三日坊主の幸せごっこ

月澄狸

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居場所は信じるもの

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 仕事のストレスを、仕事で忘れる。

 正確には。職場の人が愚痴を言っているのを聞いて、「私のことかな」と、ビクビクして、ズーンときて、泣きたくなって、落ち込んで。私自身はこうやって散々陰口書いているくせに、自分のは平気で、他の人の陰口が聞こえてくる世界が怖くて、気が休まらなくて。

 けど一人で黙々と仕事の作業に没頭して、終わらせていくのは快感なのである。
 人より遅かろうが何だろうが、今の作業自体は好きなんだなと思える。それは良いことだ。前の仕事では作業自体、好きと思えなかったから。

 陰口を聞いてしんどくなるのは、きっとどこも一緒。接客の人なんか、口コミでひどいこと書かれている。そんな世の中で良いとは思わないけど、そういう世の中なのだ。きっとどこへ行っても、みんなが陰口言っていて、鈍臭い私も何か言われるであろうことは一緒だ。
 お店に出かけたら、お店の人が何か仲間のことをおっしゃっていたりするのだ。「ここでもそうか。世界中そうか」としんどくなるけれど。逃げ場はないけれど。逆にそれが世界なんだから、気にすることないのだ。
 仕事ができる人でさえ、「あの人性格キツい」とか言われていたりするんだから。何も言われない、嫌われない、疲れない、安泰な人などいない。みんな大変なんだ。

「みんな大変」な世界ってやだな。「みんな楽」であってほしいし、せめて選べば「楽」になれる世界であってほしい。
「楽」なんて、「今楽にしてあげるね」とか「これできっと楽になれる」とか、「安楽死」みたいな不穏な響きさえある。死が救いだなんて、そんなままじゃ嫌だ。

 私のせいじゃない。みんなのせいでもない。こういう世界なんだ、しょうがない。と諦めることにするものの、やはり仕事が終わって「ヤッター!」なときにみんなが陰口言っていると、ずーんとくる。できるだけ気にしない……ができなくて、メソメソ、引きずる。

 それでも優しくしてくれる人もいる。こないだも技能実習生(?)の子が帰り際に、笑顔で手を振ってくれた。可愛い。癒される。
 師匠(いつもお世話になっている先輩。87歳くらい?)もいつもお菓子をくださる。優しくて、いつも「ありがとう」と言ってくださる。
 上司(?)の方たちも、どうも私を優しい人と組ませてくださっている気がする。彼も通りすがりにハグしてくれる。

 大丈夫だ。居場所はある。信じるか信じないかだ。


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