上 下
3 / 50
プロローグ

3

しおりを挟む
「えー、まず私は神の一人。運命と転生の女神クロトと申しま」
「何を言ってるんだお前」
「いやいやいや、本当本当、これマジだから。はー、こういうやりとりが嫌だから、テンプレがいいのに」
「まあいい。話を続けろ、女」
「ぞんざい!
いやまーもういいけどさ。とりあえず簡単に言うと、神の仕事というのは、数多ある人間世界の管理で……」
「嘘だな」
「はぁ!?」
「嘘はつくな。俺は相手のわずかな挙動から嘘を見抜くことができる」

いやいやいやいや、何それ怖い。

「あー、もう正直に話しちゃった方がいいんじゃないっすか?」
「いや、別に今のも嘘ってわけじゃ…………あー、もう! わかったわよ。
簡単に言うと、創造した世界の住民生活を覗くことが神々にとっての娯楽なんだけど、平凡な人間の日常を追っても面白くないでしょ。だからちょっとしたスパイスを加えるわけ。
そのスパイスにも流行り廃りがあって、最近の流行として異世界転生があるわけよ」
「異世界転生?」
「あんたも日本に住んでたなら知ってるんじゃない?
そうしたアニメや漫画やラノベは腐るほどあるし」
「知らんな。そうしたものに興味はない」
「……さいですか。簡単にいうと、定期的にこちらの世界の魂を異世界に送って、色々活躍してもらうの。活躍する人間を主人公として鑑賞するってわけよ。
すぐに死んでも面白くないし、その他大勢の人間と一緒にしても面白くないから、色々とチートな能力を与えるんだけどね。それが私の仕事」

高い幸運度や周囲の環境に加えて、全ての魔術を使える適正や技をコピーするスキルなど、何かしら特化させることで差別化、つまりは主人公補正を行うわけである。
俺tueeeは天上でも人気なのだ。

「あなたの場合、死んでないから転生することはできないし、転移するにしても肉体を作り変えることができないから、そうした能力が得られないわけ。
ちなみになんだけど、死んでみる気はない?」
「ありえんな。俺は俺の力を試したいだけで、おかしげな能力などに頼るつもりは毛頭ない。大体、俺が死ぬときは俺が敗れたときだ」

それ以外はありえん、と鼻で笑う不動仁。

「正直、なんの力も付与することなく生身のままの人間を送り出すなんてことした事ないのよねー。上もなんていうか……」

正直、特例を認めることで、仕事中に漫画を読んでいたことがバレるのは困るのだ。
ここはなんとか誤魔化して、帰って頂くのがベターだろう。
──とそのとき、タイミングよくヘベの胸ポケットからスマホの着信音が流れる。
メールだったようで、ヘベはそれを確認すると、スマホを私に向かって放り投げた。読めということだろう。

「あっ、その上(親父殿)からっす」
「あのジジイ、地獄耳だ絶対」

ハンター協会の会長並だ。仕方なしにそれに目を通すと、

『特例として認める。ちなみに、仕事をサボっていた罰として、クロトもついていくように。
地獄耳のジジイより』

「はっ? えっ、ちょ…………まっ」
「引き継ぎは私の方でやっておくんで、いってらっしゃーい」

見れば、不動仁と私の身体が足元からすっと消え始めている。転送が始まったのだ。

「いやあああああああぁぁぁぁ…………!!?」
「~~♪」

ヘベが歌うとあるラジオ体操の歌が聞こえたところで、私の視界は暗転した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

おっさんの異世界建国記

なつめ猫
ファンタジー
中年冒険者エイジは、10年間異世界で暮らしていたが、仲間に裏切られ怪我をしてしまい膝の故障により、パーティを追放されてしまう。さらに冒険者ギルドから任された辺境開拓も依頼内容とは違っていたのであった。現地で、何気なく保護した獣人の美少女と幼女から頼られたエイジは、村を作り発展させていく。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

異世界無宿

ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。 アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。 映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。 訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。 一目惚れで購入した車の納車日。 エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた… 神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。 アクション有り! ロマンス控えめ! ご都合主義展開あり! ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。 不定期投稿になります。 投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

世界を滅ぼす?魔王の子に転生した女子高生。レベル1の村人にタコ殴りされるくらい弱い私が、いつしか世界を征服する大魔王になる物語であーる。

ninjin
ファンタジー
 魔王の子供に転生した女子高生。絶大なる魔力を魔王から引き継ぐが、悪魔が怖くて悪魔との契約に失敗してしまう。  悪魔との契約は、絶大なる特殊能力を手に入れる大事な儀式である。その悪魔との契約に失敗した主人公ルシスは、天使様にみそめられて、7大天使様と契約することになる。  しかし、魔王が天使と契約するには、大きな犠牲が伴うのであった。それは、5年間魔力を失うのであった。  魔力を失ったルシスは、レベル1の村人にもタコ殴りされるくらいに弱くなり、魔界の魔王書庫に幽閉される。  魔王書庫にてルシスは、秘密裏に7大天使様の力を借りて、壮絶な特訓を受けて、魔力を取り戻した時のために力を蓄えていた。  しかし、10歳の誕生日を迎えて、絶大なる魔力を取り戻す前日に、ルシスは魔界から追放されてしまうのであった。

処理中です...