三日坊主の幸せごっこ

月澄狸

文字の大きさ
上 下
113 / 417

甘い汁吸って不器用貧乏

しおりを挟む
「甘いんだよ!」みたいな言葉を聞くとギョッとすることが多い。それは大抵、私のような社会不適合者に向けて言われてきた言葉であろうと思われるからか。


 でもこないだテレビで、カスハラ……カスタマーハラスメント? について、コメンテーターだか専門家の人だかが言っていた「店員と客は対等なのに、店(企業?)が客を甘やかしてきたからこうなった」みたいな意見には「そうだそうだ」と思った。

 私は上下関係嫌い。良いイメージがない。「上がこうだと言ったらこうだ!」みたいな。で、「お客様は神様」「お客様が上」「お客様には丁寧に」みたいな風潮も好かない。

 最近よく行くお店の店員さんが友達みたいに喋りかけてくださるので、そういうのが嬉しい。緊張するけど。

 店員と客は対等。そうだと思う。あんまり無愛想で、愚痴言ってたり雰囲気悪いと、流石にモヤモヤするけど、それは職場の関係でも一緒だし、店員云々じゃなく人間関係の問題、かな。


 そんなこんなで、「甘い」という言葉は良い意味では使われず、大抵批判的。
「優しい」と「甘い」、「頼る」と「依存」あたりは曖昧そう。良く言えばこっち、悪く言えばあっち、または見方や価値観やイメージによっても変わるか。



 現在私は職場で甘やかされている。
 というか私のような者の場合、まわりは「許す」か「許さない」の選択肢しかない気がするので……。多くの人から許されつつ、ゆっくりと進歩を促されている感じがする。

 私の仕事が不器用で遅いから、上司の人が懇切丁寧に教えてくださる。で、師匠(先輩)は、「上司の人に何か言われたんか? 月澄狸さんは十分頑張ってくれてるんだから、そんなん言わんでええのになぁ」と慰めてくださる。実に甘やかされている。

 っていうかキツいこと言われるとビクビクオドオドしてコミュニケーション取れなくなるし、「急いで」と言われると焦って逆に物を壊したりするし、甘やかす以外の選択肢がないのかもしれない。
 こちらも、怯えたり焦ったりしてもロクなことがなかったので、自分のペースを死守しようとする。

 どうせミスがあればやり直しだし、備品(?)とか、施設内の壁とかを破壊すれば厄介なことになるのだ。
 焦ると物をなくしたり、ミスが増えたりもする。無理をしても能力以上の力は出せないと悟った。よそはよそ、うちはうち。


 こんなんなので、人の陰口言ってる人からは逃げる。最低限の会話しかしない。

「新人さん、ミス多いし、一つ仕上げるのに一時間以上かかるんですよ」と先輩が言っているのが聞こえたが、すみません、私もう新人じゃないけど、私の方がその新人さんより時間かかります。
 ……厳しい人からは逃げ回るしかない。

 優しい人はとことん優しい。「焦らず月澄狸さんのペースで」と。こちらもそれ以外やりようがないので、自分のペースで頑張る。


 実はどう思われているか? なんて、今気にしてもしょうがない。気になるなら早くすればいい。

「できない」「遅い」「不器用」
 自分でそう思い込んでいるだけ。やればできる。
 ……ってその理屈なら、みんなスポーツ選手にでも歌手にでも、本気出せばなれる、夢叶わないのは本気が足りないからだって話になるけど。


 いや、やっぱり能力というのはあると思う……。絵が好きで描いてたって、全員、思うように描けるようになるとは限らないし、かと思えば、あれもこれも上手にやる人もいる。歌も演技も絵も上手く、本も出している人とか。


「しょうがないよね」って言ったら「甘えだ」とイラつかれるのだろう。それでもしょうがない。甘やかしてくださる人に尻尾振って忠誠を誓う。


しおりを挟む
うだつの上がらないエッセイ集(たまに自由研究)
【うだつの上がらないエッセイ集】

生き物の話や夢の日記、思い出や星占いの話など、思いついたことを色々詰め込んだ連載です。


良くも悪くも、星の回転は止まらない

【良くも悪くも、星の回転は止まらない】

詩集です。すぐ読める短いものが多いです。20編で完結しました。



ツギクルバナー
感想 41

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

世界は何もくれないから 好きに生きていい

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
不安のプレゼントなら溢れているけどね。

男女について考える(ほとんど憶測と偏見とヒステリー)

月澄狸
エッセイ・ノンフィクション
 私は生物学も心理学も学んでいない、ただの学のない女だ。ついでに恋愛経験もない、さらには友達もいない。告白されたこともないし当然したこともない。そんなわけでこの連載は、浅い知識と経験から「なんとなく思ったこと」を感情的に書き連ねるだけのものになる。読んでも何の学びもなく、不快になるだけなのでご注意を。(※LGBTQについては分からないので、基本的に古い価値観オンリーで書きます。)

『茜色に染まる心』

小川敦人
エッセイ・ノンフィクション
野村隆介、六十七歳。妻と死別して十年、孤独を仕事で紛らわせてきた彼の心が動き出したのは、ボランティア活動で出会った渚菜緒子という女性がきっかけだった。彼女の柔らかな笑顔や憂いを帯びた瞳に惹かれ、いつしかその存在が彼の胸に深く刻まれていった。しかし、菜緒子の左手薬指の指輪は、彼女が既婚者である現実を突きつけ、隆介の想いが叶わないものであることを示していた。 それでも、菜緒子と出会えたことは隆介にとって大きな幸せだった。彼女の些細な仕草や言葉が日々の活力となり、夕陽を見ながら彼女を想うことで心の温かさを感じていた。彼女の幸せを願う一方で、自分の心が揺れ動くたびに切なさを覚えた。 ある日、彼女との何気ない会話が心に残る。その後、図書館で出会ったカフカの詩が、彼の心を解き放った。「大好きと思える人がいることは幸せ」という言葉が彼の心を温かく包み込み、彼はその想いを受け入れることを学ぶ。 「出会えたことに感謝する」。隆介はこの恋を人生最大の宝物として胸に抱き、穏やかで清らかな喜びと共に、茜色の空を見上げる日々を大切にしていく。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

アルファポリスユーザーと世間一般のズレ2

黒いテレキャス
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリス登録して半年経っての印象

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...