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第二章 異世界トーナメント編

37 ウルフガイA

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「大会当日まで集中して訓練することにする」

翌日、アイスヴァイン近郊の森までくると、不動仁はそんなことをいい出した。

「訓練……すか?
でも、瞬雷に関しては使えるようになりましたし、連携に関しても大分上達したと思うんですが……」
「そうじゃない。お前自身の強さの底上げをする」

不動仁が腕を組んでアーベルの顔を見た。

「とはいっても、たった二週間足らずじゃあそこまで変わるもんでもないと思うんですが……」

アーベルの意見は最もである。二週間程度の特訓で強くなるなら誰も苦労はしないだろう。

「お前はただの人間ではない。そうだな?」
「はあ…………」

不動仁が何をいっているのか考えるアーベルだったが、やがてそれが何を意味するのか理解した。

「まさか、俺に変身しろっていうんですか!?」

変身。そう、アーベルは獣人ライカンスロープであり、獣へと変身することができるのである。
変身することで身体能力が向上するものの、欠点として理性が保てなくなり、見るもの全てに戦闘を挑む狂戦士バーサーカーとかしてしまう。
不動仁はアーベルのその獣人としての力をいっているのだろう。

「いや、いいましたよね?
獣人になると自分で自分を抑えられなくなるんすよ!」
「だからそれを抑え込む訓練をするといっているのだ」
「なっ!?」

果たして、そのようなことができるのだろうか。できるとすれば、確かに急激な戦闘能力の向上は可能だろう。

「とりあえず変身とやらをしてみろ。俺と戦いながら、自我をコントロールするすべを身につけるんだ」
「で、でも…………」

なおも躊躇するアーベル。

「昔変身してしまったとき、私たちや院長先生を傷つけてしまったことがあるんです。それまでは自分の血を見るだけで変身してたんですけど、今では瀕死にでもならない限り変身しないよう理性を保つよう努力して……」

リスティンがそう説明するけれど、そんな説明では、

「瀕死になればいいんだな?」

こうなるわけである。

「ちょ、本当に……」

アーベルがいい終わるよりも前に、不動仁の拳がアーベルの腹部へとめり込んだ。
以前手合わせしたときと違って、不動仁本気の一撃である。
物凄い音とともに、背後の太い樹にぶつかり吐血するアーベル。
一応、弟子にしてこれまで冒険をともにした(まあほとんど訓練だったけど)仲間だというのに、一切手加減がない。

「くっそ……マジ、かよ…………」

あまりのダメージに立つこともできないアーベルだったが、やがてその身体が変化を見せ始めた。

「あっ、あっ、ああああアアアアッッ…………!」

手足の筋肉が膨れ上がり、全身が灰色の獣毛で覆われていく。そして、顔つきが牙を剥く狼のそれへと変化していった。

『グオオオオオォォォ…………ッ!』

人狼。これこそが、アーベルの獣人ライカンスロープとしての姿である。
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