三日坊主の幸せごっこ

月澄狸

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とりあえず黙る。いつまでか、いつまでも、半端者。

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 ここ10年ほど、コミュニケーション力の強化をしている。10年前、そしてそれ以前はもっと壊滅的だったコミュニケーション能力が、めきめき……めきめきではないか。チミチミと伸びてきている。

 相変わらず、人と常に意思疎通せねばならない空間は苦手なわけなのだが。テーマパークのキャラクターが、ドアを開けてお客様の前に出た後は、ずっとキャラクターになりきるように。私も私のキャラになりきりたい。

 とはいえ私のキャラは定まっていない。というか、自分が自分らしく振る舞うと嫌われることを理解したため、人に嫌われないであろう動作を、無理のない範囲で選んでいる。まぁみんなそうだろうけど。

 それなりに演技できるようになってくると、以前めちゃくちゃコミュニケーションが苦手だったのに、一体何が苦手だったのか若干忘れかけてくる。
 ……とはいえもちろん完璧になることもない。今の私は半端者だ。ただ、ほとんど意思疎通できなかったであろう以前よりはマシなだけ。
 以前は怒られまくったし、なんで怒られているのかも分からなかったもんなぁ。今なら分かる……ってこともない。分からなかった出来事は全部忘れてしまった。

 で、ちょっと分かったのは、「喋るより喋らない方がコミュニケーションが取れる & 信頼される」ってこと。
 喋らずにコミュニケーションなんて……矛盾しているが、体感8割くらい黙っていた方が、そこそこ上手くいく。で、「こう言おうかと思っていたけど、言わなくて良かった~」ということが増えていき、そのうち余計なことを「言おう」とする気力もなくなっていく。主に求められた言葉や、メリットのある言葉を発している方が無難、となるのである。あとは許されそうな範囲内で遊ぶ(雑談)。

 ……いやー、けっこう余計なこと(愚痴)も言っているけど?
 それはストレス発散。……の、研究。愚痴らずにストレス発散する方法を見つけたいものだけど、まだ見つからなくて、すごいイライラしてしまって……。

 愚痴るの良くないって言うけど。そして人の愚痴を聞いているとそう思うけど。大したことでもないことをずーっとグチグチ言っている人見ると「器ちっちぇーな」と思うけど、色々あったのに何もかも愚痴らず黙っていろと言われると、それもモヤモヤするなぁ。愚痴ることで他の人の意見が分かる部分もあるし。なんでみんなあんなちっちゃいことでグチグチ言うのに、私が愚痴らず我慢しなきゃならないんだろうとも思う。「あの人、こんなこと言ったのよ!」なんて、うちの親族の方がもっとひどいし、意思疎通できないし、常識通じないぞ。しかも家族は辞められないし、放り出すわけにもいかないんだぞ。私も大概ダメ人間だけど。

 でも愚痴っちゃいけないと聞くもんで、リアルではあんまり言っていないつもり。誰それがどうのも、ハイそうですかという感じ。心の中は投げやりに、それでいてニコニコと。うわべだけ丁寧にしていりゃ、それで意外とやっていけるもんだ。
 私の「意見」なんて言わない方が、上手くいくのである。で、意見を言いまくったアルファポリスアカウントはこのザマである。余計なこと言わずにずっとマンガやイラスト投稿していれば、今頃芽が出ていたかもしれないのにね。
 裏表激しいのも考えものなので、本当に、誰も傷つけないストレス発散法を探して、「裏」をなくしたいものだが……。

 コミュニケーションにおいて、ずーっと自分がペラペラ喋っていたら、「コミュニケーション」というゲームのプレイ方法が分からない。コミュニケーションとは会話であって、喋ることではないのだ。
 で、多分仕事においては意思の伝達のことを差す。当たり前かもしれないけど。

 一応コミュニケーションにはルールっぽいものが存在するのだが、やってはいけないこと(特に意見を押し付けることなど)がある程度分かった後は、自分なりにアレンジしてコミュニケーションしていくこととなる。例えば、普通言ったら嫌われるかもしれないと不安になることでも、「この人になら言っても大丈夫そうじゃないか?」などと自己判断を加えて言ってみるとか。
 でも「受け入れてもらえるかも」などと期待しない方がいい。これは常にそうで、優しくしてもらえるかもなどと期待しなければ傷つきにくい。まだ期待してしまっているようで、ちょっとキツい言い方をされるとビビるけど。

