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コンビ ーエビタコー
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ある日エー太くんとビー子ちゃんは、最近のマイブームについて話していました。
「ツチノコの特徴を調べてみたら、これが意外と面白いのよ。一度調べ始めると止まらなくて、とうとう本まで買ったわ。」
「ブッ。まだツチノコなんかの話してるのかよ。時代遅れだなぁ、ビー子は。俺の中ではとっくにツチノコブームは終わったぜ。」
「じゃあアンタは最近何に興味あるのよ。」
「俺のマイブームは漫才さ! お前は漫才見たりとかする?」
「漫才ねぇ……。お笑いには詳しくないし、コントとの違いとか分からないわ。」
「コントは寸劇、漫才は掛け合いらしいぜ。いや俺もハマったばかりだからよくは知らねーんだけど。面白いからビー子も見てみろって。」
「んー……ちょっと悪いけど、私お笑いは苦手なの。中には面白い人もいるけれど、なんていうか、基本的に感性とか笑いのツボとか空気が合わないのよね。『そこ笑い物にする?』ってネタが多くってさ。」
「あー、うん、分からなくはない……。」
エー太くんは一瞬考えた後こう言いました。
「じゃあさ、俺たちで漫才やらない?」
「は? なんでそうなるのよ。あまり好きじゃないって言ってるでしょ。悪いけど。」
「それは既存のお笑い界の空気に対してだろ? そういう思いがある奴ほど伸びるかもしれないぜ! だから俺らで有名コンビ目指そうよ。なぁなぁ。」
「興味ないってば。」
「頼む! ビー子って結構言うことが面白いと思うぜ!」
「ん? そう?」
「そうそう。あとコンビ名考えてきたんだけどさ。」
「最初からこの話に持ち込む気だったのね。」
エー太くんは鞄からメモ帳を取り出しました。
「ばーん!! コンビ名、これでどうよ!!」
そこには『ーエビタコー』という文字があり、近くにはサインらしきものも書いてありました。サインにはエビとタコの単純なキャラクターが描かれています。
「……フーン魚介類ね。なんでエビタコ? あとこの棒線、何?」
「フフフ、よくぞ聞いてくれました! あのな、エー太とビー子をカタカナにするだろ。それでバランスよく並べると……ほら。」
「エータ……ビーコ……ーエ、ビ、タ、コー……。おお、なるほど!」
ビー子ちゃんはちょっと感心しています。
「な、な、イケてるだろ! じゃあまわりの人に漫才見てもらおうぜ。」
「ちょっと待った! コンビ名だけあったってネタがないでしょ。」
「そうだなぁ、じゃあ俺はコンビ名考えたからビー子はネタよろしく。」
「なんで私が考えるのよ!」
「ハハハ、冗談。でも俺も考えるからさ、ビー子も考えてきてくれよ。それで面白かった方使おうぜ。」
「うーん……。……分かった。」
ビー子ちゃんはエー太くんの勢いに押し切られました。というかそんなに嫌でもなかったようです。
その翌日、二人はネタを見せ合いました。
「すごいじゃんか! 一晩でここまで作ってくるなんて! それに面白いよ。」
「ほ、本当? アンタの方こそ、このネタ面白いじゃない。すごいわよ。」
「うーん、これはどっちかに絞るの勿体ないな。混ぜてみる?」
「いいかもね。」
二人は夢中になってネタ会議を始めました。
そしてその数日後、二人はまわりの人に漫才を見てもらいました。
「はいど~も~。」
「エー太です。」
「ビー子です。」
「カタカナで『エータ』『ビーコ』と書いてそれを混ぜ合わせたら~」
「ーエビタコー になりま~す。」
「伸ばし線重要ですよ! 二人合わせてーエビタコーです。覚えといてくださいね~。」
まわりの人たちは首を傾げながらしんとしています。
「さて、えー、この間ね。二人が何にハマっているかということについて話し合っていたんですけど。ビー子はなんだっけ?」
「あー、ハマっているというかね、今SNSで大人気のアレをやってみたいと思っているのよ。」
「なになに?」
「不老不死ごっこ。」
「流行ってねーよそんな遊び。」
エー太くんはビー子ちゃんの頭を叩きました。
乾いた音が辺りに響き渡ります。
「何年かかるんだよその遊び。スパン長すぎるわ。……具体的に何やるの?」
「呟くの。『大事な人はみんないなくなって私一人生き残った。』とか。」
「重いわ! 誰がするか、不老不死ごっこなんか!」
観客はどんどん白けてその場を離れていきました。
しかし二人はめげずに最後までやり通しました。
「不老不死とか超映える~。」
「何がどう映えるんだよ!」
……
その後二人は頼まれてもいないのに
「サイン書いてあげようか!」などと言いながら、まわりの人が持っている手帳の余白にサインを書いたりして、ますます人々を白けさせました。まわりの人は、エー太くんとビー子ちゃんが押せば押すほど退いていきます。
それから時は流れ、とうとうエー太くんとビー子ちゃんも漫才コンビ『ーエビタコー』のことは口にしなくなりました。
