三日坊主の幸せごっこ

月澄狸

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やつあたり

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 陰口とまではいかないが職場の人にぼやかれているのを聞いてしまってから、泣きそうになって数日間力が入らなかった。が、昨日、その人に暴力を振るったりして仕返しするところを想像したら興奮して、だいぶ泣きそうなのが収まった。

 どう考えても正当性はこちらではなく向こうにある。仕事ができる人が仕事ができない人の尻拭いばかりさせられ、苛立つ。当然なのである。
 逆に考えれば分かる。自分がせっせと働いている隣で、ノロノロ、モソモソ、グダグダと動かれて、自分がそいつの3倍働かなきゃならなくて、なのにそいつと自分が大差ない給料だったら。腹立つだろう。

 ニートに怒っている人もよく、税金とか生活保護とか言っている。要するに、一生懸命頑張っている人の方が苦労して疲れて、税金取られまくって貧しくて、過労死の危険にも晒されているのに、その税金が、頑張ってもおらず寄生虫のように生きている人の生活のために使われているのが気に食わないというんだろう。実際そうかどうか知らないけど。

 そりゃ私の身内も、ギャーギャー文句言って自分勝手でワガママで、なのに障害年金が入っているから、健常者(?)の私はなんか微妙な気持ちにもなるけど。

 けど誰の未来もこの先どうなるんだかサッパリ。今仮に100万円あったところで、それで一生生きていけるわけじゃなし。
 とりあえず私が私のやれる範囲でやるしかない。不安で気を病んで立ち止まってしまったら本末転倒だし、陰口を言われたことに怯えて仕事を辞めて引きこもってしまったら、お先真っ暗なのである。転職しようったってやり方も分からないし、運良く職を変えられたところで、落ちこぼれが治るわけでも人間関係から逃れられるわけでもなし。

 自分がダメ人間だとしても、だから性犯罪に遭っても何をされても仕方がない、とは思わないように。仕事ができないからと陰口叩かれ、「まったくもってその通りです、申し訳ございません」と頭を下げ続けられるほど、私は強くない。改善だって自分なりにしているつもりなのだが、どうも進歩が見えない。

 自分の力ではどうにも。もっともっと頑張るのも自分には難しい。そもそもなんで社会のために時間と金を割きまくって生きなきゃならないんだか。だから陰口言ったヤツを叩いたり、家までつけていって家や家族、子どもなんかを狙うことを想像すると、面白くて笑えて、元気になってしまうのだ。

 以前豚の屠殺動画を見ていたとき、「この豚が嫌いなヤツだと思うと楽しく見られる」というコメントが付いているのを見て、「なんてひどい考え方だ。豚には何の罪もない、自分の嫌いな人とは関係ないのに」と思ったが。
 パン生地か何かを、嫌いなヤツに見立てて叩くと上手くいくと言うように。嫌いな人や鬱憤を投影するってのはメジャーなストレス発散方なのだろう。

 八つ当たりは良くない。石や木を蹴る、ゴミを叩き潰す(捨てる予定の物とかお皿とか)などの発想も好きじゃない。
 しかしよく考えたら、何もかも八つ当たりに思えてくる。

 いじめっ子は家庭に問題があるんじゃないかとか聞いたが。それならば、親に返せない鬱憤を、自分より弱い者で晴らそうとしているのかもしれない。
 私が今ムカついているのは女性で、その子どもを狙ってやることにもワクワクしたが。女子どもに危害を加えたいほどに精神的に過剰反応を示すというのは、裏に「男性にはやり返せないから」という怒りがあるのかもしれない。

 私が間違っている。知っている。たった一言の陰口(未満)に暴力で返すなんてやりすぎだ。しかも本人に返すならともかく、子どもを狙うなんて、妄想でも趣味が悪すぎる。
 マレフィセントの映画でもテーマになっていたように、血の繋がりと人格、罪なんてものは関係ないじゃないか。人との関係は常に個人対個人、一対一であるべきだ。

 まぁとにかく涙も収まったし、陰口(未満)の人に会ったときにビクビクすることもなく、にっこり挨拶できたから良かった。

 正当性なんてもの投げ捨ててしまえば、元気になれる。
 私が間違っている、そんなことどうでもいい。仕方ないじゃないか。もっと感情的に生きよう。

 自分が間違っていても。そうでないと自分を保てず、働かなくなってしまうくらいなら。間違っている方がマシ。開き直っている方がマシ。そういう日もあるだろう。

 いつか本当にカッとなってしまう日まで、妄想を楽しみつつ、ニコニコ穏やかに演じよう。


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