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あなたこそ我が天使
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ある日のこと。エー太くんが熱心に何かをやっていました。
そこへやって来たビー子ちゃんが話しかけます。
「何やってるのエー太。漫才のネタ作り?」
「ぐはっ! ……漫才ブームなんてもう俺の中じゃ終わったんだよ。今の時代はツチノコさ。なぁチー。」
「チー。」
エー太くんの前にはツチノコがちょこんと座っています。やはり何回山へ帰しても、また下りてきてしまうようです。
「あら、チーいたの。ふーん、チーと遊んでたのね。」
「そうさ。チーはすごいんだぜ。今、魅惑のポーズでトップモデルへの階段を駆け上がっているところさ。」
エー太くんは首からぶら下げたカメラをビー子ちゃんに見せました。
液晶画面にはチーの写真がずらりと並んでいます。
「見よ、この美しきウロコ! ずっしりとした肉の重みを感じさせるわがままボディ! これぞツチノコ界のアイドルだ。」
「まー、本当によく写っているわね……。」
ビー子ちゃんはカメラを手に取り、写真をまじまじと見つめました。そして何を思ったか、ツチノコ写真のデータを片っ端から消してゆきます。
「あああっ!? おいお前っ!? 勝手に何するんだよ!!」
エー太くんは驚き、怒ってカメラを取り返しましたが、ビー子ちゃんは冷静です。
「そんなツチノコの存在を証明するようなデータは残しちゃダメよ。誰かに見られたらどうするの。」
「見せねーよ、お前にしか! ああもうどーすんだよ! 十時間粘って撮れたベストショットも消えてるじゃないか!」
「誰かに見せたりしなくても後ろから覗かれるかもしれないし、カメラごと盗まれるかもしれない。何かのきっかけでデータが流出する危険もあるわ。ツチノコたちの為には、写真なんか撮らない方がいいのよ。」
「くっそー、今日のビー子は正気モードかよ……! チーはこんなに可愛いのに写真を撮ることも許されないとは。でもまぁ正論だな……。いつどこで、誰に見られるか分からないもんな……。」
エー太くんはがっくりと肩を落としました。
「なぁ、じゃあ絵に描くくらいならいいかな……?」
「やめなさいよ。本物のツチノコの特徴を捉えた絵が話題になったらどうするの。少しでもリスクのある行動は念の為控えた方が良いって言ってるのよ。」
「むー……。」
大声で意見を交わしあうエー太くんとビー子ちゃんから少し離れたところで、まわりの人が二人の噂話をしています。
「ツチノコ、ツチノコって、最近あの二人その話ばっかりだよね。よっぽど夢中なんだな。」
「エー太くん、こないだは自転車の前に飛び出してきたツチノコを、街中で大声で怒鳴りつけてたけどね。」
「あの時はビックリしたねー。あんな大声出すもんだから、何かと思って見に行ったら、案の定あの二人だったよ。」
「エー太くんとビー子ちゃん、一緒にいると常にトラブルだらけだよね。」
「うんうん。両方運が悪いのが、二人一緒にいることで十倍くらいになっている気がする。あと、あの後もしょっちゅうツチノコと一緒に行動しては、ツチノコがどうとか言ってギャーギャー議論しているらしいよ。」
「ホントに飽きないねー。この町じゃ、あの二人は有名人だ。」
さて、自分たちが話のネタになっているとは知らないエー太くんとビー子ちゃんは、ツチノコを連れて人気のない森のような道を散歩し始めました。
「ほら、写真は撮れないけど散歩ならできるわよ。」
「そうだな。できないことより、できることを楽しむか……。」
エー太くんとビー子ちゃんがしばらく歩いていると、やがて二人の前に看板が現れました。
『ツチノコを捕まえた人には賞金100万円! ツチノコを捕まえたらこちらまでご連絡ください。……UMA買い取り委員会』
「げっ、UMA買い取り委員会! ここにも看板あるのかよ!」
「うぉおぉぉおっ!」
看板を目にしたビー子ちゃんが突如雄叫びをあげました。
ビー子ちゃんの欲望が目を覚ましてしまったのです。
エー太くんはすかさず、ありったけの力をこめてビー子ちゃんの頭をしばきました。
