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社会不適合な日常
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目の前で好きな人に虫を殺されるのは辛いなぁ。
仕事の話である(職場の人のことはなんだかんだ言って大体好き)。
「私、虫好きなんで~、殺さないでほしいですぅ」とか言ってみるか?
いやいや、「お客様の目に虫が触れてはいけない」、これこそ現代日本の揺るぎない常識であり、そもそも仕事中は仕事に集中するべきなのである。余程ヒマなオフィスとかなら聞き入れてもらえるかもしれないが、こんな不景気なご時世に「虫を逃がしてあげましょう」などとのたまう大らかな職場、ないだろう。世界のどこかにそんな天国みたいな職場があったとしても、私には関係ない。
仕事終わりとかに一応虫好きだと言ってみたら、少しは何らかの、私に都合のいい効果があるかも?
いやダメだ。初就職のときの悪夢が蘇る。
初めての就職。一緒に入社した同期(女子)と並んで、駅から職場へ向かった。仲良くなれたら嬉しいと思った。
変に自分を隠したりせず受け入れてもらいたかったので、虫を見つけて「虫だ~」なんて覗き込んだりと、気ままに振る舞っていた。
そしたらその女同期、「この地球上から虫が消えてほしい」と発言するくらいの、虫大嫌い人間だったのだ。「虫が好きなんておかしいから、やめた方が良いよ」と言ってきた。ものすごいショックだった。
その後、私の凄まじいポンコツ加減もあって、彼女は私に非常に苛立っているように見え、それなのに私は臆病で同期のみんなとの付き合いを断れず、そいつとはせっかくの休日も顔を合わせまくる羽目になり、人間関係はどんどん悪化し、最悪の状態で私は仕事を辞めた。
私は学んだ……はず。
職場の人に趣味だのプライベートだの話さなくていい。職場は仕事する場所だ。当たり障りなく笑顔で挨拶し、仕事の話だけをし、自分なりに頑張っていればいいのである。
あとは付き合いなどいらぬ。どうせ深く知られたら嫌われるし。っていうか深く知られようが知られまいがポンコツなので嫌われてるだろうし。
嫌われないように化けの皮を被る与力なんざないのだ。いくら人当たり良くなっても仕事できなきゃ意味ないのだ。人間になど深入りせず、休日は休日として完全キープだ。
ネットでは自由にして良いと思っている。ネットでまで不自由になってたまるか。投稿が嫌ならフォローを外すなりブロックするなり距離を置くなり、好きにすればいい。読者は雇用主でも同僚でも後輩でもないのだから。
それぞれ気の合う人と付き合ったり、好きな投稿者を追いかければいい。「その投稿やめてもらえません?」などと言われたら戦う構えだ。
職場で「虫好き」とカミングアウト……。
もし私がめちゃくちゃ仕事できるヤツで、一目置かれているならば、言ってしまうと思う。
よくスポーツ漫画とかバトル漫画とか学園漫画にいそうな、「めちゃくちゃ変人だけどすごい才能がある(または強い)」キャラを演じればいいのだ。
職場においては仕事の出来がすべてであろう。超仕事ができる人間なら、変な習性や性格の悪さの一つや二つ、目を瞑ってもらえるはず。
それがもし、仕事できない人間の私が虫好きだと知れ渡ってしまったらどうする?
「もしかしてアイツの仕事がクソ遅いのは、仕事中に館内の虫を逃がして回っているせいではないか?」などと噂が立ち、永久追放されるかもしれない。
仕事ができない上に余計なこだわりを発揮するなど、職務においては言語道断なのだ。
あー……。
そもそも子どもの頃に「命を大切に」とかいう教育をされたのが悪いんじゃないか?
私は人一倍真剣に(それほどでもない)、命について考えているだけなのに。なぜこんなに悩んだ上に(それほどでもない)、一ミリも評価されないのだ。おかしいじゃないか。
こないだナチス的な話を聞いたが、虫を殺すようにユダヤ人を殺していたそうだ。
で、今はみんな大好きな猫様も。魔女狩りの際は、悪魔の手下とか言われて火炙りにされたと聞いたような。もちろん人間(魔女)もだ。
つまり人間は、「虫だから」殺し、「人間を」大切にするんじゃない。人間の価値観なんぞコロコロ変わるが、いずれにせよ人類は他者を殺すしか能がない生き物であるというだけなのだ。
ひとたび戦争が始まれば、平和な日常も一瞬で木端微塵。
こんな狂った世界で、私は何を生き甲斐に、どこを目指し、どう成長すればいいのか。私は人間的に見れば底辺クズの社会不適合者だが、これでも一生懸命、真面目に、自分にできる範囲での「良い子」を演じてきたのだぞ。それが……。
って言ってもみんな大変そうに生きている。楽そうに暇そうに生きている人などいない。
仕事ができる人だって、できるから仕事を任されまくった上に、そこまで給料が上がるわけでもなく、しんどそうじゃないか。
そんな大変忙しい中で、業務と関係ない昆虫保護などされては困るだろう。
私は生まれる星を間違えた。そう、どうせ私が悪いのだよ。
人生、諦めが肝心である。環境破壊コンボで人類文明が滅ぶ日まで、不本意な作業でも頑張ろう。
仕事の話である(職場の人のことはなんだかんだ言って大体好き)。
「私、虫好きなんで~、殺さないでほしいですぅ」とか言ってみるか?
