ワタクシが猫で、アナタがネコで

なずとず

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「んんーーっ、ん、うぅうう!」

 どれぐらい時間が経ったのかもわからない。トウマは涙さえ浮かべて、ふるふると首を振っていた。後ろ手に縛られたまま仰向けにされる苦しい状態に、灯りも消さずに延々と乳首を責められる羞恥と快感がおり合わさって、どうにかなってしまいそうだ。

 両方共を指で挟まれぐにぐにと捏ねられたり、唇で吸われ舌で舐め上げられたり。とにかく、乳首ばかりを執拗にいじめられた。ぷっくり膨らんで赤くなったソコは過敏になっていて、ちろ、と優しく舌先で舐められるだけでもジンジン腰まで快感が走り抜ける。

 もうやだ、やめて、そこばっかりダメだから、と頭の中で何度懇願したやら。気持ち良くてもどかしくて、触られてもいない陰茎もナカもキュンキュン疼いてしかたない。みっともなく身体をくねらせて続きを求めたのだけれど、ユンユンは一向取り合ってくれなかった。

「おっぱい、気持ちイイアルネェ」

 見せつけるように乳首を指で摘まみながら、ユンユンが微笑む。男のそこはおっぱいとは言わない、と思うのだけれど、口を塞がれたままでは伝えようも無いし、伝えたところで何かが変わる気もしなかった。うー、と震えながら首を振れば「もっと、アルカ?」と、くにくに弄られ、仰け反って喘ぐ。

 そうじゃない、そこはもう、いいから。どう伝えていいのやら。トウマはまた首を振ってくぐもった声を上げた。ユンユンは「フゥム?」とわざとらしく首を傾げてから、「アァ」と目を細める。

「そうネ、そろそろ、前立腺を可愛がってあげなきゃアル」

「んん~ッ!」

 そうじゃなくて。トウマの声は勿論届かなくて、無情にも脚を開かれる。かわいそうに、散々焦らされた陰茎はトロトロ体液を溢れ出させて腹の上で震えているばかりだ。ユンユンはそれをニコニコと見ただけで、触ってもくれない。その代わり、またローションを手に絡めている。

「今日は少し指を増やしてみるアルヨ」

「うう、」

「大丈夫、オシオキだからって痛くはしないネ。いっぱい気持ちイイことしてアゲルから、そんなに怖がらなくていいアルヨ~」

 そう言ってユンユンはテラテラとローションで光る指を動かした。その動きがなんとも卑猥な物に見えて、トウマは色々な意味で泣きそうだ。うちの猫がエッチすぎるとか、そんなことされたらどんなに気持ちいいのかとか、気持ちいい状態でまた放置されたら辛すぎるだとか。頭を過ぎったことは当然一つだって言葉にはならないまま、ユンユンが濡れた指でトウマのそこに触れる。

「んっ、う、う~っ!」

 3度目ともなると、少し受け入れるのも慣れたようで。潜り込んできた細長い指に震えたものの、苦しささえない。むしろ、これから先にあの快感があるのだと期待してしまう。その事実にも羞恥心を覚えて、どうしようもなく顔も身体も熱いのに、抗えない。

「もうトロトロになってるアルネェ。かわいい子」

「んん、ん、っうう……っ」

 にゅるりと指を動かされて、それだけでゾクゾクする。まだ前立腺を直接刺激されたわけでもないのに。眉を寄せて呻いていると、指が引き抜かれた。どうして、と思う間もなく、ぐっと質量が増して再び侵入してくる。

「んんぅ……っ!」

「これぐらいトロけてたら、痛くはないネ。ご主人サマ、2本目が入ってるの、ワカル?」

「んんっ、ん、んう!」

 内壁を2本の指が交互に動くものだから、わかりすぎるぐらいだ。そして痛くはない。辛くも無い。ただ、いつもより内部に密着しているような気がする。くい、と弱い辺りをくすぐられると、快楽の予感にふるふると首を振った。嫌なわけでもないけれど、何度されても慣れない気持ち良さ。想像しただけで腰の奥から溶けていきそうだ。

