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第二章 異世界トーナメント編
幕間
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アイスヴァイン近郊にあるゼクトの森。
王都から近いため魔物も徹底的に排除されているこの森は、子供たちの遊び場としても人気のある森だ。
そんな森で、最近子供たちの間で噂になっていることがある。
なんでも、狼の怪物と黒いオーガが戦っているというのである。
とはいえ噂は噂で、実際に被害にあったものがいない以上、騎士団などが赴くことはできない。
よって、念のため調査ということで、一介の兵士である俺たちが二人一組で見回りにきたのだが。
「おい、なんかいたか?」
「いや、やっぱり子供の見間違いだろ」
そもそも最初から子供の噂話なんて信じてはいなかった。それでも子供の安全のためにということで、最近子供が産まれたばかりの兵士長から頼まれたら断ることができず。
「どうする? 奥までいってみるか?」
「そうだな。そこまでいって何もなければ帰ろうか」
森の奥。鬱蒼と木々が生い茂り、子供たちも滅多に足を踏み入れないその場所で、俺たちは見た。
灰色の人狼と、角のない黒いオーガが戦っている姿を。
淡い光の中二匹の怪物が踊るように戦うその光景は、さながら神話に出てくる魔神十二支の戦いのようで……。
「お、おい!」
その戦いに見入っていた俺の肩を、隣の相方がつかむ。
ここから離れるべきだ。相方の目ははっきりとそういっていた。
確かに、巻き込まれる前にこの場から逃げた方がいい。それはわかっているのだが。
『グオオ…………ッ!』
オーガの鋭い蹴りによって人狼が吹き飛び、近くの樹に背中からぶつかる。
「──なんだ、お前たちは?」
少したどたどしく感じるものの、人間の言葉を話すオーガ。いや、よくよく見れば、オーガのようなその男はれっきとした人間であった。
「い、いえ、なんでもありません!」
「ならば消えろ。邪魔だ」
「は、はい!」
相方が俺の腕をつかみ走り出した。仕方なく俺もそれについて行く。
「オーガに見えなくもなかったが、あれは人間だぞ。手助けしなくてよかったのか?」
「アホか! あきらかにあっちの男の方が圧倒していて、助けなんていらなかっただろ。
噂だった狼の怪物を倒してくれていたんだ。俺たちは邪魔にならないよう、さっさと離れるべきだ!」
確かに、相方のいう通りである。
ただ、俺は見ていたかったのだ。闘神のようなあの男の戦う姿を。
男だったら憧れないわけにはいかないだろう。己の拳ひとつで怪物を圧倒する英雄のごときあの姿を。
「とにかく、怪物は倒されたんだ。兵士長にもそう説明するぞ!」
「あ、ああ…………」
後ろ髪を引かれつつ、俺たちはその場を後にするのだった。
王都から近いため魔物も徹底的に排除されているこの森は、子供たちの遊び場としても人気のある森だ。
そんな森で、最近子供たちの間で噂になっていることがある。
なんでも、狼の怪物と黒いオーガが戦っているというのである。
とはいえ噂は噂で、実際に被害にあったものがいない以上、騎士団などが赴くことはできない。
よって、念のため調査ということで、一介の兵士である俺たちが二人一組で見回りにきたのだが。
「おい、なんかいたか?」
「いや、やっぱり子供の見間違いだろ」
そもそも最初から子供の噂話なんて信じてはいなかった。それでも子供の安全のためにということで、最近子供が産まれたばかりの兵士長から頼まれたら断ることができず。
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その戦いに見入っていた俺の肩を、隣の相方がつかむ。
ここから離れるべきだ。相方の目ははっきりとそういっていた。
確かに、巻き込まれる前にこの場から逃げた方がいい。それはわかっているのだが。
『グオオ…………ッ!』
オーガの鋭い蹴りによって人狼が吹き飛び、近くの樹に背中からぶつかる。
「──なんだ、お前たちは?」
少したどたどしく感じるものの、人間の言葉を話すオーガ。いや、よくよく見れば、オーガのようなその男はれっきとした人間であった。
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「ならば消えろ。邪魔だ」
「は、はい!」
相方が俺の腕をつかみ走り出した。仕方なく俺もそれについて行く。
「オーガに見えなくもなかったが、あれは人間だぞ。手助けしなくてよかったのか?」
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ただ、俺は見ていたかったのだ。闘神のようなあの男の戦う姿を。
男だったら憧れないわけにはいかないだろう。己の拳ひとつで怪物を圧倒する英雄のごときあの姿を。
「とにかく、怪物は倒されたんだ。兵士長にもそう説明するぞ!」
「あ、ああ…………」
後ろ髪を引かれつつ、俺たちはその場を後にするのだった。
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