うだつの上がらないエッセイ集(2)

月澄狸

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世界ってどんな感じだろう

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 私はあんまり海外に興味がありません。海外の生き物には興味があるけれど、手の届かない所にいる生き物を好きになったって始終会えるわけでもないし、どちらかというと、頻繁に会える生き物の方に興味が沸くのです。

 まぁ、以前は見たこともない生き物を好きになったりしましたが、所詮見たことないものとは縁も接点もないのです。どう動くか、どんなところで会えるか、何も知らずに憧れるだけでは、現実は「思っているのと違う」かもしれません。なら、しょっちゅう会って見ている生き物の方がいい。

 しょっちゅう会う生き物でさえ、「見た」程度では何も分からないものですが(私が鈍いからかも)、それでも実際に会って好きになるのは、そっちの方がなんか現実味がある感じがするのです。個人的に。


 生き物以外(人間・文化・芸術・文明)に関しては……(いや、人間も生き物ですが)、言葉が分からないし、他言語を学ぼうという気力もありません。日本語すら使いこなせていなくて友達がいないのに、外国の人と上手く話せる気がしません。それに人間は外国人だろうが宇宙人だろうが、どこまで行ってもきっと人間だし、めんどくさいです。私は幽霊も宇宙人も信じていますが、いずれにせよ「普通に人間だろうなー」と思っています。

 人間と話すには服を着て、無意味に目を合わせすぎず、意図のない変なことを口走ったりせず、急に他の何かに興味を引かれても駆け出さず、相手の話を遮らず、失言せず、約束やルールを守り、礼儀正しく振る舞わなくてはなりませんよね。ちょっとでも大声で騒いだり、通路を塞いだり、団体行動中に決められた予定から外れると、すぐマナー違反です。相手が誰であろうが、同じ人間であるというだけで、ひたすらめんどくさい。


 なのですがこの間、外国のお客様が、リアルな虫がでかでかとプリントされたグッズをお持ちなのを見て、「ほぅっ!?」となりました。

 外国では、虫グッズが普通にお店にあるのでしょうか? で、虫がでかでかとプリントされた服を着て歩いても、人から「ぎゃー!」とか言われないのでしょうか?
 もしや、そのへんの道で1時間ほどウンコ座りして地べたの虫を眺めていても、部屋のインテリアを虫グッズで統一しても、スマホの待ち受け画像をゴキブリにしても、「虫好きなんだなぁ」くらいにしか思われないとか?

 もしかして、私が思っている「人間」像はただの日本人の習性であり、私はまだ人間を……世界を知らないのか?


 そんな希望を抱きましたが、まぁ日本も「多様性だ」とか言って、融通の利かない日本気質を何とかしようとしていますし、そこまで問題なくなってきました。個人的に。
 今、私は小学生の頃並に自由に行動するようになっていますが、特に何も言われません。知り合いの前では奇行と捉えられそうな言動を封印しているせいでもありますが、それでやっていけるならけっこう楽です。あとは口やかましい友達を作りさえしなければいい。

 まだ人生実験の途中経過なので結論は出せませんが、自由に生きるコツはおそらく、「誰かに理解されようとしないこと」です。
 趣味を分かってほしい、喜びを分かち合いたい、私という人間を受け入れてもらいたい……などとなると難易度10倍です。「私を分かってもらいたい」などという大それた欲求さえ抱かなければ、めんどくさい反応をかわしつつ自由に生きていけるはずなのです。

 人に「虫についてどう思いますか?」と聞いたら、十中八九「気持ち悪い」と言われるでしょう。それに一々ダメージを受けながら「運命の友達」を探し歩いて、やっと巡り会えたと思っても、その人とは絶対分かり合えない「壁」があるかもしれません。
 たとえば私は生き物の精神性や魂が気になりますが、他の生き物好きの人は「生物が生きるために戦う姿が好き」と言ったり、どっかから受けた影響によって、人気動物や流行りの動物の魅力ばかりを語るかもしれません。

