三日坊主の幸せごっこ

月澄狸

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怠惰であるための勉強

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 世の中、逃れようのない苦労は色々あると思う。
「仕事」とか。「家族」とか。「老い」や「死」とか。

 器が大きい人なら、それを「苦労」とは呼ばないだろうけど。自分の器が小さいことを、自覚しておきたい。
 どうも人には本当に、器の大きさの違いがある。若いのにすごく飲み込みが早い子もいれば、大人になってもグズグズしている、私のような者もいる。

 やらなくて済む苦労はできるだけ選びたくない。拾わなくて済むものは拾わない。


 ただ、「逃げ」て「やらない」で済ませると、あとでかえってひどい事態に陥ることもあると思う。アリとキリギリスのキリギリスのように。

 本当にそれは、やらないといけないのか。
 本当に、やらなくていいのか。
 何が何でもやりたいのか、やりたくないのか。
 見極めたい。

「どうしようもなくやりたい」「どうしようもなくやりたくない」ならしょうがない。
 工夫するとか、代替案を考えるとかするしかない。
「どうしても会社に行きたくない」「会社に行くくらいなら死にたい」なら、それ以外の方法を探さねば。収入が安定しない、借金を背負う、病気になるなどの、リスクを伴うとしても。


 世の中、「予想外」は色々とあるのだろう。
 ルールが変わるとか。新しい技術が生まれるとか。流行病とか、今の急な値上げとか。

 ただ、「それくらいは予習・予測・予想できるのでは」という「嘆き」も多々あるのだろう。
 猫を飼ったら家具で爪を研がれたとか。子どもが生まれたらうるさいとか。壊れかけの家電を使い続けていたら、めちゃくちゃ忙しいときに壊れたとか。食べ過ぎて太ったとか。食べ物を注文しすぎて大量に余ったとか。


 子どもや動物が「予想外」に直面したときのリアクションは可愛い。
 アライグマが、ケーキを洗ったら溶けてなくなってしまったので、呆然としているとか。
 子どもが大事な物を持ちたいと言うので持たせたら、落とすとか。

 しかし時間は限られているもので、我々大人はできれば「こんなはずじゃなかった」を減らしたい傾向にある。


「ペットを飼う」は選ぶ必要はない。
「友達付き合い」も、それが負担になるならば、「選ばない」ことができるかもしれない。
 ミニマリストになれば、物の整理やメンテナンスや掃除などの手間が、あれこれ省けるのかもしれない。


 やり始めても、飽きずに続けられるか。自分に合っているか。
 世の中、分からないことだらけ。「思っていたのと違った」「思い通りにいかない」ことだらけ。


 分からない、具体的なイメージが沸かない、そんな状態で選ばなくてはならないことだらけだ。進路とか。
 人生100年時代なのに、たかだか20歳になるくらいまでに、大部分の重要な選択が終了してしまうなんて。まだ脳が成熟してもいないうちに、選ばされたり、あるいは押し付けられたり。

 結婚適齢期も出産適齢期も大体、20代くらい。そんな若いうちに、あれもこれも決定して、急いで動けだなんて。
 そりゃ、生き物はもっと短い寿命の中で頑張っているけど。人間は人間で、マナーとかルールとか制約とかタイミングもあるし。ちょっとキツいんじゃない?


 趣味くらいは三日坊主で済ませられても、大抵のことは、手を出してしまうと、途中で放り出せない。
 選べるうちに。選ぶ前に。不必要なものと、やっておいた方がいいことを見極めたい。
 怠惰であるために、効率良く勉強したいと願う。


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