「ぁ痛っ!? な、何すんのよ!」
ビー子ちゃんは我に返ったようです。
「ふう……」
エー太くんは安堵したように大きく息をつくと、堰を切ったように怒鳴り始めました。
「おいビー子! お前は一体何回豹変したら気が済むんだよ! こっちはビー子の七変化にもう付き合いきれないよ! 真面目・正論キャラなのか強気なのか弱気なのか悪魔キャラなのか、俺はお前のキャラがサッパリ分からん!! いい加減にしろよな!」
「……ご、ごめん……。」
エー太くんの迫力に押されて、いつもは強気なビー子ちゃんが謝りました。
「ビー子の行動には軸ってものがないんだよ。ブレッブレなんだよ! 一体どういうつもりなんだビー子は。ツチノコのことをどう思っているんだ? なんで突然金の亡者に豹変するんだよ。」
「あー……えっと、ごめんなさい。よく覚えていなくて……。」
「ハアァ? 毎回豹変した後しばらく経ったらケロッとして、そんでまたしばらくしたら豹変するのやめろよな。止めるのどれだけ疲れると思ってんだよ。」
「すみません。」
「チー……。」
気がつくとツチノコが心配そうな顔で見上げています。
「ああ、チーごめんな。……で? ビー子は結局チーのことどう思ってるんだ? どうしたいんだ?」
エー太くんはツチノコを抱き上げつつ、ビー子ちゃんに尋ねました。
「チーのことは大事にしたいと思っているわ。懐いてくれるのが可愛いし、かけがえのない存在だと思ってる。お金なんかには換えられないわ。」
「よろしい。他のツチノコは?」
「自由に生きてるツチノコを捕まえるなんて可哀想だし、できるだけ人間に見つからないようにしたい。そしてもしものことがあれば、守ってあげたいって思うわ。」
「うむ、よく言った。それがお前の意見でありビー子のキャラだな? もうブレないな?」
「は、はい……。」
「分かった。ならもういい。」
エー太くんはにっこり笑って見せました。
ビー子ちゃんもぎこちなく笑い返しました。
二人と一匹は仲良く散歩を再開し、人気のない道の奥に進みます。
するとまたもや看板が見えました。看板にはこう書かれています。
『オ・ト・ク・情報! 今だけな・な・なんと二倍!! ツチノコを捕まえた人に賞金200万円あげちゃいます! ツチノコを捕まえたらすぐ、こちらまでご連絡ください! ……UMA買い取り委員会』
「うがあああぁっ!!」
看板を見たビー子ちゃんは再び煩悩に取り憑かれました。
「一匹200万円! 六匹で1200万円! うっひょおおぉ!!」
バキィッ!!
あたりに雷のような鋭い音が響きました。
それはエー太くんが看板を叩き割った音でした。
「いい加減にしろっつってんだよ!!!」
エー太くんのマジギレの怒鳴り声にびくりと体を震わせ、ビー子ちゃんは我に返りました。
「クッソオオォ!! どいつもこいつも……許せん! そもそも誰なんだこんな看板立てているヤツは!」
「チ、チー……。」
エー太くんをなだめようとしたチーにまで、エー太くんは呆れ顔を向けます。
「ハァー。そもそもお前が俺たちみたいな金の亡者に近寄ってくるのがいけないんだよ。無防備すぎるだろ。善人と悪人の見分けくらいつかなきゃダメだぞ。って俺はビー子の本性に気づかなかったから今一緒にいるのか……。」
「チー……。」
「まぁな……チーは純粋だからな、しょうがないか。んで? ビー子さんは何か、言うことはあるか?」
「誠に申し訳ありませんでした。」
ビー子ちゃんはその場で土下座しました。
「よろしい。……って言いたいところだけどよろしくもねーんだよな、俺はビー子のしつけ係じゃねぇよ。」
「そこをなんとか。」
「何がなんとかなんだよ。」
「私……自分で自分を止められないの。」
「大問題だろ。」
「変わりにエー太が止めてください。お願いします。」
「自分の欲望ぐらい自分でコントロールしろ!」
「お願い……私、自分が怖い。」
「自分が怖いヤツなんか俺だって怖いよ!」
押し問答の末、結局エー太くんは仕方なく、ビー子ちゃんの本性ストップ係になりました。ビー子ちゃんが叫ぶ度にエー太くんがしばく……ボケとツッコミなのかギャグなのかよく分からない姿が各地で目撃されるようになり、それを見た人々は非常に怪しがって、二人を避けるようになったということです。
