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一章 異世界迷宮編
3 進撃の闘神
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「お前もついてくるのか」
「いやまあ、ついて行きたくはないんだけど、私はあんたのお目付役というか、同行しなきゃ上司に怒られるので仕方なく、ね」
「そうか」
そうして連れ立って歩くこと数十分。
「…………」
いたたまれない。気まずいったら仕方ない。
こんな歩く殺戮兵器と一体何を話せばいいっていうのよ。
でもまあ、今後のことを考えると、少しくらいは打ち解けておいた方がいいのかもしれない。
「ね、ねぇ。あんたってば何でそんなに戦うのが好きなの?」
「……戦うこと以上に面白いと思えることがないからな」
「本当に戦闘狂なのね。いっとくけど、さっきのオーガなんてこっちじゃそれほど強くもないからね。恐竜以上に大きなドラゴンとかそれを倒す人間とかゴロゴロいるんだから」
「ふふん、楽しみだ」
いやまあ、流石にゴロゴロってーのは言い過ぎなんだけれども。
そんなこんなで会話らしきものをしていると、やがてそれは見えてきた。
四方を高い壁で囲った砦。正面には大きな門があり、壁の上には見張りらしき男たちの姿がある。
手には弓が握られており、あれで門に近づく人間を追い払うのだろう。
「で、どうすんの?」
「どうする、とは?」
「いやいや、正面には弓を持った見張りがいるし」
「お前は少し離れてからついてこい」
そういうと、不動仁は何も問題ないといった様子で門へと歩いていく。
「おい貴様、そこで止まれ!」
見張りの男が弓を構えるも、不動仁の歩みは止まらない。
「貴様ッ!」
男が弓を射かける。颯然と風を切って飛んだ矢が、目標へ届く前に忽然と消えた。
一体どこに、と思っていると、弓を射かけた見張りの男が、壁の上から地面へと落ちてくる。
その額には、何故か放ったはずの矢が。
「な、何をした!?」
他の見張りが慌てて弓を射かけると、今度は私にも不動仁が何をしたのかがわかった。
飛んでくる矢をつかみ投げ返したのだ。
あまりにも自然で流れるような動きに、美しさすら覚える。
一体どうやったらこんなことができるようになるというのだろうか。
私と同じように、何が起きたのかを理解した他の見張りは、矢を射ることができずに、不動仁が門の前までやってくるのを黙って見ているしかなかった。
「そ、その門は大の大人が四人がかりで開くものだ。わかったらとっとと……」
見張りがそういったときだった。
おもむろに拳を振りかぶった不動仁だが、次の瞬間爆音とともにその拳が門を破壊する。その威力たるや、さながらロケット弾のようだった。
そりゃ二トントラックも破壊されるわけである。
「な、何だ!?」
「敵襲か!」
「見張りは何をしていた!?」
慌てて駆けつけてきた盗賊たち。
彼らは門を破壊して入ってきた不動仁を取り囲むと、各々刃物を取り出して襲いかかる。
だが、結果はゴブリンのときと同じだった。
瞬く間に数人が殺され、わずかに息が残ったものも、ただ息ができるだけの状態で、血の海に浮かぶ。
人間相手でもこれか。まあ、悪人に人権がないっていうのは、ドラまたさんもいっていたし、私も納得するところではあるが。
すでに十数人の盗賊が地に伏す中で、新たに現れたのは、フードを纏った痩身の男だった。
「先生!」
「慌てて呼びにきたかと思えば、相手は武器も持たない男ひとり……といいたいところだが、この様子を見る限りそうもいってはいられないようだな」
男は周囲の様子を伺うと、不動仁を睨めつける。
「よくもまあ、やってくれたものだ。どこの誰かは知らんが、とりあえず死ね!」
男は右手を前に突き出すと、そこに彫られた文字のような紋様をなぞり、それを口にする。
「イグニス!」