 口は災いの元。災いを起こしたところで、誰もご丁寧に「今、あなたの言動が原因で、みんなが引きましたよ」などと教えてくれない。特に、トラブルメーカー本人には全然教えてくれない。私も、「それ、◯◯さんが嫌がっていましたよ」と、トラブルメーカーに教えてあげるのはちょっと、逆ギレされそうで怖いので、コッソリ教えてあげることもできない。

 前に「みんな、怒ってないで教えてあげればいいのに」って言っていたのに、自分も「できない」なんて。他力本願というのか無責任というのか。
 ……いや、それが、なんていうか微妙な違いで。「仕事のやり方が間違っている人」には教えてあげたいけど、「コミュニケーションのやり方が間違っている人」は怖くて、手出ししにくいのだ。コミュニケーション音痴は、なんか地味に威圧的な人が多いし。
 っていうか威圧的だから話しにくくて嫌われるのであって、威圧的じゃなければトラブルメーカーにも嫌われ者にもならないか。威圧的じゃなくても簡単に見放して陰口言う人もいるけど、威圧的じゃなければ大抵、優しい人は教えてくれようとする。なんか妙に堂々としていて「私はこれで良いの」と開き直り、自己完結している人には、優しい人も手出しのしようがないのだ。

 そんなわけで、嫌われることをすればするほど教えてもらえなくなるので、自分がペラペラ喋るより、おとなしく沈黙多めで、他の人の話を盗み聞きする方が、「ふーん、こういうことしたら嫌がられるんだ……」という情報を多く集めることができる。けっこうみんな名前を伏せたり、変なあだ名付けたりするので、誰のことを言っているのか分からないときも多いんだけど。名前を伏せられていて、誰のことか分からなくても、「こうすると嫌われるんだな」という情報の一つや二つは得られる。

 今、私があえて嫌われるような態度を多く取っているのは、自己防衛の実験か、キャパオーバーのストレス発散か、まだ認識できていない嫌われ要素があるか、曲げられない趣味または意見であるか、踏み込まれたくないエリアに人を入れないようにするため、のどれかだろう。

「嫌われない方法」が若干分かってきたが、そうなると人との距離感が縮まり、以前より人間関係に参加することとなる。それで、以前は感知していなかった部分に足を突っ込むこととなった。ゲームで一面をクリアして二面に入った感じ?

 ここで思うのは、嫌われ方にもグラデーションやらタイプがあるかもしれないということ。最低限の礼儀を守ること、また、礼儀を尽くそうと努力することにより、最低限敬意を払ってもらえる。こちらが礼儀を尽くしたのに相手がこちらを無視したら、いくら相手がこちらのことを嫌っていても、相手が悪いのである。私がいくらブサイクで仕事できなかったとしても、ちゃんと礼儀を尽くすならば、人として扱わねばならないのである。

 というようなルールがいくらか存在するようで、そういう情報も、黙っていることによって拾える。
 多分これらが「価値観」というもので、個人差があるのだろうけど。自分の礼儀感覚に自身がない場合は、しばらく物静かに過ごすというのも、一つの勉強のやり方かもしれない。
 ただ、黙っていると「アイツ無口で無愛想だし、一緒にいると気まずい。息が詰まる」と言われる可能性はある。なので私は話しかけられたときはニコニコ、愛想良くしているつもりである。

 まぁ何事も「こうすればOK」なんてものはないし、空気感もルールも、職場によって全然違うのかもしれない。私は以前の職場で上手くやれなくて、それは私がまだ非常識だったせいだと思っているけど、今のレベルであそこに戻っても、やっぱりうまくやれないかもしれない。今の職場は「良い人だなぁ」「なんだかんだ言って面倒見良いんだよなぁ」「お、うまく付き合える方法分かってきたかも」と思える人が多いのに対し、前の職場の人は「性根が腐っている」と感じるシーンが多かったためである。

 合う・合わないも「類は友を呼ぶ」って感じで、自分のバージョンアップ(またはダウン)と連動するのかな?

 けどマジでヤバい場所からは多分、逃げた方がいいと思う。魂が汚染されてしまう。
 これも難しくて、どこまで我慢して踏みとどまるべきで、どこから逃げた方がいいのか、本当に分かりにくいんだけど。

 尊敬できる人が多い場所にしがみつきたい。サイトでも職場でも趣味の場でも、なんでも。


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