 価値観の相違にショックを受けるくらいなら、人間の友達なんて作らなくていい。まぁ自由というのはアリとキリギリスのキリギリスみたいなもので、最後には誰の助けも得られずヤバい状況に陥るかもしれませんが。

 友達は作らずとも、仕事などにおいて誰かと対立することなく、誰にでも何かを聞けるような雰囲気にしておけばいいのです。仕事ができない私にとって、「誰にも質問できない」「声をかけられない」「誰かと仲が悪い」状態にしておくのは非常に危険だと、前職で人間関係を自らぶっ壊した結果学びました。常にニコニコヘラヘラしておいた方が良いです。


 というわけで、「外国には私の知らない世界がある……?」という不確かな希望だけで外国へ行きたいというほどの熱意は沸かないのでした。

 ちなみに日本でマイナー生き物グッズを探すなら、なんといってもガチャポンコーナーが一番だと思います。私はそこでヤモリや食虫植物やタヌキのグッズを手に入れました。信号機やドリンクバーのミニチュアがあったりと、無機物萌えにも嬉しい品揃えの豊富さ。
 まぁ現代にはネットもあるし、わざわざお店を渡り歩かずとも、探し放題ですね。





 自由に生きるコツは「誰かに理解されようとしないこと」とか言ったけど、よく考えたら私は「作品を見てもらいたい」と願っていて、それこそ「私を理解してもらいたい」の中でも一番ハードルが高い欲求なのでは……。

「見てもらいたい」と言ったって、実際言葉通り「見てもらう」だけでは気が済まないのです。

「中身を読みもせず、興味もないのに(お返し目当てで)いいねを連打される」「『良いですね』『素敵です』と、内容を理解しなくても言えるようなお世辞コメントをもらう」「こちらの意図や方向性とは違うコメントがくる」「(連続性のある投稿で)時々目に入った話だけ読んでくれるが、前編通しては見てくれない」などの行動で悲しくなっているようでは、「『私を理解してもらいたい』欲求などない」とは言えません。

「せめて最低限ちゃんと読んでほしい。下心なしで」なんて、それだけで十分「私を理解してほしい」ということなのです。

「私のことを理解しなくていいよ。ただ第一話から最後まで、一言一句読み漏らさず、テキトーに流し読みせず、自分の宣伝目的の行動を取らず、深く感じ入ってほしいんだ」と、実はそう願っている。それはめちゃくちゃ傲慢な願いなのかもしれません。

 だって自分が同じこと言われたら、めんどくさいですもん。作品の「好み」って恋愛並みに(恋愛が何か知らんけど)選びまくりますよね。何でも良いわけがない。運命の作品に出会うまでフラフラ探すし、でもタイプじゃないものに「タイプじゃない」なんて言いません。私の作品に中途半端に反応を残していった人は、単に「タイプじゃなかった」のです。

「自分を理解されたい」と願っているから、どうりで生きづらいはずです。こんな欲求なんざドブに捨ててしまいましょう。って無理だ……。





 今日テレビでアフリカ電車旅の話を見ていました。「日本人は何もかもに意味を付けたがるのかも」「アフリカでは空気がゆっくり流れていた」「『何をしているの?』と聞いたら『何もしていない』人が多かった」「見ず知らずの人なのに友達みたいに距離感が近い」「食べ物を買ったらまわりの人にほぼ持っていかれた」「心が豊か」などの話を聞いて、なるほど日本と外国はちょっと違うんだろうと思いました。

 自然に生きている人間はどこか動物に近いのかもしれません。で、日本の動物好きの人は、日本人との付き合いでは得られない、魂の繋がりを欲しているのかも。そういうものって、外国の人との交流でも見つけられるのかも?

 人間ぶろうとしている人って、どこか動物を見下しているかもしれません。動物みたいになりたくない、と。「人間だけにこの力がある」とか「人と動物との違い」とか、やたらとそんな言葉が耳に入ってきます。

 動物がどうとか、日本の技術力がどうとか、やたら好戦的な概念に必死にこだわる世界とは分かり合えませんわね。
 ……って私も勝手に意味を付けてしまいました……。自分の方こそ好戦的だし。


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