男の手のひらから生まれたバスケットボール大の炎の塊が、真っ直ぐ不動仁の元へと向かって放たれた。
「いやまあ、ついて行きたくはないんだけど、私はあんたのお目付役というか、同行しなきゃ上司に怒られるので仕方なく、ね」
「そうか」
そうして連れ立って歩くこと数十分。
「…………」
いたたまれない。気まずいったら仕方ない。
こんな歩く殺戮兵器と一体何を話せばいいっていうのよ。
でもまあ、今後のことを考えると、少しくらいは打ち解けておいた方がいいのかもしれない。
「ね、ねぇ。あんたってば何でそんなに戦うのが好きなの?」
「……戦うこと以上に面白いと思えることがないからな」
「本当に戦闘狂なのね。いっとくけど、さっきのオーガなんてこっちじゃそれほど強くもないからね。恐竜以上に大きなドラゴンとかそれを倒す人間とかゴロゴロいるんだから」
「ふふん、楽しみだ」
いやまあ、流石にゴロゴロってーのは言い過ぎなんだけれども。
そんなこんなで会話らしきものをしていると、やがてそれは見えてきた。
四方を高い壁で囲った砦。正面には大きな門があり、壁の上には見張りらしき男たちの姿がある。
手には弓が握られており、あれで門に近づく人間を追い払うのだろう。
「で、どうすんの?」
「どうする、とは?」
「いやいや、正面には弓を持った見張りがいるし」
「お前は少し離れてからついてこい」
そういうと、不動仁は何も問題ないといった様子で門へと歩いていく。
「おい貴様、そこで止まれ!」
見張りの男が弓を構えるも、不動仁の歩みは止まらない。
「貴様ッ!」
男が弓を射かける。颯然と風を切って飛んだ矢が、目標へ届く前に忽然と消えた。
一体どこに、と思っていると、弓を射かけた見張りの男が、壁の上から地面へと落ちてくる。
その額には、何故か放ったはずの矢が。
「な、何をした!?」
他の見張りが慌てて弓を射かけると、今度は私にも不動仁が何をしたのかがわかった。
飛んでくる矢をつかみ投げ返したのだ。
あまりにも自然で流れるような動きに、美しさすら覚える。
一体どうやったらこんなことができるようになるというのだろうか。
私と同じように、何が起きたのかを理解した他の見張りは、矢を射ることができずに、不動仁が門の前までやってくるのを黙って見ているしかなかった。
「そ、その門は大の大人が四人がかりで開くものだ。わかったらとっとと……」
見張りがそういったときだった。
おもむろに拳を振りかぶった不動仁だが、次の瞬間爆音とともにその拳が門を破壊する。その威力たるや、さながらロケット弾のようだった。
そりゃ二トントラックも破壊されるわけである。
「な、何だ!?」
「敵襲か!」
「見張りは何をしていた!?」
慌てて駆けつけてきた盗賊たち。
彼らは門を破壊して入ってきた不動仁を取り囲むと、各々刃物を取り出して襲いかかる。
だが、結果はゴブリンのときと同じだった。
瞬く間に数人が殺され、わずかに息が残ったものも、ただ息ができるだけの状態で、血の海に浮かぶ。
人間相手でもこれか。まあ、悪人に人権がないっていうのは、ドラまたさんもいっていたし、私も納得するところではあるが。
すでに十数人の盗賊が地に伏す中で、新たに現れたのは、フードを纏った痩身の男だった。
「先生!」
「慌てて呼びにきたかと思えば、相手は武器も持たない男ひとり……といいたいところだが、この様子を見る限りそうもいってはいられないようだな」
男は周囲の様子を伺うと、不動仁を睨めつける。
「よくもまあ、やってくれたものだ。どこの誰かは知らんが、とりあえず死ね!」
男は右手を前に突き出すと、そこに彫られた文字のような紋様をなぞり、それを口にする。
「イグニス!」
男の手のひらから生まれたバスケットボール大の炎の塊が、真っ直ぐ不動仁の元へと向かって放たれた。
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