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一章 異世界迷宮編
23 呪術開戦
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「地下牢、ですね」
イーサンの言う通り、二十三階からは、地下牢のような迷宮が広がっていた。
まさにダンジョンである。
「ここまで来たのは私たちも初めてです」
「いつもあのアンデットたちには苦労させられてたからな」
「まさかこんなに簡単に踏破できるとは。生きた迷宮といい、ここにくるまでまだ三日しか経っていませんよ」
いつもならひと月は優にかかる道程だそうだ。
確かにそれに比べれば驚くべき早さである。
そして、迷宮の環境が変わり、これまで通り出現する魔物もまた変化する。
「バフォメットだ!」
そう叫んだアーベルの視線の先に、それはいた。
黒山羊の頭に人間の身体、背中には鴉のような黒い翼をもつ魔物──バフォメットである。
彼我の距離は未だ離れているものの、バフォメットは気にせず両の手を前へと突き出した。
すると次の瞬間、バフォメットの周りにいくつもの炎の塊が現れこちらへと飛んでくる。
人間にも魔術師という魔力を術として扱う存在がいるように、魔物の中にも魔力を術として扱うことのできる存在がいるのだ。
人間の扱う魔術と区別するために、それを呪術と呼ぶ。
そんな呪術の炎を前に、不動仁は前へと進みでると、
「こぉっ!」
「デター!
MA・WA・SHI・U・KE!」
盗賊のとき同様、両手の円の動きで炎を叩き落とす不動仁。
「「「嘘ぉ!?」」」
三人組の驚く姿に、ドッキリ大成功みたいな快感を少しだけ感じていると、不動仁がバフォメットに向かって駆け出した。
全弾叩き落とされることは、バフォメットにとっても予想外だったようで、対応に遅れて棒立ちだったところに、不動仁の拳が突き刺さり、心臓を破壊されたことで絶命した。
その後も石像の怪物であるガーゴイルが水の呪術を使ってくるも、結果は変わらず。何度か休憩をはさみつつ、私たちは先へ先へと進んでいった。
そうして辿り着いた地下二十九階。
ひとつ前の階層から呪術を使うミノタウロスの上位種であるモレクが現れたが、その強さはミノタウロス・レックスほどではなく。アーベルたちは倒すのに苦労していたが、三人で協力すれば問題なく倒せるレベルであった。
「とはいえ、ジンさんや姐さんがいなければ、今こんなに余裕はなかっただろうし、ここまで降りてくることもできなかったけどな」
ギルドの記録においても、これまでの最高到達記録は二十八階層であり二十九階層は初の快挙であった。
いや、もしかしたらその下に到達した人間もいるのかもしれないが、戻ってくることができなかったのかもしれない。
おそらくだが、この先の三十階層こそ、この世界でも指折りの魔物である迷宮の主がいる最下層なのだから。
イーサンの言う通り、二十三階からは、地下牢のような迷宮が広がっていた。
まさにダンジョンである。
「ここまで来たのは私たちも初めてです」
「いつもあのアンデットたちには苦労させられてたからな」
「まさかこんなに簡単に踏破できるとは。生きた迷宮といい、ここにくるまでまだ三日しか経っていませんよ」
いつもならひと月は優にかかる道程だそうだ。
確かにそれに比べれば驚くべき早さである。
そして、迷宮の環境が変わり、これまで通り出現する魔物もまた変化する。
「バフォメットだ!」
そう叫んだアーベルの視線の先に、それはいた。
黒山羊の頭に人間の身体、背中には鴉のような黒い翼をもつ魔物──バフォメットである。
彼我の距離は未だ離れているものの、バフォメットは気にせず両の手を前へと突き出した。
すると次の瞬間、バフォメットの周りにいくつもの炎の塊が現れこちらへと飛んでくる。
人間にも魔術師という魔力を術として扱う存在がいるように、魔物の中にも魔力を術として扱うことのできる存在がいるのだ。
人間の扱う魔術と区別するために、それを呪術と呼ぶ。
そんな呪術の炎を前に、不動仁は前へと進みでると、
「こぉっ!」
「デター!
MA・WA・SHI・U・KE!」
盗賊のとき同様、両手の円の動きで炎を叩き落とす不動仁。
「「「嘘ぉ!?」」」
三人組の驚く姿に、ドッキリ大成功みたいな快感を少しだけ感じていると、不動仁がバフォメットに向かって駆け出した。
全弾叩き落とされることは、バフォメットにとっても予想外だったようで、対応に遅れて棒立ちだったところに、不動仁の拳が突き刺さり、心臓を破壊されたことで絶命した。
その後も石像の怪物であるガーゴイルが水の呪術を使ってくるも、結果は変わらず。何度か休憩をはさみつつ、私たちは先へ先へと進んでいった。
そうして辿り着いた地下二十九階。
ひとつ前の階層から呪術を使うミノタウロスの上位種であるモレクが現れたが、その強さはミノタウロス・レックスほどではなく。アーベルたちは倒すのに苦労していたが、三人で協力すれば問題なく倒せるレベルであった。
「とはいえ、ジンさんや姐さんがいなければ、今こんなに余裕はなかっただろうし、ここまで降りてくることもできなかったけどな」
ギルドの記録においても、これまでの最高到達記録は二十八階層であり二十九階層は初の快挙であった。
いや、もしかしたらその下に到達した人間もいるのかもしれないが、戻ってくることができなかったのかもしれない。
おそらくだが、この先の三十階層こそ、この世界でも指折りの魔物である迷宮の主がいる最下層なのだから。
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