そこへやって来たビー子ちゃんが話しかけます。
「何やってるのエー太。漫才のネタ作り?」
「ぐはっ! ……漫才ブームなんてもう俺の中じゃ終わったんだよ。今の時代はツチノコさ。なぁチー。」
「チー。」
エー太くんの前にはツチノコがちょこんと座っています。やはり何回山へ帰しても、また下りてきてしまうようです。
「あら、チーいたの。ふーん、チーと遊んでたのね。」
「そうさ。チーはすごいんだぜ。今、魅惑のポーズでトップモデルへの階段を駆け上がっているところさ。」
エー太くんは首からぶら下げたカメラをビー子ちゃんに見せました。
液晶画面にはチーの写真がずらりと並んでいます。
「見よ、この美しきウロコ! ずっしりとした肉の重みを感じさせるわがままボディ! これぞツチノコ界のアイドルだ。」
「まー、本当によく写っているわね……。」
ビー子ちゃんはカメラを手に取り、写真をまじまじと見つめました。そして何を思ったか、ツチノコ写真のデータを片っ端から消してゆきます。
「あああっ!? おいお前っ!? 勝手に何するんだよ!!」
エー太くんは驚き、怒ってカメラを取り返しましたが、ビー子ちゃんは冷静です。
「そんなツチノコの存在を証明するようなデータは残しちゃダメよ。誰かに見られたらどうするの。」
「見せねーよ、お前にしか! ああもうどーすんだよ! 十時間粘って撮れたベストショットも消えてるじゃないか!」
「誰かに見せたりしなくても後ろから覗かれるかもしれないし、カメラごと盗まれるかもしれない。何かのきっかけでデータが流出する危険もあるわ。ツチノコたちの為には、写真なんか撮らない方がいいのよ。」
「くっそー、今日のビー子は正気モードかよ……! チーはこんなに可愛いのに写真を撮ることも許されないとは。でもまぁ正論だな……。いつどこで、誰に見られるか分からないもんな……。」
エー太くんはがっくりと肩を落としました。
「なぁ、じゃあ絵に描くくらいならいいかな……?」
「やめなさいよ。本物のツチノコの特徴を捉えた絵が話題になったらどうするの。少しでもリスクのある行動は念の為控えた方が良いって言ってるのよ。」
「むー……。」
大声で意見を交わしあうエー太くんとビー子ちゃんから少し離れたところで、まわりの人が二人の噂話をしています。
「ツチノコ、ツチノコって、最近あの二人その話ばっかりだよね。よっぽど夢中なんだな。」
「エー太くん、こないだは自転車の前に飛び出してきたツチノコを、街中で大声で怒鳴りつけてたけどね。」
「あの時はビックリしたねー。あんな大声出すもんだから、何かと思って見に行ったら、案の定あの二人だったよ。」
「エー太くんとビー子ちゃん、一緒にいると常にトラブルだらけだよね。」
「うんうん。両方運が悪いのが、二人一緒にいることで十倍くらいになっている気がする。あと、あの後もしょっちゅうツチノコと一緒に行動しては、ツチノコがどうとか言ってギャーギャー議論しているらしいよ。」
「ホントに飽きないねー。この町じゃ、あの二人は有名人だ。」
さて、自分たちが話のネタになっているとは知らないエー太くんとビー子ちゃんは、ツチノコを連れて人気のない森のような道を散歩し始めました。
「ほら、写真は撮れないけど散歩ならできるわよ。」
「そうだな。できないことより、できることを楽しむか……。」
エー太くんとビー子ちゃんがしばらく歩いていると、やがて二人の前に看板が現れました。
『ツチノコを捕まえた人には賞金100万円! ツチノコを捕まえたらこちらまでご連絡ください。……UMA買い取り委員会』
「げっ、UMA買い取り委員会! ここにも看板あるのかよ!」
「うぉおぉぉおっ!」
看板を目にしたビー子ちゃんが突如雄叫びをあげました。
ビー子ちゃんの欲望が目を覚ましてしまったのです。
エー太くんはすかさず、ありったけの力をこめてビー子ちゃんの頭をしばきました。
「ぁ痛っ!? な、何すんのよ!」
ビー子ちゃんは我に返ったようです。
「ふう……」
エー太くんは安堵したように大きく息をつくと、堰を切ったように怒鳴り始めました。