いやいや、「お客様の目に虫が触れてはいけない」、これこそ現代日本の揺るぎない常識であり、そもそも仕事中は仕事に集中するべきなのである。余程ヒマなオフィスとかなら聞き入れてもらえるかもしれないが、こんな不景気なご時世に「虫を逃がしてあげましょう」などとのたまう大らかな職場、ないだろう。世界のどこかにそんな天国みたいな職場があったとしても、私には関係ない。
仕事終わりとかに一応虫好きだと言ってみたら、少しは何らかの、私に都合のいい効果があるかも?
いやダメだ。初就職のときの悪夢が蘇る。
初めての就職。一緒に入社した同期(女子)と並んで、駅から職場へ向かった。仲良くなれたら嬉しいと思った。
変に自分を隠したりせず受け入れてもらいたかったので、虫を見つけて「虫だ~」なんて覗き込んだりと、気ままに振る舞っていた。
そしたらその女同期、「この地球上から虫が消えてほしい」と発言するくらいの、虫大嫌い人間だったのだ。「虫が好きなんておかしいから、やめた方が良いよ」と言ってきた。ものすごいショックだった。
その後、私の凄まじいポンコツ加減もあって、彼女は私に非常に苛立っているように見え、それなのに私は臆病で同期のみんなとの付き合いを断れず、そいつとはせっかくの休日も顔を合わせまくる羽目になり、人間関係はどんどん悪化し、最悪の状態で私は仕事を辞めた。
私は学んだ……はず。
職場の人に趣味だのプライベートだの話さなくていい。職場は仕事する場所だ。当たり障りなく笑顔で挨拶し、仕事の話だけをし、自分なりに頑張っていればいいのである。
あとは付き合いなどいらぬ。どうせ深く知られたら嫌われるし。っていうか深く知られようが知られまいがポンコツなので嫌われてるだろうし。
嫌われないように化けの皮を被る与力なんざないのだ。いくら人当たり良くなっても仕事できなきゃ意味ないのだ。人間になど深入りせず、休日は休日として完全キープだ。
ネットでは自由にして良いと思っている。ネットでまで不自由になってたまるか。投稿が嫌ならフォローを外すなりブロックするなり距離を置くなり、好きにすればいい。読者は雇用主でも同僚でも後輩でもないのだから。
それぞれ気の合う人と付き合ったり、好きな投稿者を追いかければいい。「その投稿やめてもらえません?」などと言われたら戦う構えだ。
職場で「虫好き」とカミングアウト……。
もし私がめちゃくちゃ仕事できるヤツで、一目置かれているならば、言ってしまうと思う。
よくスポーツ漫画とかバトル漫画とか学園漫画にいそうな、「めちゃくちゃ変人だけどすごい才能がある(または強い)」キャラを演じればいいのだ。
職場においては仕事の出来がすべてであろう。超仕事ができる人間なら、変な習性や性格の悪さの一つや二つ、目を瞑ってもらえるはず。
それがもし、仕事できない人間の私が虫好きだと知れ渡ってしまったらどうする?
「もしかしてアイツの仕事がクソ遅いのは、仕事中に館内の虫を逃がして回っているせいではないか?」などと噂が立ち、永久追放されるかもしれない。
仕事ができない上に余計なこだわりを発揮するなど、職務においては言語道断なのだ。
あー……。
そもそも子どもの頃に「命を大切に」とかいう教育をされたのが悪いんじゃないか?
私は人一倍真剣に(それほどでもない)、命について考えているだけなのに。なぜこんなに悩んだ上に(それほどでもない)、一ミリも評価されないのだ。おかしいじゃないか。
こないだナチス的な話を聞いたが、虫を殺すようにユダヤ人を殺していたそうだ。
で、今はみんな大好きな猫様も。魔女狩りの際は、悪魔の手下とか言われて火炙りにされたと聞いたような。もちろん人間(魔女)もだ。
つまり人間は、「虫だから」殺し、「人間を」大切にするんじゃない。人間の価値観なんぞコロコロ変わるが、いずれにせよ人類は他者を殺すしか能がない生き物であるというだけなのだ。
ひとたび戦争が始まれば、平和な日常も一瞬で木端微塵。
こんな狂った世界で、私は何を生き甲斐に、どこを目指し、どう成長すればいいのか。私は人間的に見れば底辺クズの社会不適合者だが、これでも一生懸命、真面目に、自分にできる範囲での「良い子」を演じてきたのだぞ。それが……。
って言ってもみんな大変そうに生きている。楽そうに暇そうに生きている人などいない。
仕事ができる人だって、できるから仕事を任されまくった上に、そこまで給料が上がるわけでもなく、しんどそうじゃないか。
そんな大変忙しい中で、業務と関係ない昆虫保護などされては困るだろう。
私は生まれる星を間違えた。そう、どうせ私が悪いのだよ。
人生、諦めが肝心である。環境破壊コンボで人類文明が滅ぶ日まで、不本意な作業でも頑張ろう。
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【うだつの上がらないエッセイ集】
生き物の話や夢の日記、思い出や星占いの話など、思いついたことを色々詰め込んだ連載です。
【良くも悪くも、星の回転は止まらない】
詩集です。すぐ読める短いものが多いです。20編で完結しました。
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