

「それとも、今までずっと、エルは気持ちよくないのに嘘で声を出してたの?」

「違う、私、気持ちいい、嘘じゃない。ユウキと、sex、私、す、……好き……」

 エリスがとんでもないことを言って顔を真っ赤にするから、勇気も湯気が出るんじゃないかと思うぐらい顔が熱くなるのを感じた。だからエリスをぎゅっと抱きしめて、「気持ちよくして、いい?」と尋ねる。その返事をしないまま、エリスが勇気を受け入れるように、彼を抱き返して自らシーツの上に転がった。

 エリスがくすくす笑いながらキスをしてくるから、それを受け入れる。啄むようだったそれはすぐに舌を絡め、気持ちを確かめるような深く熱いものへと変わっていった。

「ユウキ」

 うっとりとした顔で、エリスが名を呼ぶ。

「私、どうしたら、いい……?」

「いつも通り、任せてくれてたらいいよ」

 瞼に口付けて、「ン」と頷いたエリスの体を愛撫する。柔らかな耳朶を甘く噛み、優しくその敏感な耳元で名を呼ぶ。首筋に口付けを落としながら、ゆっくりと鎖骨へ、それから淡い色の胸の頂に。

 ちゅ、と音を立てて吸うと、「ぁ、」とエリスが僅かに声を漏らす。何度も繰り返すと、慎ましやかったそれは赤みを増してつんと立ち上がる。ちろ、と舌で舐めるようにすると、エリスの体が震えた。

「ここ、好き?」

 尋ねると、エリスは僅かに身を捩り、「わからない……」とか細い声で答えた。

「でも、変な感じ、する」

「変な感じ?」

「ン、……もっと、触って、ほしくなる……」

 なるほど。勇気はまたそれに吸い付いた。色んな可愛がりかたも、要さんに聞かなきゃな……と思いながら、勇気はゆっくり、じっくり時間をかけて、エリスを愛した。












 大事なのは相手に欲しがらせることだよ、勇気君。

 要はそう言っていた。

 時間をかけて、たっぷり期待させると、求めていた快感が与えられた時の解放感は格別だからね。本題にいきたい気持ちはぐっとこらえて、まずはしっかり前戯だよ。そのうち……相手の方が折れるからね……。

 要はそう言って、ふふふ、といやらしく笑っていた。たぶん鏡が有ったら、今自分もそんな顔をしてるんだろうな、と勇気は思った。

「ユウキぃ……っ」

 仰向けで勇気のしたいようにされていたエリスが、切ない声で呼んでいる。しこたま時間をかけて愛した体は、まだ直接的な性器への愛撫をしていないのに、しっとり汗ばみ震えている。そろそろかな、と勇気は思った。

 すっかり弛緩している脚を開かせてから、手のひらでローションを温める。触ってもらえることに期待しているだろう彼のソレには敢えて触れず、そのままするりと秘部まで指を滑らせた。

「あ、」

 そこはすんなりと勇気の指を受け入れる。さぁ、ここからが本題だ。勇気は興奮を抑える為に一度深呼吸をして、目を閉じる。6ページの資料4、前立腺を探す……! 勇気は図解と要直伝の指の動きを思い出しながら、エリスに声をかける。

「エル、もし何か気持ちいいところが有ったら教えて。あと、痛かったり、気持ち悪かったりしたらすぐ言ってくれな、やめるから」

「わ、かった……」

 エリスは素直に頷いて、勇気に身を任せている。そういうところが愛おしいのだ。勇気は安心させるように微笑んで、くいくいと内部を探るように、指を動かしていく。

 思えば、今まで何も知らないなりに、エリスの反応が変わるのを見てきたように思う。確か、こうすると……、と思い出しながら、ゆっくり焦らず、指を動かしていく。

「んンっ」

 ぐい、とあるところを押した時に、エリスが眉を寄せて身を捩らせた。「痛い?」と尋ねると、「違う、けど……」とエリスが困惑した様子なので、そこを何度か指で押し上げてみる。

「んん、う、あ、ユウキ、それ、変……っ」

「変って、どんな感じ?」

「変、なの……っ、あっ、ん、ン、ユウキ……っ」

 確かめるようにこねると、エリスの声に甘さが加わってくる。びくびく震えながら、勇気に触れてくる。助けを求めるような声に、優しく言ってやる。

「ここ、たぶん、エルの前立腺」

「ゼンリツセン……」

「気持ち良くなれるから、もうちょっと、頑張れるか……?」

 勇気の言葉に、エリスは「ン」と頷いてくれる。ああ、かわいい。絶対気持ちよくしてやるからな、たとえお前が変な喘ぎかたしたとしても……。勇気は強く思った。
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