「フフ、怖くないアルヨ。ほら……」

「うぅ、う、んんん~~っ!」

 くいくいと二本の指先で優しく前立腺を撫でられる。気持ちいいネェ、と囁かれて、それだけしか考えられなくなりそうだ。脚が震えて、腰が揺れる。ただでさえ気持ちいいのに、二本の指をばらばらに動かされると快感が止まらなくて。トウマはわけもわからず涙を浮かべて仰け反る。

「んんっ、ふ、ぅうう、んぅうう⁉」

 ぐいぐいと前立腺をいじめられたかと思うと、ずるりと指が引き抜かれる。もう何をされても気持ちいい状態のトウマは口を塞がれたまま悲鳴を上げたけれど、状況を理解する前に。

「んん、うーーっ」

 これまでで一番の質量が侵入してくる。更に指が増えたのだ、ということはすぐに理解できた。流石にキツくて身をこわばらせると、「大丈夫、リラックスして」と前を撫でられ、もうダメだった。待ち望んだ陰茎への刺激はすぐにも出してしまいそうなほどで、自然と身体がビクついて、中は指を飲みこもうと力を抜く。そのタイミングに合わせて、ユンユンは指をずるずると奥まで進めた。

「んぅうううう、うぅ、う……っ」

 体感としては犯されているような、あるいはもっと言えば杭を打ち込まれたような心地だ。苦しい、いや、確かにユンユンの言う通り痛くはされていないのだけれど。これ以上のモノは受け入れられない、と感じるのに、これがまだ指3本だなんて。

 じゃあ、本当に犯されたりしたら。

 これまた困ったことに、そう考えてトウマは怖いと思うよりも、むしろ――。

「上手に呑み込めたアルネェ、えらい、えらい」

「んんっ、んう、ふぅうう」

 頭でも撫でるかのように優しく、前立腺を三本の指で絶え間なく撫でられる。もう視界が滲んで何がなんだかわからない。もうイってもおかしくないほど気持ち良くて、ガクガク太腿が震え、足の指がきゅうと縮こまるのに、それはやってこない。前を擦って欲しいような、そんなことされたら困るような。

 ゆっくりと抜かれる時に擦られ、ぐっと押し込む時に突かれて。まるで犯されているような動きに翻弄される。もうイきたい。イきたいのに、どうしてもそれができない。気持ちいいが止まらなくて、どうしていいかわからない。

 せめて喋れるようにしてくれたら、おねだりの一つもできそうなものなのに。ぽろぽろ涙がこぼれる。もう頬も頭も身体も熱くてどうにかなってしまいそうだ。せめてユンユンに触れたいのに、それも許してくれない。それこそが彼の言っていた「オシオキ」なのかもしれないけれど。

「……フフ」

 ユンユンが、優しく太腿を撫でてくれる。それさえ快感に繋がってしまいそうで、思わず逃げようと身を捩った。するとユンユンが指を全て抜いたものだから、「んんぅうう……!」と嬌声を漏らす。

「これだけトロトロになっていたら、コレ、挿れたらすごいことになりそうネェ、ご主人サマ?」

 ふぅふぅ呼吸を繰り返すトウマの枕元に置かれていたオモチャを手に取って、ユンユンがうっとり囁く。そんなの、考えるまでもない。しかし首を振ったところで、今更彼が「オシオキ」を止めてくれる気もしなかった。





「ひっ、あ、ぅうううっ、ゆんゆんんんん……ッ!」

 横向きに転がされて。赤子が丸まるような姿勢のままオモチャを入れられる。すっかり刺激に敏感になってしまった内部はきゅんきゅんソレを締め付けて、前立腺を擦り上げさせる。お腹の中が熱くて、ずっとイきっぱなしのような気さえするのに、陰茎からはトロトロ透明な体液が出るばかりで、射精には至れない。だというのに、たまらなく気持ちよくておかしくなりそうだ。