メモ帳に残されたエビとタコだけが、その後も何か言いたげに輝いているのでした。
「ツチノコの特徴を調べてみたら、これが意外と面白いのよ。一度調べ始めると止まらなくて、とうとう本まで買ったわ。」
「ブッ。まだツチノコなんかの話してるのかよ。時代遅れだなぁ、ビー子は。俺の中ではとっくにツチノコブームは終わったぜ。」
「じゃあアンタは最近何に興味あるのよ。」
「俺のマイブームは漫才さ! お前は漫才見たりとかする?」
「漫才ねぇ……。お笑いには詳しくないし、コントとの違いとか分からないわ。」
「コントは寸劇、漫才は掛け合いらしいぜ。いや俺もハマったばかりだからよくは知らねーんだけど。面白いからビー子も見てみろって。」
「んー……ちょっと悪いけど、私お笑いは苦手なの。中には面白い人もいるけれど、なんていうか、基本的に感性とか笑いのツボとか空気が合わないのよね。『そこ笑い物にする?』ってネタが多くってさ。」
「あー、うん、分からなくはない……。」
エー太くんは一瞬考えた後こう言いました。
「じゃあさ、俺たちで漫才やらない?」
「は? なんでそうなるのよ。あまり好きじゃないって言ってるでしょ。悪いけど。」
「それは既存のお笑い界の空気に対してだろ? そういう思いがある奴ほど伸びるかもしれないぜ! だから俺らで有名コンビ目指そうよ。なぁなぁ。」
「興味ないってば。」
「頼む! ビー子って結構言うことが面白いと思うぜ!」
「ん? そう?」
「そうそう。あとコンビ名考えてきたんだけどさ。」
「最初からこの話に持ち込む気だったのね。」
エー太くんは鞄からメモ帳を取り出しました。
「ばーん!! コンビ名、これでどうよ!!」
そこには『ーエビタコー』という文字があり、近くにはサインらしきものも書いてありました。サインにはエビとタコの単純なキャラクターが描かれています。
「……フーン魚介類ね。なんでエビタコ? あとこの棒線、何?」
「フフフ、よくぞ聞いてくれました! あのな、エー太とビー子をカタカナにするだろ。それでバランスよく並べると……ほら。」
「エータ……ビーコ……ーエ、ビ、タ、コー……。おお、なるほど!」
ビー子ちゃんはちょっと感心しています。
「な、な、イケてるだろ! じゃあまわりの人に漫才見てもらおうぜ。」
「ちょっと待った! コンビ名だけあったってネタがないでしょ。」
「そうだなぁ、じゃあ俺はコンビ名考えたからビー子はネタよろしく。」
「なんで私が考えるのよ!」
「ハハハ、冗談。でも俺も考えるからさ、ビー子も考えてきてくれよ。それで面白かった方使おうぜ。」
「うーん……。……分かった。」
ビー子ちゃんはエー太くんの勢いに押し切られました。というかそんなに嫌でもなかったようです。
その翌日、二人はネタを見せ合いました。
「すごいじゃんか! 一晩でここまで作ってくるなんて! それに面白いよ。」
「ほ、本当? アンタの方こそ、このネタ面白いじゃない。すごいわよ。」
「うーん、これはどっちかに絞るの勿体ないな。混ぜてみる?」
「いいかもね。」
二人は夢中になってネタ会議を始めました。
そしてその数日後、二人はまわりの人に漫才を見てもらいました。
「はいど~も~。」
「エー太です。」
「ビー子です。」
「カタカナで『エータ』『ビーコ』と書いてそれを混ぜ合わせたら~」
「ーエビタコー になりま~す。」
「伸ばし線重要ですよ! 二人合わせてーエビタコーです。覚えといてくださいね~。」
まわりの人たちは首を傾げながらしんとしています。
「さて、えー、この間ね。二人が何にハマっているかということについて話し合っていたんですけど。ビー子はなんだっけ?」
「あー、ハマっているというかね、今SNSで大人気のアレをやってみたいと思っているのよ。」
「なになに?」
「不老不死ごっこ。」
「流行ってねーよそんな遊び。」
エー太くんはビー子ちゃんの頭を叩きました。
乾いた音が辺りに響き渡ります。
「何年かかるんだよその遊び。スパン長すぎるわ。……具体的に何やるの?」
「呟くの。『大事な人はみんないなくなって私一人生き残った。』とか。」
「重いわ! 誰がするか、不老不死ごっこなんか!」
観客はどんどん白けてその場を離れていきました。
しかし二人はめげずに最後までやり通しました。
「不老不死とか超映える~。」
「何がどう映えるんだよ!」
……
その後二人は頼まれてもいないのに
「サイン書いてあげようか!」などと言いながら、まわりの人が持っている手帳の余白にサインを書いたりして、ますます人々を白けさせました。まわりの人は、エー太くんとビー子ちゃんが押せば押すほど退いていきます。
それから時は流れ、とうとうエー太くんとビー子ちゃんも漫才コンビ『ーエビタコー』のことは口にしなくなりました。
メモ帳に残されたエビとタコだけが、その後も何か言いたげに輝いているのでした。
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