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第二章 異世界トーナメント編
32 ハンター試験
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「エーブリエタース!」
まず仕掛けたのは、リスティンだった。
酩酊の魔術。六識魔術の一種で、相手を酩酊したような状態にする魔術だ。
ちなみに、不動仁やアステリオスには通用しなかった。魔神であるアステリオスはともかく、不動仁が酩酊しなかった理由はわからない。
前にご飯を食べた時も、私たちが呑んだ量を合わせた以上に呑んでたけど全く酔っ払っていなかったし、単純に内蔵が強いのかもしれない。
そして、ミノタウロス・レックスにはそれほど大きな効果はなかったようだ。
ややぐらつきながらも真っ直ぐ走ってくるミノタウロス・レックス。
「ダメか……」
「これならどうです!」
イーサン必殺の神殺しの矢がミノタウロス・レックスの赤い瞳に向かって飛んだ。
必中に見えたその矢を、ミノタウロス・レックスは手にした巨大な斧で防御する。
撃ち落とすのではなく、盾にしたのか。あれだけ大きいにも関わらず、俊敏に動けるところもずるいわよね。
「チッ…………!」
「はわわ……」
舌打ちしながら左右にわかれるイーサンとリスティン。
そこでミノタウロス・レックスは、迷うことなくリスティンを追った。
叩きやすそうなところから攻撃する気だろう。
身体能力の違いに加え、歩幅の違いからあっという間に距離が縮まる。
そうして、ミノタウロス ・レックスがリスティンへと向かって斧を振り上げた瞬間、真逆の方向から現れたアーベルの槍がミノタウロス・レックスのアキレス腱に突き刺さった。
ミノタウロス・レックスが斧で眼前を覆い、イーサンの矢を防御した一瞬の隙に、瞬雷によって背後に移動していたのだろう。
それからさらに雷槍によって、死角から巨木のようなミノタウロス ・レックスの脚に槍を突き立てたのだ。
実によく連携がとれている。
『ブモオオオオォォォォ…………!』
怒り狂うミノタウロス・レックス。膝をつき、背後を振り返ったところでその右目に颯然と風を切って飛んだ矢が突き刺さった。
見れば、イーサンが弓を構え立っている。
ミノタウロス ・レックスが堪らず顔を上げ右目を抑えたとき、
「トニトルス!」
リスティンの落ち着いた声に応えるように、雷が矢の上に落ちた。
『グ、ガ…………ガァッ!』
それでもなお、驚異的な生命力を見せるミノタウロス・レックス。
「油断するな、あとは遠距離で………」
足の使えなくなったミノタウロス・レックスに対し、三人が距離をとって攻撃をしようとしたところ、瀕死のミノタウロス・レックスは思わぬ反撃をみせた。
石床を破壊し、投げるといった方法で三人を攻撃しだしたのである。
「えっ!」
「なっ?」
「きゃああ!」
これはアーベルたち三人にとっても予想だにしない攻撃であり、それまで完璧だった連携はもろくも崩れ去ったのだった。
数時間後。
「ようやく、倒せた…………か?」
穂先でミノタウロス・レックスの巨体をチョンチョンと突くアーベル。
ミノタウロス・レックスは大の字に横たわり、ピクリとも動く気配はない。
「雷の術まではよかったがな。あそこで畳み掛けるべきだった」
そう評したのは不動仁である。
腕を組みつつ、疲れ果てた様子の三人組を見下ろしていた。
「そうっすね。あそこで俺が行くべきでした」
「あそこまでは事前に打ち合わせたように上手く動けたんですが」
「予想外の反撃で連携がとれなくなってしまいました……」
反省する三人。
「まあ、以前は他の冒険者と協力してようやく倒せた魔物を三人で倒せたんだから、もっと自信を持っていいと思うわよ」
落ち込む三人を励ましつつ、私は皆に食事を配るのだった。
まず仕掛けたのは、リスティンだった。
酩酊の魔術。六識魔術の一種で、相手を酩酊したような状態にする魔術だ。
ちなみに、不動仁やアステリオスには通用しなかった。魔神であるアステリオスはともかく、不動仁が酩酊しなかった理由はわからない。
前にご飯を食べた時も、私たちが呑んだ量を合わせた以上に呑んでたけど全く酔っ払っていなかったし、単純に内蔵が強いのかもしれない。
そして、ミノタウロス・レックスにはそれほど大きな効果はなかったようだ。
ややぐらつきながらも真っ直ぐ走ってくるミノタウロス・レックス。
「ダメか……」
「これならどうです!」
イーサン必殺の神殺しの矢がミノタウロス・レックスの赤い瞳に向かって飛んだ。
必中に見えたその矢を、ミノタウロス・レックスは手にした巨大な斧で防御する。
撃ち落とすのではなく、盾にしたのか。あれだけ大きいにも関わらず、俊敏に動けるところもずるいわよね。
「チッ…………!」
「はわわ……」
舌打ちしながら左右にわかれるイーサンとリスティン。
そこでミノタウロス・レックスは、迷うことなくリスティンを追った。
叩きやすそうなところから攻撃する気だろう。
身体能力の違いに加え、歩幅の違いからあっという間に距離が縮まる。
そうして、ミノタウロス ・レックスがリスティンへと向かって斧を振り上げた瞬間、真逆の方向から現れたアーベルの槍がミノタウロス・レックスのアキレス腱に突き刺さった。
ミノタウロス・レックスが斧で眼前を覆い、イーサンの矢を防御した一瞬の隙に、瞬雷によって背後に移動していたのだろう。
それからさらに雷槍によって、死角から巨木のようなミノタウロス ・レックスの脚に槍を突き立てたのだ。
実によく連携がとれている。
『ブモオオオオォォォォ…………!』
怒り狂うミノタウロス・レックス。膝をつき、背後を振り返ったところでその右目に颯然と風を切って飛んだ矢が突き刺さった。
見れば、イーサンが弓を構え立っている。
ミノタウロス ・レックスが堪らず顔を上げ右目を抑えたとき、
「トニトルス!」
リスティンの落ち着いた声に応えるように、雷が矢の上に落ちた。
『グ、ガ…………ガァッ!』
それでもなお、驚異的な生命力を見せるミノタウロス・レックス。
「油断するな、あとは遠距離で………」
足の使えなくなったミノタウロス・レックスに対し、三人が距離をとって攻撃をしようとしたところ、瀕死のミノタウロス・レックスは思わぬ反撃をみせた。
石床を破壊し、投げるといった方法で三人を攻撃しだしたのである。
「えっ!」
「なっ?」
「きゃああ!」
これはアーベルたち三人にとっても予想だにしない攻撃であり、それまで完璧だった連携はもろくも崩れ去ったのだった。
数時間後。
「ようやく、倒せた…………か?」
穂先でミノタウロス・レックスの巨体をチョンチョンと突くアーベル。
ミノタウロス・レックスは大の字に横たわり、ピクリとも動く気配はない。
「雷の術まではよかったがな。あそこで畳み掛けるべきだった」
そう評したのは不動仁である。
腕を組みつつ、疲れ果てた様子の三人組を見下ろしていた。
「そうっすね。あそこで俺が行くべきでした」
「あそこまでは事前に打ち合わせたように上手く動けたんですが」
「予想外の反撃で連携がとれなくなってしまいました……」
反省する三人。
「まあ、以前は他の冒険者と協力してようやく倒せた魔物を三人で倒せたんだから、もっと自信を持っていいと思うわよ」
落ち込む三人を励ましつつ、私は皆に食事を配るのだった。
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