 口のテープを外してもらえたのは幸いだけれど、もうトウマは喘ぎ声を漏らす以上のことができなかった。

「ゆんゆ、とめて、きもちいい、抜いてくれよぉ……っ」

 身体を僅かに揺すってもがいたけれど、それがまた引き金になって内部を責められる。もうどうしていいかわからず、涙を零しながらユンユンの名を呼び続けた。向かいに寝転がったユンユンは、「フゥン」と微笑んだままトウマの首輪を指でなぞっている。

「止めて欲しいアルカ?」

「止めて欲しい……ッ、イ、イきたい、出したいぃい……っ」

 恥も外聞も無い。必死におねだりの言葉を口にすると、ユンユンは「なら」と優しく囁く。

「約束するアル。もうアイツに会ってもお金は渡さない。あと、貸した金はちゃんと回収するネ」

「……っ、そ、それ、は……っ」

「それともご主人サマは、こうしてこのままいじめられるほうが好きアルカ?」

「ひっ、あ、あああ、あっやめてぇええ……っ」

 トントン、とオモチャをつつかれて、意識が飛びそうになる。気持ちいい、やめてほしい、でもなんとかしてほしい。それで頭がいっぱいだ。

「やめてほしいなら、ホラ。ワタクシに約束するアル」

 ねえ、ご主人サマ。擦ってもらったらとっても気持ちいいし、出せて楽になれるアルヨ?

 つつー、と指先がフェザータッチで陰茎を撫で上げる。「ひぃい、んん……っ」とか細い悲鳴が漏れた。欲しい、触って欲しい。

 けれど。

「……できな、いぃ……っ」

 ぽろぽろ涙を零しながら、トウマが言う。ユンユンが眉を寄せた。それは怒っているようで、だからトウマは怖かったけれど、それでも、途切れ途切れに訴える。

「だって、……っ、アイツが、ホントに、困ってて、……俺しか、頼れないなら、俺が見放したら、ホントに……っ」

「……アイツが本当に困ってる保障なんて無いアル。ご主人サマに恩を感じてるかもわからないヨ?」

 そのうち恩を仇で返されるかもしれないアル。それでもいいアルカ?

 ユンユンの声は低いけれど静かだ。怒っているわけではないのかもしれない。トウマは快感にどうにかなってしまいそうなのを懸命に耐えながら、声を出す。

「そ、それも仕方ない……俺が、なんとかしてやれたのに、しないで、アイツが何処かで、辛い思いをするほうが、嫌なんだ……っ」

「…………」

「ユンユンが、俺のこと、思って、言ってくれてるのはわかる、わかるんだよ、ごめん、でも、俺は、アイツの友達だから、見放せなくて……」

 ぐすぐすと鼻をすすりながら訴える。ソウジとは小学生からの友人で。トウマだって彼には助けられてきた。それは金に関わるものではなかったけれど。

 トウマはあまり人に好かれなかった。外見の問題で遠ざけられたからだ。そんなトウマと、ソウジはいつも一緒に遊んでくれた。もちろん、ソウジはとんでもないことをしでかして教師に怒られてばかりで、トウマも巻き添えを食ったことだってある。

 それでも、トウマにとっては貴重な、大切な友人の一人なのだ。

「…………はぁ~~~~…………」

 ユンユンはこれ以上無い程盛大な溜息を吐いて、髪をクシャクシャに掻いた。猫耳がぴるぴるしている。そんな姿は少し可愛いと思ったけれど、次の瞬間にはそんな気持ちは引っ込む。彼が、困ったように笑いつつ、トウマの陰茎に手を伸ばしたからだ。

「ゆ、ユンユン……っ」

「ご主人サマの気持ちはよ~くわかったアル。ワタクシも納得するアルヨ。ただ……」

 たっぷり鳴き声を聞かせてもらってから、アル。ユンユンがくちゅりと音を立てて先端を親指の腹で撫で、トウマはまた悲鳴を上げた。


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