三日坊主の幸せごっこ

5分で「知らない場所」

　一度も使ったことがない自動販売機で飲み物を買った。今時ゴミ箱が撤去されていることも多いので、買って飲んで捨てられる、ゴミ箱（？）付きの自販機はありがたい。

　よく来る建物だが、裏に行くだけで、景色がいつもと少し違った。「知らない場所」だった。
　売っている飲み物も、いつも見る自販機とは違った。こんなのもあるんだ。

　ゆったりと空間を味わいながら、ジュースを飲む。知らない場所って感覚を刺激される。ちょっとした非日常だ。


　2回、3回とその自販機に行くと、新鮮味はもうだいぶ薄れてしまった。

　そうか、知らない場所に行くと刺激されるんだ。

　何も、遠い場所に旅行しなくてもいい（してもいいけど）。新しいお店とか、一度も入ったことがないお店とかでいいんだ。
　……お店はお金がかかるなぁ。通ったことのない道でもいいんだろう。「あの道はどこに繋がっているんだろう」と思いつつ通ったことがない道は、近くでもいっぱいある。通れば、新しいお気に入りの場所を見つけられるかもしれない。


　もう慣れてきた自販機に向かう途中の道で、遠くの雲が山に見えた。

　ふっと、夢の光景が蘇る。
　どこまでも連なる青い山々。はるか遠くに見えるのも、地平線ではなく山。果てしない自然の光景。


　一瞬繋がった、夢の世界とのリンクを、断ち切らず携えて、ふわふわと生きていきたい。

　非日常。この世界が揺らぐ場所を探して。