「おいビー子! お前は一体何回豹変したら気が済むんだよ! こっちはビー子の七変化にもう付き合いきれないよ! 真面目・正論キャラなのか強気なのか弱気なのか悪魔キャラなのか、俺はお前のキャラがサッパリ分からん!! いい加減にしろよな!」
「……ご、ごめん……。」
エー太くんの迫力に押されて、いつもは強気なビー子ちゃんが謝りました。
「ビー子の行動には軸ってものがないんだよ。ブレッブレなんだよ! 一体どういうつもりなんだビー子は。ツチノコのことをどう思っているんだ? なんで突然金の亡者に豹変するんだよ。」
「あー……えっと、ごめんなさい。よく覚えていなくて……。」
「ハアァ? 毎回豹変した後しばらく経ったらケロッとして、そんでまたしばらくしたら豹変するのやめろよな。止めるのどれだけ疲れると思ってんだよ。」
「すみません。」
「チー……。」
気がつくとツチノコが心配そうな顔で見上げています。
「ああ、チーごめんな。……で? ビー子は結局チーのことどう思ってるんだ? どうしたいんだ?」
エー太くんはツチノコを抱き上げつつ、ビー子ちゃんに尋ねました。
「チーのことは大事にしたいと思っているわ。懐いてくれるのが可愛いし、かけがえのない存在だと思ってる。お金なんかには換えられないわ。」
「よろしい。他のツチノコは?」
「自由に生きてるツチノコを捕まえるなんて可哀想だし、できるだけ人間に見つからないようにしたい。そしてもしものことがあれば、守ってあげたいって思うわ。」
「うむ、よく言った。それがお前の意見でありビー子のキャラだな? もうブレないな?」
「は、はい……。」
「分かった。ならもういい。」
エー太くんはにっこり笑って見せました。
ビー子ちゃんもぎこちなく笑い返しました。
二人と一匹は仲良く散歩を再開し、人気のない道の奥に進みます。
するとまたもや看板が見えました。看板にはこう書かれています。
『オ・ト・ク・情報! 今だけな・な・なんと二倍!! ツチノコを捕まえた人に賞金200万円あげちゃいます! ツチノコを捕まえたらすぐ、こちらまでご連絡ください! ……UMA買い取り委員会』
「うがあああぁっ!!」
看板を見たビー子ちゃんは再び煩悩に取り憑かれました。
「一匹200万円! 六匹で1200万円! うっひょおおぉ!!」
バキィッ!!
あたりに雷のような鋭い音が響きました。
それはエー太くんが看板を叩き割った音でした。
「いい加減にしろっつってんだよ!!!」
エー太くんのマジギレの怒鳴り声にびくりと体を震わせ、ビー子ちゃんは我に返りました。
「クッソオオォ!! どいつもこいつも……許せん! そもそも誰なんだこんな看板立てているヤツは!」
「チ、チー……。」
エー太くんをなだめようとしたチーにまで、エー太くんは呆れ顔を向けます。
「ハァー。そもそもお前が俺たちみたいな金の亡者に近寄ってくるのがいけないんだよ。無防備すぎるだろ。善人と悪人の見分けくらいつかなきゃダメだぞ。って俺はビー子の本性に気づかなかったから今一緒にいるのか……。」
「チー……。」
「まぁな……チーは純粋だからな、しょうがないか。んで? ビー子さんは何か、言うことはあるか?」
「誠に申し訳ありませんでした。」
ビー子ちゃんはその場で土下座しました。
「よろしい。……って言いたいところだけどよろしくもねーんだよな、俺はビー子のしつけ係じゃねぇよ。」
「そこをなんとか。」
「何がなんとかなんだよ。」
「私……自分で自分を止められないの。」
「大問題だろ。」
「変わりにエー太が止めてください。お願いします。」
「自分の欲望ぐらい自分でコントロールしろ!」
「お願い……私、自分が怖い。」
「自分が怖いヤツなんか俺だって怖いよ!」
押し問答の末、結局エー太くんは仕方なく、ビー子ちゃんの本性ストップ係になりました。ビー子ちゃんが叫ぶ度にエー太くんがしばく……ボケとツッコミなのかギャグなのかよく分からない姿が各地で目撃されるようになり、それを見た人々は非常に怪しがって、二人を避けるようになったということです。
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