三日坊主の幸せごっこ

月澄狸

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偽善者の旅路

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 苦手だった先輩が、私の仕事を褒めていたと、他の方から教えていただいた。
 そんなふうに評価してくださっていたなんて……。苦手だと思ったり、イライラしたり、陰口叩いて申し訳なかったなぁ。

 やっぱり裏表のある自分は良くない。そして人間関係を軽視してはいけない。

 人と出会うということは関わるということであり、人と関わるということは、人に対して誠意や敬意を持つべきという、責任が伴うんだ……。本来それを「マナー」と呼ぶんだな、きっと。

 人を傷つけないよう大事にしなきゃ。その初歩が「人を殺さない」「怪我をさせない」なんだな。次が迷惑をかけ(すぎ)ない、それから思いやりなんだろうなぁ。


 店員さんなどの町の人でも、何度か会えば顔を覚えて話しかけてくださる。
 誰とも赤の他人のままではい続けられないし、本当は世界に「他人事」などどこにも存在しないんだなぁ……。他人事があるとすれば、ただ見て見ぬ振り、見捨てているだけなのだろう。

 人と出会い、関わり、じわじわと関係が深まり、やがて相手が意外なほど愛情や思い入れを持ってくださっていたと知ることになる。大袈裟かもしれないが、みんな家族ということか。


 ごめん、まだ私は常に「ON」でいられないから、陰口を言うし悪態もつくし疑うし、裏切りもする。こんなに親切にしていただいているのに、大してお役にも立てず、期待に応えられない。負担ばかりかけて、自分のことばっかりで。


 日々……。自分が築いてきた、構築してきた「信頼関係」というもの。私はその重みを理解していないから、平気で裏表のある自分でい続ける。けれど自分の人間関係を保つキーは自分であり、ドミノ倒しのようにみんなとの関係を壊してしまうことも簡単なのだろう。

 脆くて危うい感じがする。偽善者を演じることで、無意味にハードルを上げてしまった気もする。私はただ面倒ごとを避けようとして、良い顔をする練習をしてきただけなのに。もうその程度の薄っぺらいモチベーションじゃいられない気がする。


 報いというものがあるだろうか。何を受け取ることになるだろうか。
 良かれと思って。または後ろめたく、騙しながら生きて。

 人の心をないがしろにしちゃいけなかったんだ……本当は……。


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