三日坊主の幸せごっこ

月澄狸

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身の丈に合わない金銭感覚

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 どこかの本に、「金持ちになりたければそのように振る舞え」と書いてあったので、私はそう信じた。


 ……本って、どの本?
 どっかで聞いた名言みたいなヤツだったんじゃない? いや、ウェブに書いてあった言葉?
 本当にそういうニュアンスだった?


 分からないが私は、元から物の値段をあんまり気にしない。そして「それで良いんだ」と思った。

 だってお金持ちは、欲しいものは買うだろうし。「ちょっと待って、それ100円? 500円?」なんて気にしないだろうし。


 欲しかったら何円でも買えばいい。値段なんて気にして長考している暇があるなら、その間に自分の作品を書けばいい。

 欲しいものは買い、書きたいものを書く。
 私の書くものには価値があるのだ。自分を信じればいいのだ。お金は後からついてくる。


 ……みたいな解釈で、今も金銭感覚が狂ったまま。


 将来は? 老後は? と言ったって、今やシステムも何も信用できない。世の中はコロコロ変わる。

 また、どこかのページに書いてあったが、お金の価値は変わる。必死でお金を貯めたって、その価値はガクッと下がるかもしれない。

 たしかに、今の物価高を見ているとそう思う。必死で貯めた100万円の価値が10万円になったら馬鹿らしい。


 無職だった頃、「5分聴くだけで大金持ちになれるBGM」などをYouTubeで何度か聴いた。無職だから当然、お金など何も入ってこなかったが……。あの効果はそろそろ出るかな?

 未来では健康寿命も伸びて、自分が70歳・80歳になったときに、昔のイメージの70歳・80歳とは全然違うかもしれない。世の中も素晴らしいかもしれない。エコで豊かな天国。


 だから私は今ストレス発散に、高かろうが安かろうが美味しいものを食べ、欲しいものを買い、楽しんで生き抜けばいいのだ。楽しい時代が来るまで、生きて待つのだ。
「買いたいものも買えない、やりたいこともできない自分」じゃなく、豊かな自分を表現し、やがてそれが本当になるのだ。


 ……って解釈で生きているけど、一向に私の作品の価値が上がりそうな気配もなく、上がるのは物価ばかり。

 以前手が届いたものがどんどん遠くなっていく。
 ふと見渡せば、以前見えていた希望が見当たらない。まだ借金はないけど貯蓄もない。金銭感覚は狂ったまま。


 ……大丈夫? 大丈夫?

 そりゃ、稼いでいる人は稼いでいるなりの金銭感覚だから、隣の人が高いものを買っているのは大丈夫なのだ。隣の人は稼いでいるから。

 けど私は?
 職場ではお荷物。今は不景気。大して稼いでもいない。もっと不景気になったら、私のようなポンコツなどクビにされるんじゃあ……。


 不安にはなるが、「いや、もっと良い作品を書けばいいだけだ!」と再び現実逃避に没頭。しかも作品を書くどころか、なんだかんだ言い訳して結局遊んでいるだけ。

 まぁ写真も、ラクガキみたいな文章も、全部作品だと思っているんだけど。作品と言い出せば全部作品だけど。


 ……求められない作品。存在しない需要。狂った金銭感覚とプライド。都合よく時代待ち。

 本当に大丈夫か!?


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